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VOL.34 MARCH 2006

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[関連施設紹介] 施設運営と介護費用《その5》

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

 前回は,介護報酬として新たに位置づけられてきた管理栄養士(栄養士)体制加算と栄養マネジメント加算について加算を報酬面からみてきました。今回は,施設報酬における経口維持加算,医師の指示せんに基づく療養食加算についてと居宅療養指導費について深めていきます。

◆経口維持加算

 前号では,昨年10月から始まった「経口移行加算について……」と掲載しましたが,この4月から経口維持加算として再編されました。その内訳は,これまでの(I)経口移行加算28単位/日と(II)経口維持加算5単位/日とされました。(I)では経口移行計画の作成,(II)では経口維持計画を作成することになります。
 実際の栄養ケア?マネジメントは,医学的管理のもとに医師を中心とした「多職種協働の体制」の下で行われます。つまり,入所者ごとに(1)スクリーニング〔要望?低栄養等の可能性の検討〕と(2)咀嚼?嚥下機能の評価〔心身機能評価〕を実施し,(3)機能回復や維持状態の進捗に着目した食形態などさまざまな配慮のもとに,(4)経口移行計画(経口維持計画)を作成します。計画に従い,(5)都度の咀嚼?嚥下管理〔実施再評価?モニタリング〕を行い,(6)摂取内容や摂取量,摂食状態などについて,(7)経口移行(経口維持)の進捗状況を随時ないし定期的に評価〔チームモニタリング〕し,必要に応じて見直します。もちろん,これらの過程を記録する必要があることはいうまでもありません。
 利用者またはその家族への説明に理解が得られ,文書で同意が交わされた日から加算報酬を請求することができます。
 「多職種協働の体制」が意味することは,栄養ケアの質を十分に担保することとリスクマネージメントをしっかりと行っておくということに他なりません。あらゆる可能性について了解をいただくことが必要となる「極めてデリケートな加算項目」という認識に立つ必要があります。入所者一人につき,一入所一度のみの算定で180日が限度となっていますが,経口移行加算については,180日を超えて,なお経口に移るまでの努力を引き続き行っている場合で,現に経口摂取が一部可能になっているという方については,引き続き算定可能とされます。つまり,医師の指示がなくなった時点で算定が終わることになります。

◆療養食加算

 2005年10月の介護保険報酬の改定では,これまでの基本食事サービス費が全廃されました。また,この4月からは特別食加算のうち経管栄養のための濃厚流動食を廃止し,これ以外の項目を療養食として改編されたものです。療養食は,医師の発行する食事せんに基づき提供された適切な栄養量および内容を有する糖尿病食,腎臓病食,肝臓病食,胃潰瘍食,貧血食,膵臓病食,高脂血症食,痛風食および特別な場合の検査食のことで,(23単位/日の療養食加算として)療養食が提供された場合に評価されます。もちろん澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】事項説明を通じて利用者又はその家族に対し,説明から理解が得られ,具体的な確認が文書承認を受けてケアプランにも組み込まれます。算定要件としては,

  1. 食事の提供が管理栄養士又は栄養士によって管理されること
  2. 入所者の年齢,心身の状況によって適切な栄養量および内容の食事の提供が行われること
  3. 別の告示で定める定員利用?人員基準に適合していること

が求められます。また,入所だけではなく短期入所にも適用されます。

◆居宅療養指導

 介護保険では,居宅生活している「通院が困難な利用者」に対して,病院?診療所等の指定事業所から「医師等の指示」のもとに,その居宅を訪問する事業として居宅療養指導があります。その目的は,利用者の「療養生活の質の向上を図る」こととされ,「心身の状況,置かれている環境等を把握し,それらを踏まえて療養上の管理および指導」が行われるもので,居宅介護支援事業所の介護支援専門員の毎月の給付管理(ケアプラン)に組み込まれて実施されます。「医師等の指示」のもとに訪問指導できる資格者としては,医師,薬剤師,歯科衛生士,管理栄養士と規定されています。
 例えば,管理栄養士による居宅療養管理指導を受けた場合(各職により報酬は異なります)では,1人/月2回を上限として1回あたり530単位の介護報酬とされています。仮に50名の方にサービス提供された場合を想定すると1単位当たり10円×530単位×50人×24回/年=3,180,000円という介護報酬が発生します。

◆「食」をめぐる施設サービス給付と居宅サービス給付

 前号で介護保険施設の場合,管理栄養士による栄養マネジメント加算を1単位当たり10円×12単位×50人×365日=2,190,000円として紹介しましたが,上述の居宅療養指導と単純比較すると,月額で99万円の差が生じています。しかし,施設給付には,体制加算(管理栄養士の場合12単位ですので同額)もあるので非常に手厚い給付であることがおわかりいただけるでしょう。
 施設での「多職種協働の体制」を居宅サービスで実施しようとすると居宅療養指導では,報酬請求上通りとすれば訪問活動は,1カ月に2回が上限,ケアのプランニングにあたるケアマネジャー自体も1カ月に1回以上の訪問,3カ月に1度以上のモニタリングというかかわり方となります。
 ケアマネジャーの組み立てる居宅療養指導には,施設内連携のそれ以上にマネジメントパワーを必要とすることは,必須です。食事の内容,食事摂取量,水分摂取,排泄管理,バイタルチェックなど施設ケアでいう“日々の観察”,“情報共有”などは,ケアマネジャーが掌握すべきケア情報であり,これらを知らずして関係する他職種への働きかけはできないものと考えられます。また,施設ケアが他職種協働のモデル展開をしていると考えるならば,居宅介護支援は,サービスマネージだけではなく,情報共有や情報収集のマネジメントへの傾注が澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な鍵となり,費用対効果の明暗を決定づけることになります。
 「食」に対する支援は,居宅での調理を訪問介護で行う家事援助,通所サービスを利用しての給食サービスなどや福祉サービスとしての配食サービスなども含めると複数から選択することができます。
 どのようなサービスも採算性や費用対効果を無視して事業経営することはできませんので,ことごとくソーシャルワークの視座をふまえた事業推進をする必要がありそうです。フェルト(主観的)ニーズやプロフェッショナル(専門家としての)ニーズからリアル(真の)ニーズが見極められなければなりません。ニーズ分析がないがゆえに,予防を視野に入れないサービス過剰の反射的なケアが行われたり,パッケージとして一律サービス化された限定的なサービス提供になったりしているのではないでしょうか。介護保険事業所は,公的財源の給付を受けるのですから,福祉経営を予期こそすれ,単なる利潤の追求を許すものではないことを十分再考する必要があるかもしれません。

 次回以降で,栄養ケア?マネジメントの手順について昨年10月からの実践についてご紹介します。
 平成18年4月の介護保険制度の再編と方向,報酬改定についての概要もお伝えする予定です。

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