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VOL.40 DECEMBER 2006

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[関連施設紹介] 施設ケアプランとケアマネジャー

医療法人社団 東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘
事務長 大森 俊也
ケアマネジャー 山田 殊美

 せんだんの丘は,2000年4月に開設した入所5,通所1のユニットケア方式をとる施設です。入所部門には,看護,介護,作業療法士が全ユニットに配置され,ケアマネジャーをはじめ支援相談員,実習教育相談員,言語聴覚士,管理栄養士,歯科衛生士などのスタッフがトータルにかかわるようにしています。

◆コミュニケーション

 ケアプランは,ともすれば生活の実態と乖離し,形式的説明に終始してしまうことが多いように聴きます。具体的に利用者自身が「どうありたいと思っているか」をケアプランにしていくのかは,とても難しいことです。実際場面でのケアプランは,タイムリーに判断するための共通基盤ですから,とても澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な意味をもっています。また,ケアプランは,ケアの結果である記録と「表裏一体」であり,職員間や家族とのコミュニケーションという連携のあり方も含まれます。
 せんだんの丘の利用者ケアプランは,利用者,家族,ユニットのケアワーカーのエンパワメントを活用するようにして質実が伴うように工夫してきました。ユニットに所属する介護,看護,リハビリのユニットスタッフは,利用者に接する時間も多く,メンバーも固定しておりコミュニケーション伝達を書面化して記録にします。多職種による着眼点の多様性は,気づきを拡張しケアに対する認識の誤差を小さくしています。
 ケアは,それら行為のすべてが双方向のコミュニケーションと言われています。利用者自身の生活への留意点に対して,本人の理解や家族の協力などについて,直接かかわるユニットスタッフがカンファレンスを通じて現況を報告し合い,一緒に考えていくことにしています。
 もちろんケアマネジャーもカンファレンスに入りますが,スーパーバイズする役割を担っています。

◆ケアプランの作成

 カンファレンスで検討して練り上げた内容であっても,また,タイミングを逃してはいけない内容であっても,提供者側からの押しつけプランであってはならないということは当然です。
 当施設のユニットのケアワーカーは,1人あたり3?5人を担当してケアプラン用紙と同じものを情報シートとして,書き込みを行っています。多職種との接点から気づきが与えられているため,このようなボトムアップ型のケアプランの作成の意義は,大きいと考えています。もちろん日々の記録を大切にしてユニット内でのチームケアが高まると言うことは,プランと現状との乖離を小さくすることになります。このようにスタッフからにじみ出る現実的な情報のもとに,ケアマネジャーは,介護,看護,リハビリ,栄養というそれぞれのマネジメントを総括してケアプランとしてまとめあげています。

◆ユニット職員の意識?連携

 ケアプランを作成するためには,日々の生活状況を深く見ることが必須です。最低規定数1名のケアマネジャーだけでは,100名の全利用者の細部までをプランニングすることは,(筆者自身の考えですが)不可能だと思います。
 例えば,下記のようなことになります。

山田:「一人でトイレに行けない」とした場合,「そわそわする」とか「排泄周期」などの情報がなければ,「トイレに行くサインを見落さず見守りを深める」ということをケアプランには盛り込めません。また,ご家族に説明する場合には,トイレに誘導されている生活の実態に対し,なおかつ「汚してしまう状況になってきた」ということが理解されると,尿パットの使用や紙おむつの使用にもしっかりと理解をいただけることになりますし,もう少し頻度を上げてトイレ誘導する積極的な関わりをもつようにするという説明も容易になります。

大森:トップダウン型のケアプランでは,お任せケアプランに陥り「絵に描いた餅」の状態となっていきます。ユニットスタッフに十分な意識?連携がなければ,ケアプランが宙に浮いた状態となり,ケア場面において当事者が途惑うことになりますし,「活かされないケアプランは,作る時間がもったいない」いうことになります。

◆支援相談員とケアマネジャーの位置づけ

 施設の支援相談員は,どこの施設でも入り口に位置するということは,共通しているようですが,筆者の知る限り,各施設によってその役割が随分異なっています。
 ケアマネジャーの立場からすると支援相談員は,申請受理,入所前家庭訪問,利用室の調整,入所予定日の決定などや退所時期の想定や家族の受入状況など多方面に関心を払って記録し,関係者に伝達?周知するという手続きを行います。このような内外の調整のうえで,ケアマネジャーにバトンタッチされています。

◆在宅復帰にむけて

 老健は,1986年に在宅復帰を目的として創設されました。2006年4月に介護報酬が改定され,長期滞在に対して転換を促すように介護報酬の設定が見直されました(介護保険以前の制度では,逓減制といって,長期滞在により利用者からの診療報酬が下がっていくもので,現在は,短期間で退所すると加算単位により介護報酬は,増えるという仕組みになりました)。介護報酬が改定されたからと言っていきなり在宅復帰してくださいということにはなり得ません。施設運営に必要な収入を考えると,当初の退所計画と入所後のケアマネジャーの立案するケアプランが,当初目標に近づくことが理想的です。ことごとく経営につながってくることでもあり,緊密な情報交換において積極的なアプローチが必要ですし,利用者の入退所が活発になりますから,相当にバードになることは必至です。

山田:「何かがあったときにしか,お話しできない」とか「利用者とのコミュニケーションの時間がもっとほしい」と願う気持ちが強いです。利用者の皆さんともっと「濃い関わりがしたいと」です。例えば,「一緒に家に行ってお話しをする…」ということがあってもいいと思います。

大森:施設と在宅の一元化は,本当に大切だと思います。最近の地域密着型のサービスを通常の介護保険施設でできないわけがないですから。退所が決まる以前に条件整備ができるようになるし,実現できるようにしたいです。(強く感じました)

 せんだんの丘では,3カ月に1回の定期面談を実施していますが,家族に連絡が取れないとか,予定の日がキャンセルになり他の利用者家族との面談日時に競合するとか,心身の状態が不安定とか危険を伴う利用者の家族を優先するなど,面談時刻を家族都合に合わせていくなど,当たり前といえばそうかもしれませんが,さまざまな配慮のもとで在宅復帰が打ち合わせされます。

◆期待をどのように整理するか

 利用者のみなさんは,「家に帰る」ことを願う反面,ご家族は,もう少し利用させてほしいと願い,利用前と利用後では,退所への思いは変化することが多いようです。ケアマネジャーは,ケアプランを3カ月毎に変更提案し,説明のうえ承認をもらうようにしていますが,「退所の説明をされるかと思っていた」というお話しを聴きます。本人の思いと家族の思いのどちらが優先されるべきか,利用者本人が「意欲的に生活を向上していくつもりであるのか」と言うことが澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】になります。

◆ケアマネジャーの難しさを実感すること

 ケアマネジャーから聞くところによると,家族は,「ずっとここで見てもらいたい」,そのためか要望を聞いても「満足しています」「このままで」と言うことが多く,「近況や気になることなどを話題にして,話を引き出すようにしている」とのことです。
 やはり,在宅復帰に至るまでの難しさに葛藤があるということは,ケアマネジャーに対して,自信を持って家に帰すことができる手の内を用意しなければならないということです。結局,家族が願っていないことに対してアプローチすると言うことは,余分なパワーを使うということになるのですから,もっとソフトプロセスで効果的に進める必要があります。
 そのためには,ケアマネジャーが一人で抱え込まぬように,退所準備以前から居宅のケアマネジャーと連携を取り,条件整備を進める必要があります。試行的退所は,試行的といいながら退所と同じ条件を整備する必要がありますから,いかに利用者本人に自信をつけていただくかということが澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】で,ケアマネジャーや支援相談員との連携が大きな支えとなります。

 今回は,聴取内容をまとめる形式を取りましたが,山田ケアマネジャーは,施設のユニット配属の看護師経験を持ち,看護?介護?リハによるユニットスタッフの協働を経験しています。ケアプランの作成には極めて効果的にユニットとの関わりを持っているなかで,「とにかく大変です」とのお話しだったので,重く受けとめました。
 もう一つ付け加えると,「一部だけでなくすべての利用者と家族とユニットスタッフを交えてのカンファレンスを開けるようになるといいな」,それがあってこそ「理想的なケアマネジメント」であると言っていたのが印象的でした。
 ユニットスタッフがしっかりと在宅復帰イメージを描くためには,どのような状態像,介護環境が整うと在宅生活が可能になるかについて,居宅ケアマネージャーによる在宅復帰研修会(仮称)が必要と考えています。

 さて,次回は,ユニットの看護師の役割について進めていきます。

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