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【学習サポート】

[児童福祉論] 夏期スクーリングを終えて

千葉 喜久也
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 私は講義が始まる前日は,心配でなかなか眠りにつくことができませんでした。仕事の休暇をとり,家族の協力を得て大学まで来られる方々の期待を裏切るような講義だけはしたくないとの思いがあったからです。
 しかし,本番になると受講生の真剣な眼差しと豊かな人生経験からくる真摯な態度は,私を熱くさせ充実した気持ちで講義に取り組むことができました。また,休み時間や昼休み時間も惜しんで質問に来られる皆さんの思いに接して,私自身が忘れかけていた新鮮な感覚とたくさんの元気をいただいた気がします。
 さて,今回の講義の組み立ては,子ども虐待を切り口として,「子ども家庭福祉の理念と実際」を学習することでした。具体的には,子どもをとりまく現状を理解し,児童福祉の新たな理念としての保護から自立へ子ども最優先の考えについて説明をさせていただきました。また,児童福祉法改正や児童虐待防止法などの説明を通じて児童福祉機間の実践について紹介をさせていただきました。
 では,今回受講されました皆さんの感想をご紹介するなかで,講義の様子を感じ取っていただきたいと思います。

社会福祉学科Aさん
 受講して思ったこと,先生の熱心さ,あつさにすごくおどろきました。現場をしてきた先生の話には説得力があるし,ものすごく子どものことを考えて(仕事ではなく)してきた人だと思いすごく不思議な感じの人だと思いました。話を聞いていて,私自身,虐待に関してそれほど関心があったわけではなく,ただ他人事のように思っていました。今までしてきたこと,今していることの中で私も私の子どもに虐待してきたのかなと思うと,ぞっとする思いです。

社会福祉学科Bさん
 3日間という短い講義でしたが,私は子ども虐待と非行について関心があったのでとても興味深く受講させて頂きました。「虐待」と一言で言ってしまっているが,その裏にはいろいろな問題があり,今までは虐待をしている親だけを「なんてひどい親なんだ」「どうしてそんなことができるのか」「この人は人間ではない」という思いで非難していました。しかし今回のこの講義の中で,虐待をしていた親も子どもの頃に暴力を受け,被害者だったんだということ,そこまでに追い込んでしまったのはいったい何だったんだろうという目でも見なければいけないこと,そうなる前には何か手段はなかったんだろうかとあらゆる方面から見なければいけないということを学びました。

社会福祉学科Cさん
 児童福祉を学びはじめたばかりの自分にとって考えさせられることの大きい分野であった。現在,高齢者施設の介護職として勤めているが,その直接処遇を通し,利用者から学ぶことは大きい。言い換えると,日々利用者に育てられている。しかしながら,自分は常に支援者としての側に立ち,プロ意識を持って,知識や技術を高める努力をしてゆきたいと考える。ところが,児童福祉論とむき合って最初に直面した壁,それは私に,果たして,何ができるのか,私は援助する側ではないのではないか……と。
 児童福祉論をもっともっと深く学んでいきたい。福祉は心とおっしゃった先生の言葉がこの学問から実感できるような期待感を抱く。今,私は,親としての世代だが,この学問に子どもの目でむきあいたい。非行に走る子どもの更生を考えるとき10人中9人,人生をとりもどせてもその成功した過程に学ぶのではなく,失敗した1人が抱えた問題をクローズアップし考え追求していかなければいけないと,私は考えている。虐待を受けた。暴力を受けた。子どもたちが,その苦痛を感情としてもてなくなること,そのことばなき悲鳴に心の耳をむけ学んでゆきたい。

社会福祉学科Dさん
 先生のおっしゃる一つ一つの言葉が心に響いてきました。僕が児童福祉を受講した理由は,僕自身が昔不登校をしていたからでした。その時の自分の姿は今でも覚えています。僕の周りには,まともに話を聞いて下さる人はいなく,もし,先生のような方に会っていればもっと違う人生を歩んでいたかもしれない。でも今会えて良かった。
 先生はイジメる方もイジメられる方も一緒だと言った。僕自身はイジメられる側を体験しているだけに正直その答えが辛かった。しかし今,考えてみると先生の言ったことは“正しいとは思わないですけど”少し納得はしました。この授業は自分にとってこれから生きていく財産になるような気がしました。
(千葉コメント いじめを受けた子どもは,自ら助けを求めるためサインを出しています。しかし,いじめた子どもはサインは出しませんし,自ら進んで相談にも来ません。このため,学校や児童相談所はこれまで主としていじめを受けた子どもへの指導,援助が中心でありました。しかし,いじめを受けた子どもと同じように,いじめをした子どもも心に傷を負い,親から十分な愛情を受けないで育った子どもであります。今後はこうした子どもへも指導,援助の手を加えることが必要であるとの主旨から述べたものです。ご理解を。)

社会福祉学科Eさん
 千葉先生の児童福祉の講義は,非常に理解しやすく,特に私にとっては措置の時代の役人根性が,残っていたのが,良くわかりました。福祉サービスを利用する人立場で物事を考えていない自分に気がついたのです。

社会福祉学科Fさん
 教科書を繰り返し読んでも,イメージできないところが多く,どのように理解を深めていったらよいか困っておりました。しかし千葉先生の豊富な経験から具体的事例をたくさん聞くことができて,スクーリングに出席して良かったなと思っております。
 テレビ,雑誌等で児童虐待とか,少年非行の話題になっても,身近な問題としては考えたことがなかったような気がします。しかし今回虐待をしている人も少年非行を起こしている人も被害者なんだと言うことを聞いて,これまで加害者という認識しかしてこなかったため驚きとともに新発見でした。加害者なんだから,責任をとるのは当たり前そんな気持ちがあったような気がする。しかし,どの事例も現代社会の歪みの上に発生した問題でその個人を責めるだけでは,問題解決にはならず,そのため同じことが繰り返されるのだと思う。また少年非行で犯罪を犯している少年の100%が虐待を受けているという話を聞いて,またこれが7世代も引き継がれると聞いて二重のショックを受けた。一人娘がまもなく結婚します。親として相談相手になり手助けをしながら,娘が安心して子育てができるよう心がけていきたいと思う。

福祉心理学科Gさん
 私は,出産,育児というものを経験していないため,その大変さや喜びがわかりませんが,今回,児童福祉を受講して,もし,自分が親になれた時には,子どもに対し,何を教え,どう育てて行けばいいのかが,全てではありませんがわかってきたような気がしました。

 以上が受講生の感想でした(紙面の関係で一部割愛した部分があるのをお許しください。また,その他にも多くの貴重な感想をお寄せいただき,感謝いたします)。この感想の中から,講義の雰囲気と内容を感じ取っていただけたのではないでしょうか。しかし,今回スクーリングに出席された皆さんの最大の成果は,ふだん出会うことのない通信制で学ぶ仲間との出会いであったと思います。是非,今後はこうした仲間との関係を大切にされながら学習を進めて行くことを期待しております。通信制の皆さんのご健闘を期待しております。本当にご苦労様でした。いつの日かまた再会できることを楽しみにしております。

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