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【現場から現場へ】

[OB MESSAGE] 福祉の仕事?想いつくまま

社会福祉法人 栗桜会
ケアハウス 「栗の実」施設長

古内 毅

●はじめに

 私の入学当時,全国で福祉系の学校は4校(大阪社会事業短期大学,日本福祉大学,日本社会事業大学,澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】)で,私たちの同期生も80数名と,福祉を学ぶ学生も少数でした。その頃,学園紛争の嵐が全国的に広がっており,当校も例外ではありませんでした。
 大学では,学問にとどまらず,良き師にめぐりあえたことが最大の幸せと考えております。その方は,藤原勉先生(美術?民俗?児童文学)です。人間に対する,あくなき探究心,美に酔いしれ,こよなく酒を愛し,一生を終えた先生から学んだものは大きかったと思います。

●ふりかえって

 昭和43年4月,卒業と同時に東京都養育院(現,福祉局)に勤務しました。職場は,知的障害の児者施設?老人施設?老人総合研究所?病院などをかかえ,他県にもまたがる,利用者約4千数百名に及ぶ巨大な施設でした。
 昭和40年代,国立コロニーをはじめ地方コロニー時代が訪れます。宮城県においても,昭和48年9月,船形コロニーが開所のはこびとなり,参画することになりました。
 当時,宮城県福祉事業団は,県からの委託等も含め,12カ所の施設(知的障害,身体障害,婦人,老人,休養ホーム等)を運営していました。この間に,ケースワーカー等の処遇の現場と施設管理という,両面を体験しましたが,福祉の理論と実践が,未だにかみあわず現在に至っています。
 また,事業団の一般的な基準であった「社会福祉事業団等の設立及び運営の基準」に替えて,県との関係を対等なパートナーと位置づけた「宮城県福祉事業団のあり方等に関する覚書」を結び,事業団の新しいモデルとしての先駆的な取り組みを宮城から発信しています。

●現場でおもう

 当時,施設の職員は,一種独特の雰囲気がありました。あたかも,障害をもった人々の唯一の味方である等の自負をもち,酒をこよなく愛し,深夜まで福祉論を展開したものでした。
 現在,社会福祉士などの資格ができて,福祉職が専門職として位置づけられたことは,福祉の仕事の社会評価,向上につながることです。しかし,ものごとは,分化され,合理性?機能性を求められている時代になっていますので,やむをえないのかもしれませんが,福祉の現場で,○○専門家は大勢いますが,職人が不在という今日この頃,何か割り切れないものを感じてしまいます。
 私たちの仕事は,人間科学を基盤として諸領域の援助を得ながら推し進めるものだと思います。常に,どこに立って利用者と向き合うのか,気負わず,自然体で取り組んでゆきたいものです。

●ケアハウスとは

 高齢社会の到来を背景に,お年寄りの多様な需要に応えるため,平成元年に,軽費老人ホームの一種であるケアハウスが誕生しました。
 ケアハウスは独立して暮らすには日常生活に多少不安はあるが,身のまわりのことは自分でできるという方のための生活の場です。プライバシーなど個人の生活を重視した,住居機能と福祉機能を合わせ持った施設です。利用者に対して,相談?食事?入浴,緊急時の対応等を提供し,車いすや,ホームヘルパー等を活用して,自宅と同じように,お年寄りが自立した生活を継続できるようになっています。いいかえれば,在宅介護を趣旨とする介護保険制度に添ったものと言えます。
 また,利用する側にとっても,直接,施設との契約により,自由に選択できるというもので,平成12年の介護保険制度にあわせ,「特定施設入所者生活介護事業」も制度化されました。これは,ケアハウスも介護職員を配置し特別養護老人ホーム等と同様に,24時間のケア体制が整えられるようになったことです。
 しかし,全国的に特定施設への移行は少ないといいます。人件費,設備の改装?設置等,施設にとって負担やリスクが大きいだけに,介護つきケアハウスの拡がりは難しいようです。

●ケアハウスの現状

(1) 自立の低下
 ひとり暮らしのお年寄りが食事や入浴のわずらわしさから解き放たれることによって,生活の中での緊張感を失い,機能低下を早めていると思われます。本ハウスにおいても,食事?入浴以外は居室で過ごす方が多いようです。
(2) 入居率
 全国の平均入居率は約80%,特に交通の不便な立地条件の悪いところは,入居率が低いといわれています。また,国民年金受給者では,利用料をまかなえないという現実があります。
(3) ケアの弱体
 入居者がお年寄りということもあり,健康に不調をもつ者が多数存在します。職員配置,介護体制等が弱体のため,残存能力がありながら,ハウスでの生活の継続や入居を断念するということもありました。
(4) 生活時間
 職員の勤務時間に合わせて,生活時間を設定している所があり,夕食時間など在宅での生活リズムと違うといった不満が出ています。また,特別養護老人ホームの利用者の中に,介護保険の適用除外者の猶予期間も迫っており,退所者の受け皿としての機能を果たしていくことにもなります。

●おわりに

 リスク?マネージメント,コンプライアンス?ルール,オンブズマン等,私たちが学んだ時とは,福祉の流れも大幅に変化しています。困難を乗り越えたとき,学んだ真の喜びが生まれると思います。将来,時代の変化に対応できる専門家,いや,職人たれと願いながら,皆さんの今後に期待しております。

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