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VOL.11 JULY 2003

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[関連施設紹介]
せんだんの杜のサテライトケア構想(2)
「ひまわりの家」と「よりみちの家」

せんだんの杜 杜長
中里 仁

住み慣れた地域でもう一度暮らすために

 前号でご紹介した「中山の家1?2」から徒歩10分程度。中山商店街に古くからあるスーパーマーケットの角を曲がった住宅街の1軒家が「ひまわりの家」です。1階が台所,風呂,トイレと6畳?6畳?8畳の3部屋。2階に6畳?6畳の2部屋があり,ちょっとした「家庭菜園」ができるくらいの庭つきです。
 ここ「ひまわりの家」は,せんだんの杜のリベラ荘(指定介護老人福祉施設「特別養護老人ホーム」)にお住まいになっている方々のなかで痴呆症等のため,施設という環境にどうしても馴染めず,落ち着けなかったり,不安になってしまわれる方々をリベラ荘から毎日数名「日中」この家にお連れし「これまでの生活」により近い環境で「生き生きと,そしてこころ穏やかに」過ごしていただく居場所として,平成13年の7月から法人独自の事業とし開設したもので「特養入居者の地域生活体験?逆デイサービス」と呼ばれています。
 なぜ「地域生活体験」「逆デイサービス」かと申しますと,これまでの特養ホームの社会的な役割やその捉えられ方は「終の棲家」とも言われ,「重介護」を必要とされる方だけではなく,「社会的な理由」から比較的自立されている方も入居されており,その方々を含め特養に一度入居された方は自宅や地域に戻ることは難しいとされていました。(現実には自宅に戻ることはほとんど皆無に近い)。
 そして,介護保険の導入後は「介護認定」というしくみのなかで「要支援」「要介護」というすみ分けがなされ,社会的な理由による特養利用はできなくなったばかりではなく「要介護と認定された方であっても,介護度の低い方は可能な限り住み慣れた自宅や地域で暮らし続けられるしくみやサービス」の構築が国の施策として模索されています。ですが,介護度が低いとは言え認定を受け特養を利用されている方が「今すぐに自宅に戻れるか」と言えば,答えは「現状のしくみやサービス量?料では無理」。ましてや「痴呆症」の方であればなおさら厳しいのが現実です。

ひまわりの家 ひまわりの家

一人一人の「生活力」を引き出すために

写真 しかし,リベラ荘内におけるミニデイホームやユニットケア実践の積み重ねから,痴呆症の方であっても相対する職員の関わり方と居場所(環境)を変え創ることで,それまで施設では発揮することができなかった,「ご本人の身に染み付いた生活力」(具体的には女性であれば炊事洗濯を中心とした家事全般の能力であったり,男性であれば庭仕事やちょっとした力仕事であったり)が充分に発揮されることが実証されていることから,仮に特養から自宅に戻り生活することが今すぐは無理であっても,日中「ひまわりの家」で炊事や洗濯,庭の手入れをしていただくことで,この生活力を引き出す(自然と引き出てきますが)ことができるし,なによりも利用者の方々が生き生きと,こころ穏やかに生活されるための生活支援が行なえる。このことを私たちは「地域生活体験」の場と呼んでいるのです。
 そして,他の法人事業所や行政機関からも「逆」デイサービスと呼ばれているのは,「自宅」から施設のデイサービスに通うだけではなく,「施設」から(からも)自宅に近い環境の「ひまわりの家」に日中通う,すなわち通常とは「逆」の方向移動をしていることから「逆」デイサービスと呼ばれるようになったわけです。

ショートステイ利用者の逆デイ(通い?宿泊)サービス
「よりみちの家」

 「ひまわりの家」開設から1年後の平成14年9月,リベラ荘のショートステイ(短期入所生活介護事業)を利用される方々の内で,やはり施設に馴染めない方(多くは痴呆症の方)の「通いと宿泊」の場として同じ中山地区に開設されたのが「よりみちの家」です。
 ショートステイで「泊まり」にきて,更に別の場所に「わざわざまた泊まる」。確かに,いっけん無駄に思えますし,限られた保険収入のなかでの自主事業として遣り繰りするのですから経営的な面での課題が残りますが,「痴呆症であっても自宅でなんとか生活されていらっしゃる方が」馴染めない施設での短期宿泊を無理やり行なうことで,混乱し痴呆症を悪化させてしまったのでは「生活介護」事業としての意味もありません。なにより,ご本人がせっかく持っておられる「生活力」をみすみす殺してしまい,在宅での生活が今以上に困難になってしまうことにもなりかねないのです。
 「ひまわりの家」にしても「よりみちの家」にしても,今はあくまで法人の自主事業ではありますが,「特養に入居されている方が再び住み慣れた地域と自宅に戻る,又在宅サービスを利用されている方が,最後まで地域と自宅で住み続ける」ために必要な「新しい在宅サービス」としての確かな手ごたえを感じております。その手ごたえとは,人生の先輩である利用者の方々が,その生活力を取り戻した時に見せて下さる生き生きとした「慈愛に満ちた笑顔」です。

よりみちの家 よりみちの家
よりみちの家

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