With TOP > VOL.69 JULY 2010 > 

VOL.69 JULY 2010

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【9月科目修了試験のご案内】

【秋期I?IIスクーリングのご案内】

【お知らせ】

【学習サポート】

[教員MESSAGE] 児童?家庭福祉論
子ども手当?児童扶養手当の最近の動向

兼任講師 千葉喜久也

1.最近の子ども手当の動向について

 平成21(2009)年の総選挙で民主党は,国民の大多数の支持を得て政権与党となった。この選挙で民主党が掲げたマニフェストの一つが「子ども手当」の新設であった。そして平成21年12月25日に平成22年度予算案が閣議で決定した。今回新設される子ども手当ての内容は,これまでの「児童手当」の支給対象や支給額が不十分であるとして,親の所得制限を撤廃し,中学校卒業まで子ども一人当たり月額2万6千円(平成22年度は1万3千円)を支給するという内容である。支給費用も全額国庫負担とし,地方自治体に新たな負担を求めない制度であるとした。しかし,平成22年度については,国の財源不足から現行の児童手当を形式的に存続させ子ども手当ての一部とし,児童手当に入っている地方負担約6千100億円(22年度予算案)と企業負担約1千450億円(22年度予算案)を残すことを決めた。これにより,子ども手当法の施行に伴い廃止予定だった現行の児童手当法は存続となった。これにより小学校卒業までの子どもに支給される手当は概念上,一部が児童手当,残りが子ども手当てということになる。公務員については,児童手当と同様,居住地の自治体ではなく,所属する官庁から支給される。なお,この子ども手当ては平成22年6月から実施されている。
 こうした新たな子ども手当ての新設に対して,財政規律を重視する立場の人たちからは,バラマキとの批判を受けている。また制度の充実を求める人たちからは,最もお金がかかる高校生が対象になっていないとの批判も出ている。しかし,今回の子ども手当ての新設は「社会全体で子どもを育てる」とする姿勢の反映であって,「子どもは私的財産ではなく,公的財産として,社会が子育て支援を行う」とする「子育ての社会化」への理念の転換である。
 今回の予算案の作成過程の中で,所得制限を設けることも検討されたが,欧州各国の子ども手当ての制度を見ても所得制限は見当たらない。「手当てはすべての子どもに支給し,所得の高い人からは税金を取る」というのが基本的な考え方である。今回,わが国の手当ての支給に所得制限が設けられなかったことは,「社会全体で子どもを育てる」とする基本理念の現れであり,仮に所得制限が設けられれば,低所得者支援に変質してしまうことになる。

2.最近の児童扶養手当の動向について

 児童扶養手当は,これまで母子家庭を支えるための経済的支援として位置付けられてきた。夫婦が離婚しても「父親の経済的基盤は変われない」とする認識がされてきたため,父子家庭に対する経済的支援は行われてこなかった。しかし実態は,離婚したことで退職や転職を繰り返すケースが多く存在している。仕事に就いているといっても子どもを抱えることで,これまで通りに働き続けることは至難なことである。仮に離婚し未就学の子どもを養育することになったら,子どもを保育所へ入所させない限り職場には出勤できなくなる。そして,勤務時間も子どもに合わせることになり,もちろん残業や出張などは無理となる。現在,職場の多くが変則勤務時間を実施し,土曜?日曜日勤務が一般化している中で,子どもを抱えながら働き続けていくことは,職場の理解と周りの支援がない限り非常に厳しい環境にある。このため母子家庭よりも深刻な問題を抱えている父子家庭が存在している。
 こうした状況に対して,栃木県佐野市などでは母子家庭同様に経済的支援を独自に行ってきた。そして,こうした取り組みを国が実施するよう求める声が高まっていた。このため政府は,平成22年度予算案に平成22年8月から父子家庭に対しても母子家庭同様に手当ての支給が盛り込まれた。新たに支給対象となる父子家庭は,約10万世帯(約50億円)と見込まれている。

1つ前のページへこのページの先頭へ