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【BOOK GUIDE】

障害学の主張 明石書店

 障害は個性であり,「障害は不自由であって決して不幸ではない」(p.254)。これらの視点から,(1)社会のなかで障害をもって生きることの意味を考え,(2)障害を有する立場にたって今の社会のあり方を考える,というのが,障害学の主張です。
 第2章のタイトルは「ないにこしたことはないか?1」。障害を「治すべきもの」「悪いもの」とは見ないので,障害者に対する医療?福祉?リハビリテーション?教育などが「健常者の常識の押しつけ」になっている面がないか,指摘されています。障害者に接する際,とくに専門職が「障害は不自由であって決して不幸ではない」という「態度」を示し続けることは大切なように感じます。
 もちろん「不自由」を軽減するために,社会が充分な「社会的資源」「サービス」を用意することも必要でしょう。社会や環境や技術によって,解決できる問題も多いからです。その際の「費用」を誰が負担すべきか(基本的には税金あるいは保険でしょうか)を考えていくと,社会の中の「分配」のあり方という「正義」や「経済学」の問題にもつながっていきます。また,働いたり業績をあげたりしないと認めてもらえにくい今の能力主義社会のあり方に批判的な視点も提供されます。
 障害をもっていることは,ひとつの文化である,という事実は,聴覚障害者の「ろう文化」のなかに脈々と流れています。手話が少数民族の用いる言語である,という見方はおもしろいです。
 障害者も健常者も同じ人間と安易に語るのではなく,違いをきちんと見つめたうえで,思考を進めていくことの大切さを学ぶことができます。

■石川 准?倉本智明編著『障害学の主張』明石書店,2002年(2600円+税)
■石川 准?長瀬 修編著『障害学への招待』明石書店,1999年(2800円+税)

(Pon)

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