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VOL.44 JUNE 2007

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[精神科リハビリテーション学] レポートを書こう

 精神保健福祉士国家試験の指定科目である「精神科リハビリテーション学」を担当されている八巻幹夫先生に,どのような視点でレポートを評価されているのかをうかがいました。これから学習に取り組まれる方は,是非レポートを作成する際の参考にしてください。

◆先生はどのようなことを重視してレポートを評価されているのでしょうか。評価の視点についてお聞かせください。

 私が学生の皆さんのレポートを添削する際に重視しているポイントは,レポートの内容以前に次の3つのことが行われているかどうかです。
 まず,文章として基本的な体裁が整っていること。テキストや他の資料から文章をそのまま切り貼りする方のレポートには,論旨が一貫せず,読んでいてもいつの間にか主語がどこに掛かるのかわからなくなるものがあります。レポートの構成として,例えば「序論-本論-結論」といった具合に展開されていることが必要です。このことはどの科目のレポートにも共通することだと思います。
 次に,テキストや参考資料から引用した場合,参考文献として出典が明記されていること。書いていることが自分の意見や考察なのか,あるいは引用したものなのかがレポートの中で区別されているかということです。
 最後に,考察がしっかり行われていることです。レポートとしてまとめられた内容について,自分自身の意見として「それに対して自分はどう考えるのか」あるいは「そのことは何故そうなっているのか」という考察がしっかり行われていることです。

◆悪い例の「文章の切り貼り」とは具体的にどのようなことでしょうか。

 参考文献や資料から課題に関係する部分をいくつか持ってきて,そのままの文章を継ぎ足してレポート用紙のマス目を埋めることです。大学に入って最初に書いたレポートならば,そのようなものがあってもやむをえないと思いますが,「精神科リハビリテーション学」は3年生以上の専門科目です。書き手によって文体や論理構成が違うのにもかかわらず,そうした複数の文章を安易に貼り付けただけでは,同じ論旨が繰り返されていたり,主語がどこに掛かるのかわからなくなるようなことになります。正直なところ,このような文章は読んでいて頭が痛くなります。
 レポート学習では,課題について調べ学んだことを,自分なりに「どう表現するのか」が問われるべきです。内容的に不十分と思われるものであっても,自分の言葉で書いて欲しいと思います。自分の言葉で書かれているレポートは,文章の設計図がしっかりできているので,文章に余計な部分がなく,読んでスムーズに内容が伝わるものになるはずです。そのようなレポートは私の印象にも残るものです。
 読んでいて「ひっかかる」レポートは,文章的にどこか不自然であり,本当にその人の文章であれば,また書いた後に自分でちゃんと読み直されているものであれば,そうした「ひっかかり」はないはずです。レポートを書き上げたら,提出する前に,自身はもとより,一度,他の人に読んでもらうことをお勧めします。自分の癖は自分で気づかないものです。提出前にしっかり確認してください。
 ある70歳代の学生の方のレポートは,旧仮名遣いでしたけれども,しっかりと自分の文章で書かれており,真摯にレポートに取り組まれた様子が伝わりました。

◆課題ごとの解説はレポート課題集に記載されていますが,先生がこれまでレポートの評価を行ってこられてお気付きになったこと,課題ごとに学生はどういうところに気を付けてレポートを作成したら良いか等,ポイントがありましたら教えてください。

 各課題のポイントは,レポート課題集に記載されているとおりです。そこをよく読めば内容については問題ないはずです。学生さんの中には,課題を無視していたり,ご自身のエッセイのような内容を書いている方がいます。内容としては面白いのですが,レポートとしては不可にせざるを得ません。
 また,課題で求めている内容の一部が触れられていない場合もあります。しっかり課題に応じた内容になっているかを確認してください。
 何回も再提出になる場合は,課題の内容云々よりも,先に挙げた基本的な体裁が整っていないということが理由のほとんどです。細かく指摘してあげられれば良いのですが,一つ一つ赤ペンを入れるのは時間的に不可能です。読んでいて文章になっていない方には,所見欄に「文章になっていません」とコメントしています。このようなコメントが書かれた方は,もう一度自身の文章を読み直していただければと思います。ご自身がレポートで「何を言わんとするのか」,また「言わんとすることを自身は本当に理解しているのか」を整理?確認してください。
 一つの文章が長すぎる方もいます。あれもこれも言いたいということで文章化されているのはわかるのですが,とても読みづらいものです。読み手に対してわかりやすく伝えるということにも心を配ってください。多少文章が拙くても,調べた内容をしっかり理解したうえで,自分の言葉?文章で書くということがレポート学習の意義であると考えます。

◆最後に「精神科リハビリテーション学」を学ぶ学生に対してメッセージをお願いいたします。

 「精神科リハビリテーション学」は,特別な領域に思われるかもしれませんが,トータルな人間,全人的復権を焦点とした対処技術を学ぶ学問です。しかも精神科領域においては,クライエントとの関係性とそれを成熟させる具体的手段は「言葉」しかありません。それゆえに余計,わかりにくい,理解しづらいのだけれども,要はケースワークでいうところの「クライエントの理解」と同じです。補装具の活用のような介在する機器があれば,それに委ねて「関係性」を高めることができるのですが,精神科領域にはそれがありません。精神障害を対象としてケースワークを維持できれば,他の障害のケースワークにも十分適応できるものと考えています。
 レポートに関して,ある学生の方から「今までレポートは切り貼りで作るのが当たり前と思っていた。再提出になって初めてレポート学習の意味が分かり勉強になった。目が覚める思いだった。」と言われた時には,添削冥利に尽きる思いでした。同時にそうしたレポート学習が当然と考えている学生がいることに驚きました。
 通信教育部の学生の方は,社会人として働いている方も多く,十分な時間をかけられないなかで,懸命にレポート作成に取り組まれていることでしょう。頭が下がる思いです。
 レポートを提出される時には,レポート表紙の氏名と年齢,職業欄から「どんな学生さんが書いたのか」と,未だ見ぬ,あるいはスクーリングでお会いしたかもしれない学生の方を思い描きながら,毎回力作を心待ちにしている教員がいることを思い出してください。

◆八巻先生,お時間をいただきましてありがとうございました。

●レポートに取り組まれていて,何をかいてよいかがわからない等のお悩み,ご質問のある方は,学籍番号,氏名,科目名を明記のうえ,郵送,FAX,Eメールにて本学通信教育部宛にお気軽にお寄せください。本記事へのご感想もお待ちしています。

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