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VOL.43 MAY 2007

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[福祉心理学科] 福祉心理学科への期待

教授 宇田川一夫

◆1 はじめに

 心理学を専攻していると時々人から「人のこころがわかりますか?」「なんだか分析されているようで怖くなります」等のようなことをしばしば言われることがあります。一般の人々は,このような「万能化した心理学のイメージ」を持っている傾向にあると思います。皆さんも福祉心理学科を専攻した動機に多かれ少なかれこのようなイメージをもちながら,少しでも「人間心理」の理解が深まったらと思い専攻しているのではないかと推察しております。
 さて,心理学の勉強を始めていかがでしょうか。「人のこころがわかるようになった」でしょうか。私は,上記の質問に対しては,「人のこころがわかったなら,心理学の勉強などはしておりません」と答えております。人間の心理は,そんな単純でないことはすでに皆さんおわかりであろうと思います。人間の存在は,どのような学問を持ってしても「未知数の存在」だろうと思います。「わからない存在」であるが故に解明をしたいと思うのが,人のこころだと思います。その結果,科学が進歩し,人間存在がかなりの部分において解明されてきたことも確かです。心理学においても,心理学を勉強しない人より,心理学を勉強した人の方が心理を少しはわかると言えるでしょう。

◆2 科学と心理学

 心理学において「人のこころがわかる」というテーマは,心理学の根幹的テーマとなっております。
 福祉心理学を勉強している人はすでにお分かりのように,心理学の一般的イメージとかけ離れた内容を勉強していると戸惑っている人が多いのではないかと思います。心理学が「実証科学」であることをまだ十分に理解していない人にとっては。極端に言えば「人の心理が見えない心理学を勉強している」と思っている人もいるのではないかと思っております。
 不登校や人の悩みの一助になれば等のような臨床心理学に興味のある人にとっては,その思いはより一層強いのではないかと推察します。確かに臨床現場では,「実証科学」から離れたことを要求され,またときに効果的に働くこともあります。それでは,他の客観的心理学は,「あまり必要ではないのでは」という問いが生じてきます。皆さんは,その問いをどうお考えになりますか。
 しばしば主観性が要求される臨床心理学にとって,主観性を客観化する能力をつけていないとしたら,その主観性は,一般化される内容ではなく,個人的な体験に落ちる危険性を秘めています。したがいまして,主観性を使う臨床心理学にとっては,主観的体験を客観化する能力がより求められることになります。もしそれを怠ることになると「命綱を持たずに危険な未知の世界に入り込むこと」に等しくなります。それは,クライエントとカウンセラーが共に危険に巻き込まれることを意味しています。

◆3 レポート作成上の留意点

 客観化する能力は,どのように身につけたらよいのでしょうか。現実的?具体的な「レポートのまとめ方」を例に出します。
 レポートの内容は,一言で言えば幅があります。そこで「おや?」と思うことから述べてみます。
 レポートは,参考書等(インターネット検索した文献も含む)をそのまま「要約」するレポートがありますが,それはレポートと言うよりは,「要約文」と言った方が正確でしょう。要約して理解したことから,レポート課題を考え,書くことが「客観性の能力」が育つことであろうと思います。そのためには,「時間」と「努力」が求められます。
 また,レポート課題を十分理解しないレポートがあります。内容がよいこともありますが,レポート課題からズレております。なぜそのようなことが起こるかというと自分の「主観性」を先行させた結果によるものと思われます。教員が求めた課題(客観)に対応せず,自分の思い,考え(主観)を優先したためと思われます。たとえ,そのレポートがすばらしい内容であっても相互的対応性(主観性-客観性の対応)に欠けているレポートとなってしまいます。
 私のスクーリングを聞いた方はすでにご承知ですが,「意識」の特徴のひとつに「怠惰」(省エネルギー)がありますので,その特徴と仲良くするのではなく,適切につきあうことが客観性を身につける道と思います。

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