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VOL.20 JUNE 2004

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ユニットケアと施設運営(その2)

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長代行
大森 俊也

 前号のユニット化(新設や既存施設改修による小規模化)についてもう少し詳述したいと思います。

◆ユニットの運営形態

 ユニット化は,設置法人および介護保険施設の考え方に基づきさまざまな形態で運営されています。例えば,同じような心身の障がいをもたれた方々のグループケアや障がいの状態を選別しないユニット運営の方法もあります。また,長期滞在を想定したタイプや在宅復帰を刺激しあうようにしたタイプなどもあります。
 どのようなユニット運営においても一長一短はありますが,せんだんの丘では,各ユニット共通で生活リハビリを重視したグループケアのタイプと在宅復帰を相互に意識しあうタイプのユニット構成としています。

◆ユニット運営で大切なこと

 どのような形態のユニットの運営が行われようとも一人ひとりの主体性を尊重するコミュニケーションが実践されなければユニット化の意義は,消失します。絵に描いた餅ではなく,相互評価できるケアプランのもとに日々の主体的な療養生活が展開できるように心がけなければなりません。また,対人援助の密度を濃くするためには,職員一人ひとりが適切な判断と主体性を持つことが強く求められますが,人員配置基準を満たした以上の職員数は,経営上の考え方によって大きく異なります。また,夜間勤務者については,2ユニットの25名に1名とする費用の効率性を追求した施設が多くなっています。小規模化してきた施設ケアの本来の意義をランニングコストとユニット間連携やチームケアの上で検証する必要がありそうです。
 せんだんの丘(入所?短期入所)では,表のような職員構成でご利用の皆様の生活支援,自立に向けたケア,看護および生活リハビリに努めているところです。

せんだんの丘 ユニット職員構成一覧   平成16年4月1日現在
内訳 ユニット構成職種 夜 勤 職員数 利用者 人員比
介護 看護 リハ 介護or看護
管理職
(資格者)
A
副施設長 1 3
看護長 1 調整時
介護長 1
3階 5 2.0 0.5 1 7.5 17 2.26
6 2.0 0.5 1 8.5 17 2.00
2階 6 1 0.6 1 7.6 16 2.10
通所 (5) (1) (2.4) (8.4) (40)
1階 7 3 1 1 11 25 2.27
8 1 1 1 10 25 2.50
32 11 5 5 44.6 100 2.24

◎短期入所:3階?1階の空床利用としています
◎Aは,計に含めていません
◎2階通所リハビリ:各階の構成を理解いただくために記載しました
◎夜勤者のうち1名は,看護職が勤務することにしています

◆ユニットの環境を生かすことから学ぶケアの姿勢

 職員が自分たちで気づき,ケアを築く姿をスケッチ風に紹介します。
 せんだんの丘では,1階に痴呆の症状をもたれた方にご利用いただいています。うち25名は,痴呆棟加算のユニットとしてご利用いただいています。1階ユニットの1つは,自立歩行の可能な方々のユニットとしています。もう一方のユニットは,車椅子等の利用を必要とする方々のユニットとしています。「できることを伸ばす」「自由を尊重する」ということは,施設の全ユニットに共通した理念としているところです。
 当施設の正面玄関は,18号でご紹介のように(傾斜地に建設されているため)2階にあります。開設以来1階の玄関は,ユニットの玄関としての役割を持っていますが,残念なことに庭造りができあがるまでは“開かずの玄関”となっていました。その理由は,帰宅願望の強い方々が自由に外出すると施設ケアが成り立たなくなってしまうと考えていたからです。
 「土に親しめる場がほしい」と職員から要望があり,畑,花壇,散水栓に加えて玄関周囲を整備しました。メッシュフェンスを設け,閉鎖感を解消するために生垣を植栽しました。
 本当は,フェンスなどのないほうが自由を尊重するという理念にマッチしていますが,自由に屋外に出られる環境の整備を優先することにしました。このことによって利用者自身が自由に外の風に触れることができ,寒い日や雨の日,風の強い日に無理に外に出ることはなく,ご自分たちの感性による状況判断は,説得ではなく納得いただけるようになってきました。今では,職員と一緒になって畑起こしや種まきをしたり,水遣りをしたりなどそれまでにはなかった生活スタイルが生み出され「できること」の確認を深めることになっています。また,若い職員には「暮らしの知恵」をいただくよい機会にもなっています。
 庭には,犬が2頭いて,「シロ」と「クロ」の愛称で親しまれています。職員と一緒に犬の散歩に出かけ,「お帰りなさい,いつもありがとうございます。」と声をかけられて照れくさそうにしている姿を見ると,責任を全うした成就感をうかがうことができます。一般に,痴呆の症状をもたれる高齢者のケアは,難しいと言われますが,このような一体感のあるコミュニケーションがその方の生活に展開する次の場面を豊かにしてくれます。
 風のない天気のよい日には,玄関は,常に開放されています。麦わらをかぶり,後ろに手を組んでゆったりとした歩調で散策する姿は,ずっと前から住み慣れた場所にいるかのようにも見えます。そんなある日のこと,「私がこれまで見てきた施設は,何かと制約が多かったように思います。そうかといえば,職員は,あわただしく一生懸命にしているのですが,そこでの利用者は,本当のご自分らしさを表現できず,本当の自分を相手(職員)に理解してもらえずにいたように思えるのです。」と一人の新任の職員が話してくれました。一人ひとりに生活のペースがあり,ケアする職員の陥りやすい過ちに気づき,「コミュニケーションを抜きにしたケアは,ありえない」と訊かされたときには,本当に驚きました。

 今回まで生活を中心とした環境と人が織り成すユニットの相乗効果についてご紹介いたしました。次号は,ケアを支えるチームのあり方について在宅復帰を意識しながら職員がどのようにチームケアを考え,進めているかをご紹介いたします。

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