2018/07/14 保育士?幼稚園課程

TFU保育キャリアデザインセミナー2018 in Summer?第2部? 

前回の「TFU保育キャリアデザインセミナ-2018 in Summer」第1部の記事に引き続き、こちらでは、第2部の内容についてご紹介していきます。

第2部では『学生と保育者の学びをつなぐ』と題して、現在、TFU保育士?幼稚園課程で学びを深める私達学生と、本学本課程の卒業生で、現在保育者として働いている先輩方とのシンポジウムが行われました。コーディネーターとして、株式会社バトンに務めていらっしゃる、キャリアコンサルタントの岸本唯先生にお越しいただき、第2部の進行を行っていただきました。
パネリストとしては、
TFU教育学科4年 伊藤ほのかさん
TFU社会福祉学科4年 前野穂乃実さん 
TFU子ども教育学科H29年度卒 社会福祉法人芳雄会 保育士 長谷川真由先生
TFU社会福祉学科H29年度卒 社会福祉法人こばと会 保育士 寄松彩乃先生
に、
指定討論者として、
TFU社会福祉学科H28年度卒 宮城学院女子大学附属認定子ども園 
森のこども園 保育教諭 大久保美紗先生
に、
第2部前半では、以上の5名の方々にご登壇いただき、学生、保育者のそれぞれの立場で、テーマについて発表や討論をしていただきました。4名のパネリストは、3年前から引き継がれているミシュラン?プロジェクトで、現在活動を行っている4年生と、昨年までミシュラン?プロジェクトで活動を行ってきた先輩方です。ミシュラン?プロジェクトとは、幸せな就職を追求するために、結成されたプロジェクトであり、理論と実践の往還プロセスに従って、保育の質を見極める評価指標を追求したり、就職活動ガイドラインの作成を行ったりなど、保育の質の探求と自己実現に向けて活動を行っているプロジェクトです。

 
最初に、現在ミシュラン?プロジェクトとして活動している、伊藤ほのかさんと前野穂乃実さんから、現在のミシュラン?プロジェクトの活動状況と、今後、どのように活動を展開していくかについて、発表していただきました。

2人は、昨年12月に行われた『TFU保育フォーラム2017 in Winter』で、理論、対話、実践を繰り返す、ミシュラン?プロジェクトの先輩方の発表を聞き、先輩方に憧れ、ミシュラン?プロジェクトで活動していきたいと、決意したそうです。

伊藤ほのかさんは、今年のミシュラン?プロジェクトで、指針?要領改訂(定)に基づいて乳児保育に焦点を当て、現在の学びを深めています。乳児期における育児行為について、文献を読み漁るだけでなく、現場に赴き「担当制保育」「見守る保育」などに出会う中で、心動かされる体験をした一方、両者真逆な保育観であっても否定的な捉え方をせず、「様々な考えに出会うことができた」と、保育を探求する面白さや充実感を語っていました。乳児保育の学びに楽しさを感じ始めた中で始まった幼稚園実習では、最初は乳児の勉強から幼児の学びへ急に転換することに抵抗を感じていたが、実習では『10の姿』を意識しながら実習に取り組んだことによって、子どもたちの気づきや学びに出会うことができ、学びの深い学習となった、と話していました。乳児保育だけでなく幼児教育についても学ぶ中、頭がパンクしてしまいそうになったこともあったそうですが、新たに「学びたい!」という想いがどんどん沸き上がり、まだまだこれからも勉強し続けていきたいという気持ちになっているそうで、聞いている側が今後の保育の学びに希望が持てるような発表をしていただきました。
ほのかさんからの発表に対して、指定討論者の大久保美紗先生からは「様々な保育の考えや、学びに出会い、プチパニックを起こすほどのなかで頑張ることができた原動力は何だったのか」という問いが出されましたが、ほのかさんは「先輩のようになりたい、という想いが一番の原動力でした」と話していました。また、ほのかさんから先輩方への「4年生の今の時期、何を優先していくべきか」という問いに対して、大久保先生、寄松先生は「勉強につきる。勉強したことが今現場の実践で、覚えていたことを生かせている」「学び続ける姿勢が生きている。学ぶ姿勢を持つことが大切」と、先輩方がこれまで経験してきた学びがどれほど大切であったかを、改めて伝えてくださいました。

続いて、前野穂乃実さんの発表では、現在文献研究を行っている『赤ちゃん学』の学びを中心に発表していただきました。他のミシュランメンバーが幼稚園実習で不在の中、穂乃実さんは、ひとりで赤ちゃん学関連の文献を読み漁り、赤ちゃんの秘めている能力の高さや、赤ちゃんが十分に学習できる環境がいかに大切であるかということを学び、乳児保育の面白さを感じたと語っていました。乳児保育は子どもの将来の基盤を作るため、保育者がいかに子どもたちの成長を支援していくかが大切になります。保育者という、誇り高き責任感のある仕事では、学び続ける視点を常にもつことが大切であると、発表をしていただきました。
ほのみさんから先輩方への「現場へ出てからも、学ぶ方法、学ぶ続ける方法として、大学や学生に求めることはあるか」という質問に対して、大久保先生は「学び続けるために、保育者同士語りやすい環境が大切です。学生や後輩の保育に対する情熱に触れると、やる気が出るため、大学がこのような対話の機会などをもっと多く作り、一人ひとり、自分の想いを発信できる場をより増やしていってほしい」と、現場を経験されている先輩から、貴重なご意見をいただきました。また3歳児クラスを担当されている大久保先生は、乳児期にどんなかかわりをしてきたかをよく理解したうえで、幼児期の保育につなげていくことが大切であると、乳児期と幼児期の接続の澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】性についても語っていただきました。
 
 続いて、昨年度、本学本課程を卒業し、現在保育士1年目としてご活躍されております、長谷川真由先生と寄松彩乃先生から、仕事との向き合い方、ミシュラン?プロジェクトの学びがどう生かされているかについて発表していただきました。長谷川先生と寄松先生は、昨年ミシュラン?プロジェクトで、保育就活ガイドラインに、採用が決まってからの学びについて示したフェーズⅤを新たに作成し、実践してきました。発表では、フェーズⅤを実践し、迎えた1年目の保育はどうであるかについてもお話しいただきました。

長谷川真由先生は、現在0歳児の担任をされており、担当制を取り入れた、一人ひとりの心の安定を大切にした保育を行っています。保育者となって初めの頃は、子どもがずっと泣き続けている状況に泣きたい気持ちになる、分からないことだらけの日々。そして憧れの先輩と働きながら、学んでいく日々を送っていたそうです。また、人間関係で緊張することが多く、保育の中で、「こうした方がいいのに???」と思うことも、なかなか相談できず、自分から発信することができなかった、と、これまでの苦労や1年目のギャップについてお話していただきました。大変なことだけでなく、学生の頃に感動していた保育を、今自分が保育者となって実践できていることに感動できることや、子どもたちの心の安定を図るために、軌道修正の無い生活習慣ができてきたことについて喜びを感じているそうです。長谷川先生は、幸せには現在はまだ満足できていないが、3か月でここまで子どもたちを育ててくることができたことに誇りを感じており、これからも保育者の幸せを求め続けたいと、語ってくださいました。また、長谷川先生から学生へ向けて、「?」と思ったことを忘れず学びの姿勢を持ち、受け身から脱却することが大切であるとお伝えいただき、改めて、自発的に学び続けることの大切さを感じることができました。また、保育中、先輩保育士に対して、「こうしてほうが良いのでは?」と思っても、うまく自分の考えを伝えられないとき、どのような方法で意見を発信していけば良いのかを、長谷川先生の実際のエピソードから考えさせられました。

続いて、「出会ってしまった、終わりなき学び」と題しまして、寄松彩乃先生に発表していただきました。寄松先生は、現在務めていらっしゃる園の、保育に対して妥協のない先生方の姿、どんな時でも自然に保育を語り合える環境、先生同士高め合うことができる、人間性を含んだ専門性に惹かれ、就職を決めたそうです。寄松先生は、悩まない日がなく大変な日々ではあるが、現在も、自分の選んだ園で保育の仕事ができていることに幸せを感じているとおっしゃっていました。4月の頃は、何が分からないのか分からない状態の中、保育の質についてじっくり考える余裕がないくらい、1日をこなすことに精いっぱいで、学生時代の頃よりも積極性が無くなってしまっていたそうです。そのような中でも、フェーズⅤで保育の理念を理解しておいていたからこそ、今となって、より自身の保育が、月日を重ねるごとに良い方向に進んでいることを実感できていると寄松先生はおっしゃっていました。フェーズⅤで就職先に務めるまでの準備を行うことは、就職後に向けて求められることではあるが、フェーズⅤを行っても実際現場に出てみるとうまくいかないこともたくさんあります。内定から、働くまでの限られた時間の中で、何を学んでいけば良いかを、しっかり計画立てていくことが大切であると、寄松先生から教えていただきました。
寄松先生がもし1年前に戻れるとしたら、発達を1から勉強すること、手遊びやピアノなど、保育の引き出しを増やすこと、定期的にボランティアに行き、行事などにも参加し、実際に働き始めた時のイメージを持てるようにすること、より対話を行い、自分の考えを広げていくことを、行っていきたいとおっしゃっていました。
失敗を恐れて受け身になっている寄松先生に、先輩保育士は「良い失敗をしてください」とお話してくれたそうです。失敗をしても、なぜ失敗したかを考察し、自分の成長となるよう、積極的に様々な経験を積み重ねていくことが大切であると、寄松先生は自身の体験談を通して、私たちに伝えてくださいました。また、分からないこと、不安なことがあったとき、園長先生や先輩保育士が、親身になって話を聞いてくれることが、現在の職場で幸せと感じていることだと、寄松先生はお話していました。

実際に保育士として1年目を迎えた先輩からの体験談やアドバイスは、そう遠くはない就職を控えた、私達学生にとって、大変大きな学びと刺激になりました。
続いて第2部後半では、それぞれの、パネリストの発表を踏まえ、会場の学生からパネリストへ、様々な質問が投げかけられました。

○伊藤ほのかさんへの質問と回答
Q.幼稚園教諭を志望している理由は?
A.もともと幼稚園教諭を志望して福祉大に入学しました。幼稚園教諭になりたいから幼児教育だけを学ぶのではなく、様々な保育の魅力や様々な視点で保育を学ぶことに楽しさを感じている中、何か1つの視点に絞るのではなく、視野を広くして学んでいきたいと思っています。現在、幼稚園教諭を強く志望しているというわけではありません。

○前野穂乃実さんへの質問と回答
Q.赤ちゃん学について、参考になる本を紹介してほしいです。
A.赤ちゃん学の文献を読む時は興味のある見出しの本や目次を見て、所々抜粋して読んでいたため、本は、様々ありますが、赤ちゃん学を学ぶきっかけになった本を、いくつか紹介します。
?「あかちゃんの不思議」著:開一夫
→様々な実験が簡単にまとめられています。赤ちゃん学にはまったきっかけの本です

?「ママ、わたしこんなこと思ってるよ」 監修:小西 行郎  イラスト:横峰 沙弥香
→イラストが豊富で、心理学に基づいて書かれています。わかりやすいです。

○長谷川真由先生への質問と回答
Q.軌道修正の無い保育とはどういったことですか?
A.生活の中で食事、睡眠、排泄など、年齢が上がって、自分でやれるようになったとき、大人が子どもの生活習慣を直したり注意したりすることが無いように、0歳のときから正しい生活習慣が身につくように丁寧に伝えています。

○寄松彩乃さんへの質問と回答
Q.学生時代ボランティアを行っていた時と、今とでは、学びの姿勢や内容はどのように異なりますか?
A.学生時代は問いの姿勢をもってボランティアをしていたが、現在保育士として働いて、子どもの命を預かる、自分の保育で子どもが過ごす、という責任感や、何もできない自分の未熟さを感じています。そのような中でも学生時代に培った問いの姿勢は、今の現場にも活かされています。

そして、コーディネーターの岸本唯先生から、私達学生全員に向けて、「どうしたら1年目に誰しもが経験する、保育理念と現実の自身の力量のギャップ埋めることができるのか」という発題をいただき、パネリストの方々からギャップを埋めるための方法について回答していただきました。
保育士1年目を経験している長谷川先生と寄松先生からは、ギャップを知っているだけでも、心構えになる。3月31日までにやるべきことをしっかり考え、計画し、フェーズⅤを行っていくことが大切であるとおっしゃっていました。

就職を目前とした、伊藤さんと前野さんは、現段階で、保育現場で働くことをうまく想定することができていないが、残り少ない大学生活の中で、これだけは自分のなかで確立する確かなものをもって、意思が弱い自分を将来脱却できるように勉強したり、保育現場に生かしたりすることができる学びを絶えず行っていくことを大切にしていきたいと、話していただきました。同テーマについて指定討論者の大久保先生は、1年目でギャップを感じることはあたりまえのことで、消極的になってしまう悩みはどうしようもできない。養成校時代に発言する力、消極的にならない手段を、先生方に教えてもらいたい。とお話してくださいました。

時間のゆとりのある学生時代であるからこそ、保育を深く追求することができますが、実際に現場に出れば、考慮しなければいけないことが様々あったり、実習やボランティアとは違って、責任をもって仕事をしたりしなければならないが、余裕のない状況であるとしても、いかにギャップと立ち向かっていくかが大切なのではないかと考えることができました。

最後に、福岡県福岡市の中村学園大学からお越し下さった、那須信樹先生から、本セミナーのご講評をいただきました。その中で那須先生は、私達学生に4つのメッセージをくださいました。

?できない理由をかんがえるより、今何ができるかを考える習慣を身に着けること
?憧れの存在を持つこと
?面倒くさいことを避けない
やってきたからこそ、語りあい、ひきだされ、確かな学びとなっていく
?学びを伝承していくこと

那須先生は、学生が持っているたくさんの学びを、どんどん現場に持ち込んでいってほしいとおっしゃっていました。そして、現場で学んだことを大学に持ち帰り、先輩後輩同士でも学び合い、学びを伝承していってほしいと、学生へメッセージをくださいました。学び、知識をつけ、事実に触れることで子どもを知り、子どもに向き合う姿勢を作ることができるため、学生時代にその学ぶ経験を大切にしていくべきであると、那須先生からお話しをしていただきました。

TFU保育士?幼稚園課程では、先生方が様々な学びの機会を与えてくださいます。そのような恵まれた学びの環境の中で、私達学生はその機会を確実に自分のものにし、積極的に今しかできない経験をしながら、保育を学び続けていくべきなのではないでしょうか。
 
未来社会を担う子どもたちを育てるということは、未来をつくるということです。未来を作る保育者の仕事に尊さ、誇りを感じながら、これからも日々保育の勉強に、主体的に取り組んでいきたいとあらためて強く感じることができたセミナーでした。

記事担当者:菊池海里