(研究紹介)地域創生?共生社会づくり
1. AIや遠隔技術、ロボット等を活用した次世代型福祉?医療に向けた研究
AI自動運転車いすの研究開発
ところで、近年、機械学習に代表されるAI(Artificial Intelligence:人工知能)の認知度が高まり、同時に、実用レベルに近づきつつあります。特にカメラから撮影された静止画像や動画像内に存在する物体を識別する研究が盛んに行われ、条件にもよりますがほぼ100%近い認識率を有するAIも登場しています。
以上の点から、我々の研究グループでは、次世代モビリティとしての「電動車いす」に着目しました。近年、電動車いすは障害者だけでなく、運転免許を返納した高齢者にも使われるようになっており、国内だけでも年間2万台以上販売されています。それに伴って、利用者の運転ミスによる事故も多発し、死亡事故も発生しています。そこで、我々は、事故を未然に防いだり、目的地まで安全?安心?快適に移動できたりする自動運転車いすの開発が急務であると考え、開発の中核に最先端の物体識別AIを活用して研究を進めていきます。
高齢者施設特化型モジュラー車いす開発
2. 地域共生社会の実現、コロナ後の生活困窮やひきこもり等の社会的孤立の解決のための研究
望まない孤独の可視化と予測—望まない孤独にある若者の早期発見を目指して—
海外の研究では、望まない孤独が高い者は社会的な不安や抑うつが高い一方で、望んだ孤独が高い者は幸福感が高いことを示した研究もあります(Thomas & Azmitia、2019)。日本人の望まない孤独を検討するために、上記の望まない孤独尺度の信頼性および妥当性を検討していきます。
また、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の代表であるTwitterの中には、孤独や孤立をテーマとするものが多く投稿されています。このようなテキストデータを自然言語処理の技術を用いて分析することで、望まない孤独を予測できないでしょうか。このような予測が可能となれば、望まない孤独の可視化や早期介入の一助となりえます。これらから本研究では、望まない孤独尺度日本語版の作成と、Twitterに投稿されるテキストデータから望まない孤独を予測することを目的とします。
支援?予防すべき社会的孤立とは何か
多様な孤立の指標や要因を、本学の3学部7学科の23名の関係教員の参画を得た研究会と共同研究を通じて、多分野融合的に洗い出しを行う予定です。
本研究の成果をもとに、JST-RISTEXなど外部資金の研究に応募し、本研究で特定された社会的孤立の支援?予防や、その支援や施策の評価、社会実装を果たすことを最終的には目指して行きたいと考えています。
なお、支援?予防すべき社会的孤立の特定を目的とする本研究の独自性は、下記の4点に整理しています。
①学内3学部7学科の参画を得て、福祉?看護をはじめ多分野融合型研究を行う点。
②宮城県社会福祉士会、精神保健福祉士協会、医療ソーシャルワーク協会の現場の職能団体との連携研究を行い、現場の言語的なインタビュー?データを研究代表者の大島の「実践家参画型エンパワメント評価」を用いて、測定に用いる指標を作成する点。
③震災とコロナ禍によるコミュニティの崩壊と回復などによる多様な孤立に関する関心や研究成果をもとに、コロナ禍によるつながりの減少や孤立にも焦点を当てる点。
④専門分野の文献やインタビユー以外に、孤立を扱ったドラマ?小説?映画?ネット情報の分析を行い、それらのデータを統合して、課題のある孤立に迫ろうとする点。
複数回の検討会を開催した結果、本学あるいは関係教員との関係があるいくつかの地域を設定して、共通の研究枠組みを用いた共同研究を実施することを計画中です。