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VOL.19 MAY 2004

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[関連施設紹介] ユニットケアと施設運営

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長代行
大森 俊也

◆今回のテーマ──ユニットケアと施設運営

 施設ケアは,ユニットケアという潮流をどのように受けとめていくべきなのでしょうか。今回は,「ユニットケア」についての課題整理と「せんだんの丘」が取り組んできた職員の組織化と運営についてご紹介いたします。

◆ユニットケアとは?

 「ユニットケア」という言葉をよく耳にします。それは,ケアのあり方を転換したいという期待とその可能性があると考えられているからでしょう。
 「ユニットケア」の考え方は,物理的環境と人的環境の小規模化にあり,一体のものとしてケアサービスの質を向上する共通基盤と考えられています。いいかえれば,ユニット化(新設や既存施設改修による小規模化)は,利用者ご自身が「どのような暮らしを望んでいるか」「本当はどうありたいのか」という生活意欲にマッチする生活環境と生活支援にかかる援助技術の相互関係の澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】性を提起しています。ここにユニットケアの入口があるのです。
 加えて利用者は,普通の生活者であり,地域の一員として「顔が見える関係づくり」が必要で,このことは「介護付き住宅」という発想に符合しています。「介護保険のサービス提供」のおつきあいだけではなく,さまざまな形で地域と連携を図る,地域づくりの一員としての実践が大切ということも含まれていると考えていくべきでしょう。しかしながら施設のユニット化は,施設ケアが積み残した課題のすべてを解決してくれるものではありません。

◆ユニットケアでなければ,よいケアができないのだろうか?

 よく寄せられる質問ですが,決してそうではありません。生活するうえで環境は,確かに大切です。しかし,「できることは何か」「できないことは何か」「本当に必要なことは何か」「できるようにするためにはどうすればよいか」等々,対人援助に携わるうえで大切なことは,相談者や利用者のアセスメントだけではなく,私たち施設に勤める職員が陥りやすい固定観念的発想や考えようとする力を抑えてしまうマンネリ化を排除することです。
 「こうされたくないケア」「こうしてほしいケア」について,ブレインストーミング法を実施すると必要な考え方や進め方が見つかったりしますが,おそらく「よいケアを進めるためにはユニットでなければならない」というところにまでは至りません。現在のケアに対する課題がたくさん出てくることでしょう。しかし,「気付いた」ことから「築き上げる」という取組みが進められていく方向付けが見えてきます。利用者の個別性を尊重し,どこまでもケアするということではなく自立を支援し自律していただくというケアの理念は,個別ケアに根ざすケアプランの実践に他ならないのです。一人一人がバラバラなものの見方,考え方をしていたのでは,よい施設運営を行っていくことはできないということです。
 ユニットケアは,小規模,少人数のグループケア方式がとられることになりますからその有効性が高いということは,少しずつ実証されてきています。さらに,ケアする職員の人間性や能力を伸ばすためにどのように支援し,ケアするかも大きな課題として認識していく必要があります。

◆介護老人保健施設におけるユニット

 ユニットの是非論という観点からすると,入所しての療養生活の場面にユニット型施設(家と同じように流し台や調理設備,家庭浴槽,食卓,居間など)の特徴である小規模な利用空間,つまり居宅で必要となる生活行為に必要な場が集中していることは,非常に恵まれた環境ということができます。生活そのものがリハビリテーションという考え方に立つことが大切であるということは言うまでもないことですが,ハード面のメリットを有効にしてくれるのが援助関係の小規模化です。
 せんだんの丘では,16?25名(前号参照)のユニットとなっていますが,各ユニットに配置された職員は,利用者の個別性を尊重した心身機能の低下防止と生活行動能力や生活意欲の向上に対してアプローチを積極的かつ速やかに行いうるというユニットのメリットを活かした展開を行っています。ユニットの持つ資源を有効に活かすことが大前提といえるでしょう。

◆法人および施設の組織

 医療法人社団ですので,社員の意思(社員総会)のもとに理事,監事で構成される理事会が組織され,理事長が医療法人を代表しています。事業所は,せんだんの丘(老健入所?短期入所?通所リハビリテーション,福祉用具貸与)の事業とせんだんの丘居宅介護支援事業所,せんだんの丘訪問看護ステーションが経営されています。
 施設長(医師)の下に副施設長,看護長,事務長(代行)が合議して運営管理にあたっています。老健については入所と短期入所を一体として介護長が各ユニット主任?主事を分掌統括しています。ユニット運営は,主任,主事が中心となり分掌しています。また,通所リハビリテーション,福祉用具貸与は,主任が中心になって分掌し,他の事業所運営については,管理者が分掌しています。

◆ユニット職員の構成と役割

 先月号で職員の構成をご紹介いたしましたが,各ユニットの職員構成は,ケアワーカー,看護師,作業療法士がチームケアを実践するため各ユニットに配置されています。もちろん業務独占に触れることにはタッチしませんが,協働体制を採っています。介護支援専門員,支援相談員,歯科衛生士,管理栄養士,調理員など他の職員は,すべてのユニットにかかわることになります。
 通所リハビリテーションには,作業療法士,看護師,支援相談員,ケアワーカーが配置されています。福祉用具貸与には,専門相談員を配置し作業療法士と連携したフィッティング重視の居宅住環境のコーディネートを進めています。
 居宅介護支援事業所には,介護支援専門員を2名配置し地域の相談窓口としてコーディネートと結果としての給付管理を,訪問看護ステーションは,看護師,作業療法士を配置し,在宅復帰後や通所できない方々への生活リハビリを心身機能だけではなく住環境にマッチした視点を大切にしながら支援を進めています。
 それぞれが介護保険事業として単独でケアサービスを展開するのではなく,連携と協働を実践しています。

◆ユニットケアに求められていること

 せんだんの丘のユニットは,経験のある職員と新卒の職員の組み合わせによって初年度は,利用者3に対して職員1という介護体制でスタートしました。また,新任の職員だけではなく経験のある職員についても個別ケアの大切さとその理解や,ユニットの力を十分に引き出すため,利用者の受け入れに概ね6カ月をかけました。開所時には,ユニットのまとめ役としてユニットリーダーを選任し,翌年4月からは,現在の主任,主事の分掌を明確にしました。この間は,ユニットで起こったことすべてを副施設長,看護長にそれぞれ報告するという方法により,困難となったことや気づいたことを漏らさず報告する習慣付けが徹底され,またその回答を保留することなく現場に返答するという方法が採りました。
 その後については,主任主事の蓄積した判断に委譲するという方法をとり,逆に「自分たちの判断で進めてよいのか」と相談から徐々に裁量権限を委譲し,結果報告を受けるように方向づけの転換を図りました。職員の都合で判断することは,ユニットの中で禁じていく現在のユニット運営の体質が構築されていきました。
 ユニットケアを採る施設でケアにあたる職員は,ひとりひとりのパーソナリティが強く出るおそれがあったり,そのことがユニットの雰囲気を大きく左右したりする場合もあります。したがって,ユニットケアは,職員が節度を守り自律することも求めていることに気づくよう職員を適切に管理し,あるいはケアしていく必要性がきわめて大きいということができます。また,ユニットケアは,職員が自らの経験を利用者の立場にたって共有し,蓄積していく不断の努力を信じて任せることに徹することとその期待に応えてくれる職員の底知れぬ力を信じてすすめていく必要があります。
 次回からは,「せんだんの丘」のさらに具体的な実践をご紹介いたします。

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