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VOL.40 DECEMBER 2006

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[心理学概論] レポートを書こう(1単位め)

 前号(39号)で平野光洋助手がレポートを書く手順をくわしく説明してくださいました。今号では,「心理学概論」の1単位め課題を題材にして,通信教育部職員がレポートを書くつもりになって,どんな順番で勉強したか,その際考えたことなどを記してみます。学習法は人それぞれですが,ひとつの参考になれば幸いです。
 『レポート課題集(1?2年次)』p.126?127,および心理学概論の教科書『図説 現代心理学入門』(培風館)をお手元においてお読みください。なお,教科書のページ数は下記のとおりです。
 改訂版:『図説 現代心理学入門(改訂版)』 平成15?17年度履修登録者の教科書のページ数
 三訂版:『図説 現代心理学入門(三訂版)』 今年度履修登録者の教科書のページ数

(手順1)
『レポート課題集2006』を読む1:レポート課題を頭に入れる

 p.126をひらきます。1単位めの課題は「心の世界は,意識される世界のほかに意識されない世界を含むことを具体的にわかりやすく説明しなさい」とあります。

↓

 「意識されない世界を含む」なので,何となく「無意識がある」ことを説明すればいいんだな,と感じました。また,「具体的にわかりやすく」なので,具体例をあげるなどしなければいけないのだなと思いました。

(手順2)
『レポート課題集』を読む2:「科目の内容」「アドバイス」を読む

 p.127の1単位めアドバイスを読んでみます。「心理学は「心」の学であるが,初期の頃は,「心」イコール「意識」であると考えられた。……ヴントの考え方がその典型であったが,やがて,心の世界は意識される世界だけではないという認識に到達した。そのきっかけとなったのが,フロイトの精神分析である」。

↓

 やっぱりフロイトや無意識のことを書けばよさそうだな,と思いました。教科書で「フロイト」とか「無意識」が載っているページをさがせばよいや!
 「その基本となる考え方は,心の動きは意識下の動機や無意識の記憶に左右されるということである」ということなので,意識できない動機や忘れてしまった記憶が心の動きに影響を与える例ってあるだろうか,と考えてみます。そもそも「心の動き」って何? ある人を好きになったり嫌いになったりすることを自分で説明できる? 話が合ったから? 話が合う人は他にいるのになぜ? それに話をしてもいないのに好きになることも若いときはあったね。かわいいから? かわいい人は他にいるのになぜその人? 自分をわかってくれそうだから? 自分を傷つけないから? やさしくしてくれるから? お母さん(お父さん)に似ている? 前好きだった人に似ている?……。

 p.127 2段落め 「心を「働き」と「内容」に分けると,「働き」は意識されないのが普通である」と書いてあります。

↓

 意識されない世界に「心の働き」というものもあるんですね。「心の働き」って何だろう? p.126「科目の内容」には次のような文章が書いてあるけどよく意味がわからない!
 ──心の「働き」とは,たとえば「見る」「考える」などで,心の「内容」とは,その結果できあがったイメージや知識などである。

(手順3)
教科書を読む1:目次や索引でキーワードがどこにあるか調べる

 『図説 現代心理学入門』は本の終わりに「索引」が付いているので,まずこれを引いてみます。「索引」がある本は便利ですね。

↓

 ?フロイト(Freud,S.)綴りがわからないとひけないので少し苦労。
       改訂版p.4,26,46 三訂版p.4,36,60
 ?無意識  改訂版p.1,18,26,46,172   三訂版p.36
 意識 はあるかな? あった
 ?意識  改訂版p.1,2,26,94,160,172   三訂版p.1,2,36,190
 ※三訂版のp.190はp.192の誤植と思われます。

 あがったページで「意識」「無意識」をさがしながら順番に読んでいくことにします。そして,具体例を考えていくようにしました。

(手順4)
教科書を読む2:改訂版?三訂版ともp.1,2,4を読む

 p.1 2段落め 「では,心とは何かということになる。……私の心は,何かを感じたり,想像したり,考えたりするし,何かを欲したり,意思したりするし,ときには動揺したりもする。こうしたことを,われわれは誰でもある程度意識することができる」

↓

 なるほど。心とか意識とかは,好き嫌いのような感情だけでなく,感じることや考えることもあるんだな。結局は「頭に浮かんだこと」すべてが意識なのかな。空が青く見える。雲が浮かんでいる。晩御飯のおかずは何にしよう。このしごといつ終わるのかな。昨日上司にこんなこと言われたな,嫌だな。
 何だか『徒然草』みたい。「心に移り行くよしなしごと〔つまらぬ事〕」を「そこはかとなく〔とりとめもなく〕書きつくれば」意識のことはわかるのかな。
 教科書にも「個人的に自分の意識を調べれば,……心を知ることができるようになるであろう」と書いてあるし(ヴントの考え方?)。

 p.1 3段落め 「しかしながら,やがて,自分のある<意識>を別の意識をもちながら分析すること自体がたいへんな困難」……

↓

ちょっと哲学的なので飛ばしてみます。

 p.1 3段落めつづき 「すなわち,何かを感じる,考えるというときに,意識に現れうるのは,感じ?考えた何かのことであって,そこにいたるまでの<心の過程>の方は意識されず,無意識的なのである。……どのようなわけでそれをしたくなったのかの<心のはたらき>の方は無意識的なのである」。

↓

 アドバイスにも書いてありました。意識されない世界に,<心の過程>と<心のはたらき>があるという説明です。<心の過程>って何? 過程ってプロセスのこと。感じるプロセス,考えるプロセス……たしかに,皮膚をつねられると痛いと感じるけど神経のどこをどう伝わって,頭で(心で)痛いと感じるかのプロセスは見えないから意識できないということ? 目でものが見えるのもそう。考えつくことも,突然あることが思いつくことも多いけど,どこからその考えが浮かんできたのかは,確かによくわからない。そういうのが,「意識されない世界」っていうことでしょうか?
 <心のはたらき>も,甘いものが食べたいとか,眠いとか,なぜそうしたくなるのかを考えてみると,意外に説明できないっていうこと? 確かに食べることや寝ることを忘れて集中していることもあるし,逆に夜中に家にないからコンビニ行って買ってでも甘いものが食べたいということもあるけど,がまんできたりできなかったり,それがどういう違いからくるのかは,説明できないかもしれないな。

 p.1?2 意識ということばをさがして読んでみますが,他にはピンとくるところがありませんでした。ただ,p.2に<心的過程>と<心的機能>とありますが,機能=はたらきだから,<心の過程>と<心のはたらき>と同じことだと思います。また,p.1?2は,心理学がどんなことを明らかにしようと研究されているのか,その基本的な考え方がわかるページでしたので,じっくり読んでみることをお奨めします。

 p.4 フロイト 『夢の解釈』もした人なんですね。夢は思い浮かんだことだから意識なのかな,それが無意識の内容をあらわしていると考えるのだっけ。

 改訂版p.18(三訂版は目次にはないけどp.114)を読んでみると,恐怖を感じたときにとっさに逃げるのは無意識的という説明があります。目の前にげんこつが来たら,とっさに目をつぶったり,よけたり,手で払いのけようとしたり,そういう瞬間の判断(行動)は考えないで行っているので,「意識できない世界」がある具体例だとあげることはできると思います。
 これは「心の世界」のことなのかなと,考えてしまいます。でも,p.3の図0-1によれば,行動は心が反映されたものという考え方を心理学はするようです。
 だから,「意識されない世界を含む」ことを説明するのに,「意識されない世界」が「意識」にあらわれ出てきたり,「行動」にあらわれ出てきたりすることを具体的に示せるとよいのかなと思いました。

(手順5)
教科書を読む3:改訂版p.26?三訂版p.36を読む

 結論から言うと,この改訂版p.26?27?三訂版p.36?37の2ページだけをまとめてもレポートは書けるのではないかと思います。社会福祉学科で卒業のために「心理学概論」のレポートを書かなければいけないという人,時間のない人はここをうまくまとめてみましょう。

 (2) フロイトのパーソナリティ理論  の見出しの次,「われわれは固く口止めされていたことを,無意識のうちに人に口を滑らせてしまったとか……これは自分が意識していない,「何ものかの力」によって生じた行動である,ということを意味している」とあります。

↓

 具体例があがっていますね。同じ例はまずいでしょうから,何か似たような具体例思いつきませんか。
 あとから紹介する『心理学がわかる事典』(南博編著)という本のp.241でも「無意味な間違いは心の本音」「無意識が一時的に行動をゆがめさせるときがあります。それが,言い間違い,書き間違い,読み間違い,ど忘れなどです」とあり,開会を閉会といいまちがえた議長の話などの具体例がのっています。まあそうかなとかも思いますが,「ものを置き忘れたりすることは,その場所に対してもう一度訪問したいという無意識的願望の現われ」というような記述には,本当にそうなの?,ただ早く帰りたくて,他のことに気をとられていて,忘れものに気づかなかっただけではないか,と少し批判したくなります。

 (2)内の2段落め  「フロイト……は,……人間の心は,<意識>,<前意識>,<無意識>の3層からなると考えたのである(図2-2,表2-1)」

↓

 ここの文章はレポートに使えますね。そして,図2-2の意識とは「いま気がついている心の部分」,前意識とは「いま気がついていないが,努力によって意識化できる心の部分」,無意識とは「抑圧されていて,意識化できにくい心の部分」という説明も,是非レポートに取り入れたいと思いました。

 次の文章  「無意識の領域には<本能的衝動(生得的な心的エネルギー)>や意識化されると都合の悪い記憶,動機,観念などが抑圧されている」

↓

 すこし難しいですが,ここも「意識されない世界」には何が入っているかのフロイトの考えのようで,レポートに使えますね。
 はじめの,本能的衝動(生得的な心的エネルギー)とは,そのあとの<エス>で書かれている「食欲や性欲などの欲求や,攻撃性などの衝動の満足を求めて活動」とある心の動きですね。欲求はふつう意識できると思いますが,その欲求がどこからわいてくるのかとかは意識できないということでしょうか。また,たとえばイライラするときは何かの欲求が満足されていなかったり,逆に快調なときはいろんな欲求が満足されていたり,ということも言えるでしょうが,それが「意識されない世界」のせいなのかな。
 2つめの「意識化されると都合の悪い記憶,動機,観念などが抑圧」というのは,最近よく話題に出る児童虐待をうけて多重人格になった人などが極端な例なのでしょう。イヤなことやよくない考えは忘れてしまうけど,忘れたことも心の奥には残っていて,私たちの行動や意識に影響を与えるということですね。
 もっと考えると,抑圧しなくても,どんな経験でも,どんな考えでも,心の奥底のどっかには残っていて,それが行動に影響を与えているかもしれないですね。異性に積極的に近づいていく行動をとるかそうでないか,ということや,ギャンブル的な行動が好きかどうかなどを題材に,過去の経験の影響が残っているかどうか考えてみたくなりました。
 なお,他の本を読むと,フロイトは「無意識」をよくないものと考えていて,何でもかんでも「無意識」に入っていくという考えはユング的なようです。

(手順6)
辞典でキーワードを調べてみよう!

 教科書読むのも疲れてきたので,ここで『心理学辞典』(有斐閣)『誠信 心理学辞典』(誠信書房)で「意識」「前意識」「無意識」をひいてみました。

↓

 「意識」にはいろいろな意味があることが書かれていますが,「気づいていること,知っていることのように内容を意味することもあり」(誠信書房版)とあるので,『徒然草』流「心に移り行くよしなしごと」という考えでもあながちまちがいじゃないんだな,と思いました。
 「前意識」には「思い出そうと注意を向ければ思い出せるもので,いつでも意識のなかに入り込めるもの」(有斐閣版)とありました。教科書の図2-2だと,次に意識に出てくるネクストバッターズサークルにいるのが「前意識」かなとイメージしていましたが,もっと幅広いものですね。逆に,「無意識」はどんなに意識に出そうと思っても出てこない奥底のものと言えるのでしょうか。

(手順7)
教科書を読む4:改訂版p.26?三訂版p.36を読む(つづき)

 教科書に戻ります。いまひいた辞典(誠信書房版)にも書かれていましたが,フロイトが「意識」「前意識」「無意識」と言ったのは最初だけで,研究を進めるにつれて,「エス」「超自我」「自我」の3つに分けて考えたと述べられています。主に「エス」「超自我」の部分が「意識されない世界」にあたることが表2-1からわかります。

↓

 「エス」「超自我」も具体例を考えてレポートに書けますね。新生児は「エスの固まり」「幼少期の両親のしつけ……を取り入れて形成された,道徳性や良心」が「超自我」という表現もあるので,子どもの行動から具体例を考えてみたいと思いました。
 「エス」の「自我や超自我にエネルギーを供給する機能をもつ心的エネルギーの貯蔵庫」という説明や図2-3はよくわからないけど,その次の「食欲や性欲」「即時的満足を得ようとする<快感原則>」や表2-2などでイメージがわいてきませんか。心理学の場合,図表もよく見てみるとよいです。
 なお,このフロイトの考え方が変わっていったことは,臨床心理の分野では大切なことのようで,『壊れた心をどう治すか』(和田秀樹著 PHP新書225)の第1章で非常にわかりやすく説明されていました。

 次に見出しの(3) ユングのパーソナリティ理論を読んでいきます。「ユングの特徴は,無意識層を<個人的無意識層>や<普遍的無意識層>に分けて考えることにある」。

↓

 このことはさきほどの2つの辞典両方に書かれていたので,大事なのでしょう。また,普遍的無意識は集合的無意識とも言われているようですね。
 ユングは,ご存知の方も多いと思いますが,一般的な心理学者からは科学的ではないとして敬遠される場合もあります。でも,いろいろな本が出ていますし,「元型」など調べてみたくなりますよね。おおまかに全体を知りたい場合は『無意識の構造』(河合隼雄著?中公新書481)がよいようです。
 全人類に共通の「普遍的無意識」があるのかについては,「本当かな?」と思ってしまいます。また,教科書を読んだだけでは「自我」と「自己」の使い分けもよく理解できませんが,ユングのことも多少はレポートに書いておいた方がいいでしょうか。

(手順8)
教科書の残り部分をいろいろ読む

 改訂版p.43 表2-16   三訂版p.55 表2-17の「防衛機制」は,「意識されない世界」が意識や行動に影響を及ぼす例を考えるには絶好です。

 改訂版p.46 三訂版p.60 精神分析療法の説明に「意識?無意識」が出てきます。改訂版の記述「<抵抗>は,自由連想がとだえて沈黙したり,ある話題を避けたり,約束の時間に遅れてくるなどの現象をいう。抵抗が生ずるのは,思い出すことが苦痛な不都合なことが抑圧され,防衛されているためで,抵抗を分析することで無意識の意識化を図ることになる」は,「意識されない世界を含む」具体例を考えるよいヒントになるでしょう。
 なお,三訂版では「抵抗」という用語のみが出てきて,説明がありません。各種の心理学の教科書では,これまで心理学の研究で積み重ねられたいろいろな説が少しずつ細切れに紹介されているので,ひとつひとつの説明が短くてよくわからないということがあるようです。辞書で調べたり,他の本を読んだりしたほうがより理解が深まるのは,そのためもあると思います。

 改訂版p.172 三訂版p.192 図7-31 見出し7?6?3「左右大脳半球と意識?無意識」  ここはちょっと難しいですね。左脳=言語=意識,右脳=イメージ=無意識といった単純な話しではないようですし。

(手順9)
参考文献をさがす?読む

 教科書が読み終わりました。さて,次は参考文献をさがします。インターネットで「本をさがす」のページ(http://www.books.or.jp/)やアマゾンのページで「意識 無意識」とひいてもたくさんの本が出てきます。そこから心理学の本をさがすのも一苦労ですし,自分のレベルにあった本を選ぶのも大変といえば大変(楽しいといえば楽しい)。以下は,レポートに参考になりそうなお奨め本です(初版発行年がやや古めなのは古本屋さんで買ったせいですが,下記の3冊はいまでも本屋さんに注文すれば買えます)。

南博編著 『心理学がわかる事典』日本実業出版社,1994年
 この手の一般向けにわかりやすく心理学を解説した本も一冊はもっておくと,いろんなレポートに使えるかもしれません。
瀬名秀明監修 『「神」に迫るサイエンス』角川書店,1998年(角川文庫,2000年)
 仙台在住の小説家?瀬名秀明氏の小説『BRAIN VALLEY』の解説本ですが,「神経伝達物質のセロトニン系が幸福感や愛情にかかわる」という脳科学的な記述が<心の過程>のひとつとして参考になりました。
下條信輔 『サブリミナル?マインド』中公新書,1996年
 「人は自分で考えているほど,自分の心の動きをわかっていない。人はしばしば自覚がないままに意志決定をし,自分のとった行動の本当の理由には気づかないでいる」という新書の紹介文がありますが,「意識されない世界を含むこと」の例がたくさんあります。

 その他,「意識?無意識」は心理学の一大テーマのようで,心理学の本を開けばあちこちに出てきます。参考図書をさがすのに苦労はしないと思います。

(手順10)
レポートに何を書くか考える

?フロイトの「意識?前意識?無意識」と「エス?超自我?自我」
?ユングの「個人的無意識?普遍的無意識」
?<心の過程>と<心のはたらき>
?サブリミナル知覚に関すること
などが,「意識されない世界」としてあげられると思いました。
 よって,書き出し(序論)は,次の文章から始めてみたいと思いました。
 「心の世界に意識されない世界が含まれることを,4つの視点から述べてみたい。
 ひとつめがフロイトのあげた「意識?前意識?無意識」のうち,「前意識?無意識」が意識されない世界ということである。フロイトによれば,意識とは……,前意識とは……,無意識とは……と説明される。…………」

 レポートにはただひとつの正解があるわけではなにので,上記はあくまで一例です。ひとりよがりな文章で読みにくかったかもしれませんが,レポートを書く方がひとりでも増えることを願っています。

(通信教育事務部 古藤)

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