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VOL.19 MAY 2004

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【現場から現場へ】

[OB MESSAGE] 知的障害者施設の現場から

社団福祉法人 音別憩いの郷  第二おんべつ学園 釧路分場
竹内 邦彦

◆1 学生時代

 教員であった父の背中を見ながら,いつかは「人の役に立てるような仕事をしたい」と思い,澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】を選びました。
 在学中は,「おひさまといっしょに」という学外サークルに籍を置き,身障の子どもたちが晴れ渡った青空の下,楽しく一日を過ごせるような運動会の企画運営に携わりました。そして私が3年生の時,実行委員長を務めさせていただきました。運動会当日は生憎の雨模様で,例年であれば体育館にて,競技内容も大幅に変更しなければならない状況でした。しかし,雨天時の場合,野球部の室内練習場を会場として借用させていただくことになっていたため,ほとんどの競技を変更することなく実施することができました。
 そして終了間際には太陽が顔を出し,風船飛ばしを参加者全員で行いました。その感動は,今でも思い出すことがあります。
 お蔭様で運動会は,たくさんのボランティアの皆様のご協力により,無事終了いたしました。その節は,大学側のご配慮に感謝いたします。
 この4年間を通して,さまざまな人との交流を深めることができ,私にとっては,とても貴重な仙台での生活でした。

◆2 就職してから

 卒業後,釧路市の実家から45分位の場所にある「音別町」に,「知的障がい者入所更生施設 おんべつ学園」(定員50名)が開設し,グッドタイミングで就職させていただきました。
 「開設」ということで,利用者の居室には何もなく,机やタンスなどの備品を一生懸命運んだことを思い出します。
 4月を迎えて,利用者の方が入所してきて,初めはとても戸惑いながらの仕事でした。
 ある女性利用者が私の傍を離れようとせず,時には男性トイレの中にまで後をついてきており,正直言ってノイローゼ気味になってしまった時期がありました。毎日,暗い顔をしてうつむきながら歩いていると,後ろから「竹内,良かったな」と低い声。振り向くとそこにいたのは園長でした。続けて「お前良かったな,○○さんにいろいろ教えてもらえて」。最初は,「悩んでいるのに,何を言ってるんだ」と思いましたが,勤務年数が経つにつれて,次第にその言葉の意味を理解できるようになってきました。
 その後,「入所授産施設 第二おんべつ学園」(50名)の開設および更生施設の定員増(90名)や,通所授産施設である「釧路分場(ぶんじょう)」(15名)と「音別分場」(9名)の開設。また,グループホーム「白亜寮」(5名)と「朝日」(4名)の2棟開所を経て現在に至っており,私たちは「ごく普通のごくあたりまえの暮らし」ができうる手立てを模索しながら,その実現を目指して日々努力しています。

◆3 私の仕事

 私は,更生施設に作業支援員として12年間所属し,「木工科」や,重度利用者の「療護科」を担当いたしました。その後,授産施設へと異動しまして,今年で16年目を迎えております。
 それでは,現在の職場である「釧路分場 ワークショップ 大きな木」について,説明いたします。
 その前に「分場」とは,在宅の知的に障がいを持った方々が,地域社会での自立と社会参加を促進することを目的に設置された通所型の施設です。また,設置運営には本体となる施設が必要であり,利用定員が1カ所当たり,5人以上20人未満と定められております。
 さて,話は戻りまして,通所施設なので,すべての利用者は家からバスなどで個々に通所してきております。作業内容は,ラーメン等の食堂とカフェスタイルのベーカリー店の営業,およびうに箱のシール貼り作業などです。
 特にラーメン作りはこだわりがあり,2つのスープを使用しています。1つめは,トン骨や鳥ガラ,数種類の野菜を8時間煮込んで作ったスープです。2つめは,授産作業である椎茸栽培を取り組む「園芸科」にて産出された椎茸を使ったスープです。その2つを加えた特製スープのラーメンは,絶品と思っております。最近は,釧路も「釧路ラーメン」という触れ込みで,ちょっとしたブームになっており,お客さんの味に対する考え方も非常に厳しくなってきている状況です。
 また,アベニュー946(旧長崎屋)に,昨年の9月にテナント入りした「カフェ&ベーカリー 大きな木」についても,授産作業のひとつとして取り組んでいたパン作業が実を結び,焼きたてのパンとコーヒーやジュースを販売しており,こちらも「安くて,美味しい」とご好評をいただいております。

◆4 地域生活を支える

 こちらに異動となり今年で2年めを迎えるわけですが,まず思ったことは「通所施設は,とても難しい」ということです。今まで,入所施設でしか経験がなかったからかもしれませんが,とにかくそう感じました。
 昨年より,従来の「措置」から「支援費制度」へと制度的には変わりました。しかし,ノーマライゼーションの理念に基づき,障がいを持った人が地域で生活できる状況が充分であるとは言えないのが現状であります。
 当施設では,地域生活を支えるうえで以下の4つの点に着目して運営しております。
 (1) 働く場(所得)の保証〔分場など〕
 (2) 住まいの確保〔グループホーム〕
 (3) バックアップ機能の整備
 (4) 地域生活におけるケア体制の確立
 この中でも,一番に大切な問題は所得の保証だと思います。椎茸栽培やパン製造および花の苗の育成作業や,企業の花壇整備や音別町リサイクルセンターの処理業務および町立病院の清掃業務などの委託作業による授産収益で,地域生活を支えております。したがって,入所施設からより多くの地域生活者を出すためには,今まで以上に前述の作業などから収益を生み出す以外に方法はありません。

◆5 最後に……

 現場での様子をただ書きつづっただけですので,あまり参考にはならなかったと思います。学生の皆さんも夢を持って勉強されていると思いますので,夢の実現を目指して努力して欲しいです。
 私も,「“あたりまえ”ってなんだろう」と考えながら,利用者の皆さんと共に,夢を実現できるように渾身の力を込めて,今日もラーメンの湯切りに精を出しています。

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