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VOL.11 JULY 2003

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[心理学キーワード] 無意識

助教授
渡部 純夫

1.「無意識」の正体を考える

 「無意識」とは一体何物なのであろうか。いくら「無意識」が存在すると言われても,見ることもできないし,触れることもできなければ,今すぐその存在を信じろと言われても,「はい信じます」とはいかないものである。そもそも,よく考えてみれば人間が意識できないものであるからこそ「無意識」なのではないか。意識し理解できたとしたら,それは「無意識」ではないのではないか。ごもっともと言いたくなる。果ては,「無意識」という言葉さえ必要ないのではないかと言うことにもなりかねなくなる。

2.「無意識」は存在しないか

 人は不安な状況に置かれたときに,「何かわからないが何者かが内側から襲ってきて,そら恐ろしい気持ちに取りこまれることがある」。自分の内側から突き上げてくるものの正体を見ることはできない。でもそれは確かに存在していると感じることができるし,「私」とは違うものであることも了解できるのである。フロイトは,その存在に「無意識」という名前をつけたのである。

3.臨床と「無意識」

 臨床の場面で,臨床家がクライエントの内面を分析しようとするとき,深層心理学の客観的知識をそのまま適用しているわけではない。あくまでも,クライエントの主観的体験を基礎に,クライエントが自分自身をどのように理解していくかという点に重きを置いてそのプロセスにつきあうわけである。つまり,臨床家が扱う無意識は,「自然科学」の方法とは違い,クライエントの問題解決のために使われ,人間が自分自身について了解するのに効果があり,有効な存在と言うことになる。

4.一般的な意味での「無意識」とフロイトの考えた「無意識」

 一般的な意味での「無意識」とは,個人の行動を左右し,思考や感情の方向づけに大きな影響を与えながらも,本人には自覚されない心的過程を言う。
 フロイトは,「無意識」を二通りに分けて使用している。形容詞的に使われる場合は,現実的には認めがたい欲望や感情,思考の性質ゆえに強く抑圧されて,意識にはあがってこないものを言う。つまり,防衛機制が働き意識の外に押し出されたものをさしている。一方,名詞的に用いられた場合は,局所論的視点から見たもので,意識,前意識と共に人間の精神構造を作っている一部としてとらえることができる。なお,1920年代にフロイトは,呼び方を変え,無意識をイドと,意識を自我と呼んでいる。

5.ユングの考えた「無意識」

 ユングもフロイトと同じように「無意識」を二通りに使っている。一つは,自我が及ばないこころの内容を描くためで,もう一つは,それ自身の特徴や法則,機能を持ったこころの場を書き表すためである。ユングは無意識を,抑圧された,幼児的,個人的経験が蓄えられているだけの場とは見ないで,個人的な経験とは異なるより客体的なこころの活動の場であるとも考え,個人的無意識と集合的無意識を考えついたのである。

6.「無意識」への接近

 では,無意識に接近するための方法としてどのようなものがあるかあげてみることにする。人間が無意識の働きを意識するのは自我の安定を欠くような不安な状況に追いこまれたときが圧倒的に多いと考えられるが,無意識は創造的な面も持ち合わせていると考えることができる。そこで,無意識への接近方法の澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なものとしてとしてイメージをあげることができる。
 例えば,波の音を聞きながら砂浜を歩いている自分をイメージしてみよう。時間と共にイメージに変化が生じてくる。こころのエネルギーが流れて無意識の内容が意識の方に近づいてくる感じが自我の働きにより把握されるようになる。このように,イメージを通して「無意識」への接近がはかられると考えることができる。夢やファンタジーがイメージとしてとらえられることから,夢やファンタジーを利用しながら「無意識」の創造的エネルギーを臨床の場面で活用しているのが心理療法と言えなくもない。

 引用?参考文献
 河合隼雄 無意識の構造 中公新書 1977
 B.E.ムーア B.D.ファイン(福島章監訳) 精神分析事典 新曜社,1995
 チャールド?ライクロフト(山口泰司訳) 精神分析学辞典 河出書房新社,1992
 ラプランシュ?ポンタリス(村上仁監訳) 精神分析用語辞典 みすず書房,1977
 アンドリュー?サミュエルズ(山中康裕監訳) ユング心理学辞典 創元社,1993
 中島義明ほか編集 心理学辞典 有斐閣,1999
 フランク?J?ブルノー (安田一郎訳) 心理学事典 青土社,1996

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