2018/07/14 保育士?幼稚園課程

TFU保育キャリアデザインセミナー2018 in Summer?第1部?

7月14日の3?5限の時間帯で『TFU保育キャリアデザインセミナー2018 in Summer』が大教室にて行われました。「学生と保育者の学びをつなぐ」をテーマとし、基調講演?シンポジウムに参加者同士の対話の時間をも盛り込み、とても学びの濃いセミナーとなりました。
まずは、第1部の内容についてご紹介していきたいと思います!

第1部では、「保育者という人生」と題して、社会福祉法人銀杏会、バンビの森保育園園長の壹岐美津子先生から基調講演を行っていただきました。学生からの質問にもご回答いただきながら、先生ご自身の保育者人生について深くたくさん語っていただきました。
 
最初の学生代表者からの質問内容の柱は、①これまでの保育者人生 ②壹岐先生の保育観、保育に対する想い ③学生へのアドバイス の3項目です。

①これまでの保育者人生
まず、最初に「なぜ保育士養成校に進学しようと思ったのか」という質問が出されましたが、この質問に対して壹岐先生は、保育者を目指そうと思ったきっかけと現在に至るまでの経緯を交えながらお話してくださいました。壹岐先生は、ご自身が学生時代に行っていた教会でのボランティア活動から、誰かのために行う活動を通して誰かの役に立ちたいという想いが培われたことがきっかけで、福祉施設に勤めることを決めたとのことでした。現在の職に就く前は、病院の施設で、病気の子どもたちと関わる仕事をしていたり、認可外保育所に務めていたりと、様々な施設を経験してきたそうですが、どの施設にいる子どもたちも、皆一生懸命で、子どもの姿はどこに行っても一緒だということを感じたそうです。病院では目の前で子どもが亡くなることもあり、責任を重く感じる時があり、辛く苦しいこともあったそうですが、どんな時でも職場の仲間と様々な話をしながら、辛い経験も乗り越えることができたとお話してくださいました。

②壹岐先生の保育観
続いて、「保育職に就いてから、今までどのような学びの機会があったのか」という質問が出されました。これに対して、壹岐先生から、保育者人生で大きく影響された、2つの学びの出会いについてお話しがありました。

まず1つ目は、【親業】です。親業とは、人間関係をよくするためのコミュニケーション術の一種です。保育職に就き、子どもの保護者と会話をする機会が増えてきた中、保護者の話に共感し、保護者の話を聞くだけではなく、自分の想いを伝えることができる要素を親業は持っています。親業により得られた学びが、確実に実践の中で結びついていったそうです。現在も親業のインストラクターとして、保育所の職員にも親業について還元しているそうです。

次に「見守る保育」との出会いについてお話してくださいました。壹岐先生は認可外保育をこれまで多く経験していたため、異年齢で保育をし、職員全員で全員の子どもたちを見守るという保育が、壹岐先生にとっては当たり前の事でした。しかし、規模が大きくなると子どもたちの姿を十分に見守ることができないのではないか、という壁にぶつかってしまった際、当時見守る保育を提唱していたS保育園の園長先生の講演を聞き、見守る保育の方法について学び、保育者同士が連携しやすいような環境構成や建物作りなど、保育環境を変化させていったと、今の見守る保育になるまでの経緯についてお話しくださいました。壹岐先生は、保育者が主導となるのではなく、子どもたちが子どもたち同士で学び合い、自らの力で育つことができるようにする力を澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】視しています。見守る保育は、保護者や職員と信頼関係を築き、見守る保育についての理解を共有しながら、現在まで深められてきたそうです。

また、壹岐先生は、日本の保育だけでなく、世界の保育がどのようになっているかに視点を当てて、保育を学んでいくことが大切だとお話して下さいました。先生自身が大切になさっている、大人が関わりすぎず、子どもたちの力を信じて見守りながら保育を行うことについて、園見学に来る学生から見学した保育の中で気づいたことについて聞くことで、さらに、見守る保育の大切さを再確認できるとおっしゃっていました。

③学生へのアドバイス
壹岐先生から、学生に向けて、保育だけに関わらず、いろんな人に出会ったり、いろんな本とであったり、学生の時間のある時に保育以外のこともたくさん経験してほしいと、お話して下さいました。一見、保育に関係のない分野だとしても、将来保育者になったとき、心に残っている経験はどんなことでも保育につながります。

壹岐先生の感じる、保育の現在の課題についてと、養成校に求めることについても、お話をいただきました。年々社会や地域の実態が変わっているのに、なぜ保育の中身は変わらないのか、というところに、壹岐先生は課題を感じているそうです。保護者が家庭でできること、保育者が保育として子どもたちのためにできることは異なります。「その中で、プロとして保育環境を作っていくことが私たちの責任だと思っています。」と壹岐先生はおっしゃっていました。私たちができることとして、職員と話し合いながら、勉強しながら、より良い保育を追求していくことが今後さらに求められてくると、お話いただきました。
 
基調講演の後は、学生がゼミのグループごとに対話を行い、壹岐先生への質問内容を考え、フロアの学生と壹岐先生への質疑応答が行われました。質疑応答の時間に挙げられた、いくつかの質問とその回答について、ご紹介します。

<4年生 利根川ゼミ>
Q.壹岐先生が海外の保育を学んだ中で、印象に残っている学びと、壹岐先生に大きく影響を与えたことを教えてください。

A.いくつかの園を見てきた中で、ドイツの園では、大人になっていく過程を考慮し、どのような大人になってほしいかを考えながら、様々な経験を子どもたちに与えている保育を行っていました。例えば、園庭には砂利道を作ったり、わざと蜂を園庭に解放したりと、一見危険に思われるが、子どもたちが社会に出て自分の身に起こる危険にしっかり対応できるようにしていくためにという願いを込めて環境構成をしていました。「ケガをしないように保育をしている方がおかしい」というドイツの園の保育観には衝撃を受けました。

<3年生 和田ゼミ>
Q.見守る保育では、どういった判断基準で大人が子どもの活動や子ども同士のトラブルなどに介入しているのですか。

A.保育中は、一人ひとりの子どもたちをよく理解したうえで、子どもたちと関わっています。子どもたちには力があり、保育者が一人ひとり、この子どもはどこまで何ができるかをしっかり把握することで、介入の有無を判断することができます。見守る保育を行う上で、子どもたちの育ちや発達をよく理解することは大変澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なことなので、職員同士で話し合いながら、子ども理解に努めています。

<4年 青木ゼミ>
Q.非認知能力を育てるために工夫していることは何ですか?

A.自分が持っている情報をどのように様々な事象の中で使っていくかが人間に必要な資質能力として求められている中、そのような力を幼児期に伸ばしていくために、大人の考えを子どもたちに伝えすぎないようにすることや、子どもの言動をどんな時でも責めないようにすることが大切だと考えています。子どもたちが自分で考えることの楽しさを感じることができるように、保育者一人ひとりが子どもたちの人的環境として関わり、子どもたちの話しかけに対して、子どもたちが考えを深められるような反応をすることが大切だと思います。

第1部では、壹岐先生の保育者人生に迫り、学生から問いかけられた質問に対して、より深い部分まで、壹岐先生にお話していただきました。なかなか聞くことができない貴重なお話でしたね。
壹岐美津子先生、本当にありがとうございました。
 
「TFU保育キャリアデザインセミナー2018 in Summer」第2部については、下記のリンクでお伝えしていますので、ぜひご覧ください。

記事担当者:菊池海里