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VOL.29 AUGUST 2005

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福祉を変える経営 日経BP社

 「宅急便」をつくった小倉昌男氏が,本年6月30日亡くなられました。小倉氏は,ヤマト運輸の会長を退いた後,障害(がい)者の通う多くの作業所で障害者の月給が1万円に満たないことに驚き,作業所で経済的自立のために十分な給料を支払うビジネスができないものか考えます。そして,焼き立てパン販売のスワンベーカリー(東京?銀座や札幌にあり)という会社をつくり,障害者を雇用します(十条店で平均月給5?10万円とのこと)。本書は,その実例をもとにして小倉氏の障害者福祉?就労についての考え方がわかりやすくまとめられています。
 本書の主張はある意味で単純です。
 (1) 作業所?授産施設では,バザーで売れるものをつくったり下請け作業が行われたりしているが,平均月給が1万円というのはおかしいのではないか。
 (2) お金儲けは悪いことではないのだから,「自分が消費者になったら,どういうモノやサービスにお金を出すか」を考えて売り上げをあげ,障害者に少しでも高い給料を払える作業所?施設運営をすべきではないか。

 これまで私が読んで本では,養護学校を卒業したあと行き場のなかった障害者に対し,親の会が中心になって立ちあげた共同作業所は,とてもすばらしい存在のように描かれていました(たとえば『どんぐりの家』)。また,『With』13号で紹介した『障害学の主張』のように,働いてお金を稼がなくても人間として認められるような価値観も大切でしょう。「べてるの家」の取り組みのような癒し?マイペースさも必要だと思います。しかし,本書のように売れるサービスを提供するというビジネスの視点を作業所運営に持ち込むことも必要ではないか,と思いました。障害者の親の引退後のことを考えても,望めば健常者と同じ人生を送ることができるノーマライゼーションの考え方からしても,障害者自身が働いて稼ぐ機会が多くなることは大切です。
 本書の巻末には,実績をあげている作業所のひとつとして,宮城県の「はらから福祉会」も紹介されています。「はらからのパン」はみやぎ生協をはじめ仙台空港のANA売店でも売っていたりするので,試しにどうぞ。

(Pon)

■小倉昌男著 『福祉を変える経営—障害者の月給1万円からの脱出』 日経BP社,2003年 定価1,365円

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