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VOL.21 AUGUST 2004

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[関連施設紹介] ユニットケアとチームアプローチ

医療法人社団東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘 副施設長
土井 勝幸

◆1 はじめに

 前号まで,ユニットケアにおける運営や環境から起きてくるケアの質の変化についてお伝えしてきました。今号からは執筆者を変え,チームアプローチの意味やそのチームを構成するさまざまな職種の役割について連載してみます。

◆2 生活支援とは?

 生活の支援とは,そこに存在するすべての人々が主体的であることが最も大切であり,その延長線上に潤いのある生活が存在すると考えられます。ここには,利用者はもちろん,生活を支援する職員が,主体的にかかわろうとする強い意思が必要となります。要するに,仕事ではあるけれども“楽しい”“やりがいがある”,もっと大きく言えば,“夢がある”と思えなければその環境を作ることはできないということです。
 “利用者本位”“個別性”“その人らしく”など似たような表現が,どこの施設に行っても言葉遊びのように使われています。しかしながら,その人らしいとは何をもってして言うのか,どのようにすればその人らしくなれるのか,簡単に応えることができる人はいるのでしょうか? 支援を必要としている方々だからこそ,その“人”とかかわる多くの人間が共に思いを伝え合い,一緒に考えることが大切であり,さらには,必要な支援の内容に対して,適切に対応できる専門性が融合する必要があります。チームアプローチの持つ意味はここにあるのではないでしょうか。

◆3 チームアプローチが機能することとは?

 手前味噌にはなりますが,せんだんの丘の職員は間違いなく変化し,成長し続ける力を持っています。これは他の施設に胸を張って自慢できることですが,離職率が著しく低いことがそれを裏付けています。何故そのような組織として機能しているのか? そして,この“力”が生活支援のあり方をどのように変化させてきたのか? それがおそらく,前述した“チームアプローチ”の持つ意味をひも解く一つの材料になるだろうと考えています。

(1)情報の共有化とケアの効率化
 開設時に最も澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】視したことは情報の共有化とケアの効率化でした。厚生労働省の人員配置基準は3:1であり,少ない職員で行うケアの成立は善し悪しはともかくとして,効率を追うことが求められてしまいます。
 要するに,業務=効率となってしまうのですが,個別ケアの入口は「立ち止まって,目を見て,話をすること」であり,これが非効率であることは明白です。この2つの矛盾を同時に成立させることが,現制度化でのケアの本質であるといえるでしょう。
 これをどのように生活の場で機能させるのか? それは,情報の共有化(場面の共有化)がキーワードであると考えました。このキーワードもある意味曖昧な表現であり,現場の介護職にとっては,何の情報を,どのように共有するのか,具体的な方法論の提示が必要であると思ったのです。そこで,情報の共有化を機能させる手段として次の方法を取り入れることとしました。

(2)情報の共有化の方法
(1) 職員のユニット完全固定化
 単一のユニットに固定配置とし,他のユニット業務には基本的に一切かかわらない。
(2) 職種間のバリアフリー(場面の共有化)
 介護?看護?リハビリ等,すべての職種が基本的に全く同じ業務を行うことを基本とする。
(3) 機能別(目的別)ユニット分類
 各々の“障害の質”にあわせた生活環境の構築を目指す。

 この方式が決して良いと思っているわけではありませんが,情報が整理され,集約化されることにより,受け手側が情報の処理をしやすい環境となります。簡単に言うと,“わかりやすい?やりやすい?だから取り組みやすい”という構図になっているということです。少なくとも5年目を迎えた現在,せんだんの丘を成長させる原動力となってきたことは事実です。

(3)情報の共有化がもたらしたもの
(1) 生活の場を共有する人間の密な関係性(職員?利用者,利用者?利用者,職員?職員)
(2) 生活の場における専門性の確立
(3) 障害の質から起きてくるニーズに応えるケアの質の向上

 これらが生み出す効果は,職員が自ら考え行動する規範となっており,ひとりひとりの職員が成長する力を支えています。密な人間関係は,職員自身が望む生活をモデルとしながら環境を変えていく力となっています。
 また,生活の場における専門性とは,職域を越えた生活へのかかわりが安全に安心して生活できる環境を作り,本当に必要な専門性を明確にしてくれました。
 さらに,ニーズに応えるケアとは,経管の利用者を口腔摂取へ,落ち着きのない痴呆の方々には生活環境の改善と活動(生活者としての)の場づくり等,障害からにじみ出てくるニーズに添うケアを生み出しました。結果的には,ここからひとりひとりを尊重するケアが作り出されるようになってきたのです。
 “その人らしく”という何となく曖昧な言葉に違和感を持っていましたが,少しずつこの言葉の意味を考えられようになったというのが,今の“せんだんの丘”でしょう。

◆4 大切なことは…

 誤解を恐れず言うのであれば,せんだんの丘において最も大切なものは何かと問われれば,明確に“職員”であると答えます。その理由は,利用者の方々の生活環境を作り出すのは,利用者本人と直接生活にかかわっている職員であり,管理者の押し付け理念では主体性は育たないと考えるからです。
 職員が主体的であれば,新しい概念を作り上げる力になるのです。

※次号からは,具体的に生活場面を例に挙げながら,各々の専門職種がどのように情報を共有し,チームアプローチを機能させているのかをご紹介します。

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