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【学習サポート】

[福祉思想論] 「福祉思想論」を担当して

社会福祉学科 学科長代行
三浦 俊二
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●なぜ思想なのか

 私は勉強をするにあたって,ここ何年も形にこだわり過ぎていなかったかという反省があります。統計を駆使したような分析科学に憧れ,計量分析に明け暮れたときもありました。しかし,単純な言い方をすれば,高齢化率が何パーセントであるかということを予測することが大切なのか,具体的な高齢者の状況を知ることが大切なのか,この違いは大きいのではないでしょうか。
 私が「福祉思想論」を担当するようになったのは偶然でもあり,その素地は高校生だった30年前にさかのぼります。どういうわけか,孔子や孟子の中国思想に興味をもち,論語などを読みふけっていたのですが,大学紛争などが盛んなときになぜ中国思想だったのかよく覚えていません。しかし,このことが大学に入ってから役に立ったのは偶然でした。私は農学部で農村社会学という勉強に出会いました。そこで農村の生活構造の勉強をしているときに二宮尊徳の思想に出会いました。尊徳は江戸時代後期の経世(けいせい)思想家のひとりとして位置づけられているわけです。尊徳の思想のなかには中国思想が流れており,そこに独自の実践理論を構築したわけですが,私は大学時代にその尊徳を研究している恩師と出会い,今日に至っているというのが正直なところです。
 そして,農村の生活問題,特に農村の高齢化問題に取り組んでいたのが,福祉と出会うきっかけでした。さらに,尊徳の思想の原点ともいうべき分度(ぶんど),推譲(すいじょう),勤倹などの考え方(教科書p.236参照)が福祉に通じることに気づき,講義などで学生諸君に話しをしてきたという経緯があります。今の学生諸君には薪を背負い,本を読んでいる銅像しかイメージにないかと思いますが,その本質を知ろうという気持ちが大切なのではないでしょうか。

●課題の選択とレポート作成の構成

 レポートを作成するにあたって,みなさんは課題を決めるのに苦労しているのではないでしょうか。教科書を読み,内容に興味をもつことが大切ですが,福祉思想とは福祉に取り組むための考え方であり,自らの福祉に取り組む意思の確認でなければなりません。そこで,課題の選択を行ってほしいと思います。また,一冊の教科書を読んだだけで,自分が選んだ課題を完結するのはむずかしいかも知れません。『社会福祉思想史入門』319ページ以降にある「文献一覧」の文献なども読まれてみるとよいのではないでしょうか。
 そのあと,課題を決め,どのように書き進めるかといえば,なぜ,このテーマにしたかの理由が必要です。そして,テーマのもつ意味や内容の説明と理解を深め,要約し,自らの意見,考え方を述べることが大切です。教科書の内容を書き写すようなことだけでは,あまりよい評価はできません。また,教科書を引用したような場合は,注を付して,出典をしっかりと明記しなければなりません。
 俗な言い方ですが,起承転結,そのうえで,しっかりと自分の意見をもって,論述してほしいと思います。「福祉思想論」です。自分の意見,考えをもってください。

●レポートの採点にあたって

 レポートの評価は,課題を決めた理由,内容,自分の考え等が書かれていれば高い評価をしています。その反対に,前後の脈絡がしっかりしていないと低い評価になります。また,誤字,脱字もよい評価にはつながりませんので注意してください。私など,パソコンが普及し,ワープロで原稿を書く時代になった今でも国語と英語の辞書は手元に置いて原稿を書いています。
 再提出をお願いしているレポートは,論理性に欠け,自分の考えを述べていただくにしても,経験則からの独断では評価しておりません。また,先程述べた誤字,脱字が多いとやはり再提出をお願いしております。

 みなさんは一期生であり,まだまだ先は長く,じっくりとレポートに取り組まなければなりません。計画的に一つひとつ単位をクリアしてほしいものです。

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