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VOL.35 MAY 2006

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[関連施設紹介] 栄養ケア?マネジメントの仕事

医療法人社団東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘 管理栄養士
佐藤 葉子

 食事は,生きていく上で必要なものであり,楽しみの一つです。そんな当たり前のことが,高齢者に焦点を絞って考えて見ると,もっと違った側面をもつこととして,浮かび上がってきます。
 平成17年10月および平成18年4月に介護保険法等の一部を改正する法律が,施行されているところですが,今回は,「栄養ケア?マネジメント」に関して理解を深めたいと思います。

◆例えば……

 在宅生活の高齢者が,ちょっと風邪をひいてしまい大事をとって安静に過ごす→治癒に時間がかかる→今まで使っていた心身の機能(特に足腰)が衰えてしまう→精神的に前向きになりにくい→風邪が治癒しても今までできていたことができなくなってしまう→「あまり動かないからそんなに食べなくてもいいや…」と,知らず知らずのうちにあまり食べなくなる→抵抗力がおちてしまい,疲れやすい?風邪をひきやすい…等,悪循環を繰り返し,だんだん体調を崩してしまうことがあります。特に,低栄養状態にあるとこのような状況を招きやすいと言われています。

◆栄養ケア?マネジメントの必要性

 今回の制度改定で着目されたのは,「高齢者施設で生活していても低栄養状態の中?高リスクの人々が出現している」とされたことにあります。注1)また,低栄養のリスクが高い高齢者ほど回復や退院までに日数がかかる傾向にあるという事実もあります。

◆提供したお食事=召し上がった食事量 なのか……

 施設での食事は,献立を立てる栄養士と,調理をする調理スタッフ間での“共同”業務となります。ご利用者様が召し上がる時の口腔機能,器官の状態,と同時に食事の形態などにより栄養の吸収量は,大きく異なってしまうため医師を始め看護師,リハビリやケアスタッフの「何を,どのくらい,どのように」摂取し,「栄養状態はどうなのか」という視点が必要となります。それが,目指すところの「多職種共同」での取り組みとなります。
 実際に食事を提供するこれまでの給食管理の流れと栄養ケア?マネジメントの流れを図1に提示いたします。注1)

図1 栄養ケア?マネジメントにおける給食管理の手順の効率化
図1 栄養ケア?マネジメントにおける給食管理の手順の効率化

◆栄養ケア?マネジメントの手順

 入所前,介護支援専門員により,さまざまな利用者情報が集められます。栄養状態に関連する内容としては,現在の身長?体重は? 何をどのくらい召し上がっている? アレルギーの有無は?医師の指示は? 麻痺等の有無と食事摂取時の動作との関連は? 血液データはどうか? 摂食?嚥下に困難な状況ではないか? 等々……。そして,これらのすべての基盤となる,ご本人の意欲や家族の希望なども伺います。
 施設ケアにおける管理栄養士の役割は,これらの中から必要な情報を整理し,栄養スクリーニング,低リスク者?中高リスク者分類,医師の指示?ケアプランを念頭にアセスメントを行い,栄養ケア計画を立案します。食事の様子などから食材にも様々な工夫を行う連絡調整,献立の工夫などケアマネジャーの立てるケアプランの側面的でありながら専門的な視点からサポートを心がけるところに澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】性があると考えています。
 栄養ケア?マネジメントにおいては,ご家族への説明を行い,同意をいただくという加算報酬にかかる手続きも行っています。
 低リスク?中高リスクについては,図2をご参照下さい。(出典:注1の報告書より)栄養スクリーニングのポイントを整理してみましょう。

図2 低栄養リスクのレベル
危険因子 低リスク 中リスク 高リスク
BMI □18.5?29.9 □18.5未満
体重減少率 □変化なし
(減少3%未満)
□1カ月に3?5%未満
□3カ月に3?7.5%未満
□6カ月に3?10%未満
□1カ月に5%以上
□3カ月に7.5%以上
□6カ月に10%以上
血清アルブミン値 □3.6g/dl以上 □3.0?3.5g/dl □3.0g/dl未満
食事摂取量 □良好(76?100%) □不良(75%以下)
(内容:              )
栄養補給法 □経腸栄養法
□静脈栄養法
褥瘤 □褥瘤

 スクリーニングは,入所後最低3カ月以内に定期的に実施され,必要に応じてサイクルを短くします。この,「必要に応じて」の必要性の有無を判断できることは,多職種共同の機能が果たせているかどうかを意味します。食事は,栄養面や嗜好だけでなく摂食(咀嚼?嚥下)状態をふまえた食形態の工夫も必要であり,介護の一部であることは誰しも否定する人はいないと思います。
 また,食行為を現象としてとらえるだけではなく,心身機能にも器官評価が伴わなければならないことが見えてきました。

 表1は栄養ケア計画書の記載事例です。栄養ケア計画書は「痩せているので,バランスよくどのように効果的に改善するとよいか,より健康的になっていただけるだろうか」等,個々の状況に応じた内容に,様々な角度から取り組むためのものです。
 栄養ケア計画書作成は,利用者あるいはご家族への説明を行い,了解を頂いたうえで各職種に周知のもとで実施します。つまり,栄養ケアだからといって「食事の提供」のみに留まるものではないというとことです。
 「食」は,生きることと命をつなぐ生命の源泉です。生きる力を引き出し,意欲を引き出す。健康を維持することは,まさしく,食にあるということに他なりません。
 介護保険の改定が「食べること」から「食べられる工夫」への転換を評価してくれたことは,大変意義深いものと思います。

表1 栄養ケア計画書の例
表1 栄養ケア計画書の例

◆食に関わるということは

 歯科衛生士2名,言語聴覚士,管理栄養士の口腔ケア室スタッフルーム4名が毎日ショートミーティングを行い,情報交換を行っています。食事介護をケアスタッフが共有することにより,多くのことが見えてきています。「利用者に寄り添ったケア」とは,必要なことが的確に支援?ケアできる環境だけではなく,利用者の個々の自立につなぐことができるための生活行為を科学する必要があり,スタッフの専門性が求められてきているということです。

 次回は,口腔ケアのスタッフから見たチームケアについてご紹介します。

注1)
 出典『「施設及び居宅高齢者に関する栄養?食事サービスのマネジメントに関する研究会」報告書?2005年 星野,原田,五味,清水らの調査結果』より

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