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VOL.41 JANUARY 2007

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[OB MESSAGE]
体験学習?援助実習?国家試験?就職を経験して

通信教育部OB(精神保健福祉士) 今井 優美

 この原稿を書いている1年前の自分の姿を思い浮かべると,お正月返上で精神保健福祉士の国家試験受験に向け,必死に勉強をしておりました。周囲の協力と自分自身の努力の甲斐あって,何とか精神保健福祉士の資格を取得することができ,現在,地域活動支援センターI型の職員として勤務しています。
 もともと私は約10年間,福祉とは全く異なった仕事をしていたわけですが,今の私があるのも,2年間福祉大において福祉についての基礎や専門性を学んだことはもちろん,3?4年次に行った体験学習と援助実習による体験が大きく占めているように思います。
 体験学習は,病床数が多いながら先駆的活動を積極的に取り入れている精神科病院で2日間行いました。この時が初めて精神疾患のある方々との交流となりましたが,この時の私は正直,精神障害者に対する差別?偏見があったと思います。病棟内見学では少なからず衝撃を受けるような場面がありましたが,デイケア体験では,緊張し戸惑う私に利用者の方々から優しく積極的に話しかけられ,いつの間にか自然とコミュニケーションが取れるようになっていました。そうしたなかで,精神障害者だからといって何ら変わらない,それぞれの個性を持った人たちであること見て?聞いて?感じ,体験することによって私の中にあった差別?偏見はあっけなく取り払われました。
 こうした貴重な体験を経て,早く援助実習を行いたい気持ちが広がりましたが,大きな問題が立ち塞がりました。実習先が決まらないのです。私の希望は精神科病院での実習でしたが,複数の病院に断られ仕方なく居住する県内の社会復帰施設をインターネットで探しました。しかし,この職種に携わる知り合いも居ないため相談もできず,何となく目に止まった地域生活支援センターを選びましたが,この選択が私の人生を左右する結果となるとは思いもよりませんでした。
 結局,そのようにして選んだ地域生活支援センターでの実習が決まり,敷地内に支援センターの他にも生活訓練施設,通所授産施設,グループホームが併設されていることから,生活訓練施設と通所授産施設については実習指導者の配慮により,数日ずつ実習を行う機会をいただき,一石三鳥となりました。
 実習先へは,片道1時間かかる場所でしたが,その距離と時間を大変だとは思えないほど毎日が非常に楽しく充実しており,特に,たくさんの利用者の方々と出会うことにより,教科書の中でよく見かけた「疾病と障害を併せ持つことによる生活のしづらさ」の意味を知り,そうした生活のしづらさを抱えながら現状維持を望む方が多い反面,向上心に溢れている方もおられ,人としてのさまざまな生き方について学ぶべき点がたくさんありました。また,精神保健福祉士の関わり方を実際に見て,感じるものも多く,私の中で精神保健福祉士になりたい気持ちは確かなものとなりました。今でも,実習中にある精神保健福祉士が語った「この仕事は,利用者の背中をポンと押してあげること」は忘れることのできない一言です。
 1カ月という長い実習期間で,利用者の方との何気ない会話の中に今まで知り得なかった自分の姿をさまざまな方向から見ることができ,貴重な体験と時間を過ごすことができたと思っています。実習の最後に利用者の方々へ挨拶をしていると,ある方から「応援していますから,頑張って精神保健福祉士になってください」と励ましの言葉をいただきました。その言葉があったからこそ頑張れたように思います。
 このようなたくさんの方々の励ましや協力もあり,無事に大学を2年で卒業し,国家試験にも合格することができました……と,ここまでは良かったのですが,せっかく精神保健福祉士の資格取得できたものの,それを生かす場(就職先)がなく,仕事も辞めてしまっていた私は,アルバイトをしながらハローワークと社会福祉協議会の福祉人材センターに足繁く通い,インターネットで求人情報を探す日々で,ようやく求人を見付け応募しても履歴書返却や,面接時に福祉職での経験がないことを露骨に言われることも多々あり,気分は落ち込み,意欲も減退していました。
 そうした日々を送っていたある日,実習指導者より「法人内に欠員が出るから来ないか」と連絡を受け,面接に向かいました。その時に言われたのは,「もし求人募集を行うとしたら,実習生の中でもあなたしかいないと思っていました。福祉職とは異業種での社会人経験があるから,それがいいんですよ」と自信喪失気味だった私へ温かい言葉をいただき,通所授産施設への配属となりました。
 諸事情あり,こちらの通所授産施設は数カ月で退職することになりましたが,精神保健福祉士としての基礎となる部分を身につけることができたと思います。精神保健福祉士の仕事らしい仕事(福祉制度の利用など)を行うことはありませんでしたが,一つ挙げるとするならば,信頼関係が存在しなければできない話?相談があり,それを通所者の日常生活の中で,どのような形で精神保健福祉士として関わり,利用者の方々と信頼関係を築き上げていくか,という経験を身をもって学ぶことができました。やはり,どの業種も経験ありきを実感したところです。
 現在は,地域活動支援センターI型の職員として開所準備の貴重な段階から携わり,少しずつ増加している利用者と関わりながら,まだ目に見えない精神障害者を対象にどのような支援ができるのかを他職員と共に考え,勉強不足を実感し,チームアプローチを実践しつつ過ごしています。
 このように,私の場合は偶然見付けた実習先が縁で就職まで結びついたわけですが,そのなかで感じたことは,出会いの大切さです。今でも実習指導者は私のスーパーバイザーであり,時折助言を求めることがありますし,実習時に出会った人たちとはいろいろな形で繋がりがあります。また,何よりも実習生である私を快く受け入れてくださった多くの利用者の方々との出会いは感謝の一言に尽きます。そして,在学中に福祉大で出会った仲間は私の財産であり,心の支えとなっています。たくさんの出会いに感謝し,人生の糧とし,よりよい支援者となれるよう努力していきたいと思っています。

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