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VOL.45 AUGUST 2007

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[精神保健福祉援助実習] センスと“はつらつ”とした元気さが大事

医療法人 さいとうクリニック 精神保健福祉士   
本学精神保健福祉援助実習巡回指導教員
 増田 忠仁

 私は澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】をはるか昔に卒業しましたOBです。平成17年よりご縁がありまして,本学通信教育部の実習巡回指導をさせていただいております。精神保健福祉の仕事についてから今年でちょうど30年目に突入しました。思い起こせば入職したての頃は右も左もわからず,今のように資格もなければ実習もないなかでオロオロしながらも,毎日が驚きの連続で当時の上司には毎日のようにお説教をもらいながらも,諦めることなく「患者さんのために」と独りよがりな思いを持って仕事をしていたのを懐かしく思い出します。
 これまでの実習巡回指導を通して多くの学生の皆様とお会いでき,昔の自分と重なるところも多く,少しでも自分の経験が,これから実習に入られる学生のお役に立てばと考えております。これまでの実習巡回指導の経験から気がついたところを書かせていただきます。

◆誰のための実習なのか

 精神保健福祉援助実習に入りますと誰でも緊張してしまいます。それこそ毎日が驚きの連続と感じる学生も多いと思います。まずそこの場所,職員,対象者に慣れることが大切です。私のクリニックにも毎年30名を越える学生が実習に入ります。最初は緊張してコミュニケーションがとれない学生もいます。しかし,これではあっという間に実習が終わってしまい,ただ楽しかったり辛かったりの思い出しか残りません。本学の学生では問題が直面化したケースはありませんでしたが,実習記録を見せていただくと対象者とうまく会話が成立できずに悩み,記録には「上手に返答できずに困りました」というような記載をしている学生が多数いることに気付きました。アドバイスとしては上手に返答できなくて当たり前で,対象者とその場その時を共有し理解しようとする姿勢が大切であることを伝えました。考えてみれば「うつくしい記録を記載するためだけ」に対象者と会話をしたりすることが実習の目的と考えてしまっているように思えるのです。
 精神保健福祉の世界では,自分は相手を映す鏡で,対象者も自分を映す鏡であるとよく言われます。対象者を理解すると同時に自分自身の自己覚知ができなくてはなりません。自分のためだけの実習ではなく,対象者と向き合う自分のための実習でなければならないと思います。そうなれば必然的に実習記録の書き方も変わり自分が見えてくるはずで,実習のまとめや振り返りのときに「生きる記録」となるのではないでしょうか。

◆学生の基本的な態度

 通信教育部の学生は,ほとんどの場合が自分の仕事を持っています。実習の基本的態度やマナーは改めて言うまでもありませんが,一番気になるのはやはり言葉遣いで次は指導者から指導や助言をもらう場合の態度です。言葉では「ハイ」と返事をしていますが表情や仕草まで気をつけているでしょうか。実習先によっては実習指導者が学生より年下であったり,経験が少なかったりすることがあります。社会人や関連職種の経験のある学生が気をつけなければならない事柄を実例で紹介します。

 学生Oさん(女性)
 学生は看護師の資格を持ち実務経験もあります。実習の配属先がデイケアでした。学生はそれまでの経験からデイケア以外での実習を希望し再三にわたり指導者に伝えていたそうですが,職場の都合によりかないませんでした。希望がすべて通るわけもなく少し不満そうでそれが表情にも表れていましたが,視点を切り替えて対象者と接していくよう助言しました。このように,学生の希望通りに実習が進まず今までの仕事の経験が充分だった場合でも,福祉の視点から本人だけへのアプローチだけではなく,家族を通して考えたり,地域へのアプローチも大切なソーシャルワークなのだと思います。

 学生Mさん(男性)
 学生はまったく正反対の工学系の仕事を続けてこられた60歳を少し越えた方です。初めてお会いしたときは正直どうしたらいいのか迷いました(失礼)。しかし,学生本人から積極的なアプローチがあり面談すると,とても謙虚で真摯な気持ちで通信教育部に入ったことが理解できました。実習先もかなり厳しい場所を設定しましたが,ご自分のお嬢様くらいの指導者にしごかれたようです。前期後期二回に分けた実習もよかったのか,スタッフや対象者からも慕われ,1日の実習が終わるとビールを片手に補習もさせていただいたようです。学生は他者とのかかわりや,他者を理解する新しい視点を持つことができたようで,今の仕事を進める上でも大変参考になりましたと振り返りをされていました。

 良いか悪いかではなく,これらの事例は対照的だったのでまとめてみました。より良い実習とは学生自身が体験したり経験したことを座学で勉強してきた学問と結びつける作業をすることにより,精神保健福祉士としての新たな視点を持てるようになることであろうと思います。

◆より良い実習のために

 精神保健福祉援助実習を迎える学生の皆様はとても不安な気持ちでいっぱいだろうと思います。実習先によっても指導者によっても内容が幅広いからではないでしょうか。しかし間口は狭くても,奥が広いのが精神保健援助実習の特徴であるともいえます。病院,診療所,施設,相談室,デイケアなどなど場所は違えども精神保健福祉士の基本的視点は同じなはずです。ここで澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なことは,実習先あるいは実習指導者が学生に対し,実習を通して何を伝えたいのか,何を感じていって欲しいのかを学生と指導者とが共通認識を作り上げていく作業だと思います。そのためには,指導者と充分にコミュニケーションをとる必要があり疑問や不明な点をそのままにせず,いつでも聞ける良い関係作りが必須だろうと考えます。こうして築かれた人間関係は自分の財産になり,その後のネットワーク作りの基礎となります。精神保健福祉士の特徴は社会資源を活用することで,その中には「人」も含まれとても澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な役割をするからです。
 私のクリニックに来る学生には必ず「一対一の適切な関係作りがこの仕事の基本です。そのためには対象者を理解することが必要で,あなたはその目的のためにどんな道具(ツール)を使いますか」と聞くことにしています。なぜなら小ができなければ大はできないと私の師匠(古臭い)から教わったからです。さらに,自分の特技や一芸持つこともツールに変えてしまうことができるのです。常々,PSWの資質とは「センスとはつらつとした元気さ」が大事で8割と私は考えています。優等生タイプの学生が多い中できらきら光り輝くダイヤモンドの原石のような強い個性を持った学生がこの世界に飛び込んでくることを心待ちにしているのは私だけでしょうか。実習先に合わないのではなく,荒削りでも輝きの片鱗が見えていれば必ず誰かが磨いていってくれると期待しますし,こうした学生であればおのずと道は開かれます。

 通信教育部の学生は教員と接触を持つことや,学生同士の交流の機会が少なく日頃の学習に苦労されているのではないでしょうか。私たち実習巡回指導教員はOBが多く,またその地域の現場で働いています。いろいろな相談や悩みを打ち明けてみてはいかがでしょうか。実習先から,実習巡回指導時に巡回指導教員と実習生が,お互いに初対面ということがないようにして欲しいとの申し入れがありました。普段,学生を受ける立場では事前にオリエンテーションを必ず予定していますが,この申し入れには目から鱗の思いがしました。時間の許す限りで,学生が希望すれば事前にオリエンテーションができればと考えています。また実習先を設定する場合も良いアドバイスをもらえるかもしれません。全国各地の実習巡回指導教員をうまく活用しても良いのではないでしょうか。

 最後になりますが精神保健福祉援助実習は絶対に楽しいですよ。

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