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VOL.46 SEPTEMBER 2007

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『ホライズン?ブルー』『アカシアの道』 青林工藝舎

 「近藤ようこ」という漫画家を知っていますか? 文学的?心理学的?社会福祉学的な感じがする漫画家さんです(新潟市出身)。彼女の作品のなかから通信教育部で学ぶ学生の方々に是非お勧めの2冊を紹介します。

●『アカシアの道』

 母親に愛されないで育った娘が,アルツハイマーになった母親の面倒を見なければいけなくなった際の心理的葛藤が描かれています。厳しい母親に「のろま」「どうしてもっと活発に遊ばないの」などさんざんプライドを傷つけられて育ったのに,医者から認知症の母親に対して「感情面は比較的よく残りますから,プライドを傷つけるのは禁物ですよ」と言われる皮肉。「母がしかたなく私を育てたようにわたしもしかたなく母の世話をするのだろうか」。最大の問題は「わたしと母が憎みあってるからよ」,だけど子の役割で介護しなければいけないつらさ。介護を考える上で,「過去にどんな家族だったか,その人とどんな関係でどう思っていたのか」が大事という視点は忘れないでいたいと思わされます。

●『ホライズン?ブルー』

 母親からも先生からも「妹は素直で明るく積極的でよい子なのに,あなたは……」と言われ続けて育った女性の人格の形成を描いています。同じことをしても私は怒られるのに妹は怒られない,妹はかわいがられるけど私は……という経験をし続けることで,大人になっても消極的で自分に自信のない女性になっていく様子。そして,自ら母親になった際,自分の子どもが愛せないとわが子を虐待してしまう主人公。作者はあとがきで,そんな主人公を「共鳴しながら描いていく……。糾弾ではなく,弁護でもなく,どうすれな理解できるかを考えていく」と書いています。カウンセリングの場面も描かれ,「扱いやすい子」「扱いにくい子」という育児ストレスの問題も出てきて,勉強になります。最後に自分の母親と本心で話す場面は感動的です。

 近藤ようこさんの作品には,その他にも老後を描いた『ルームメイツ』,田舎に戻って就職した若い女性の葛藤を描く『遠くにありて』など深い心理描写があるものが多く,読みごたえがあります。

(Pon)

■近藤ようこ著『ホライズン?ブルー』『アカシアの道』 
 青林工藝舎(A5判 大判コミック) 1999年?2000年,定価1,050円?1,260円(税込)

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