2021/12/16 保育士?幼稚園課程

保育実習指導Ⅱ

12月16日(木)6限の保育実習指導Ⅱでは、「子ども同士のトラブルと保育者の援助について考える」と題して、山崎敦子先生より講義をして頂きました。

今回は、ワークシートを用いながらの映像演習でした。
まず初めに、今回のテーマであるトラブルに関して山崎先生からお話がありました。 
山崎先生は、「トラブルを経験することは、子どもが将来様々な人と関わりながら生きていくために大切な要素です。子どもはトラブルを通して、自己主張や自己抑制の方法など様々なことを身につけていきます。園ではトラブルが日常茶飯事ですが、園としてはトラブルを通して学ぶこともあるため、トラブルの場面を成長の一つとしてプラスに評価しています」
とお話しいただきました。

学生は子ども同士のトラブルの際にまずは止めなくてはと考えてしまうことが多いかと思います。しかし、保育者にはそのトラブルで子どもにどのような育ちがあるのかなど、先を見通した見方をしていくことが大切であると学びました。

次にワークシートを用いながらの演習が行われました。「実習中に遭遇したトラブル」について個人ワークに自分の経験を記入した後、周りの人と共有する時間が設けられました。その後、山崎先生に指名された学生が全体に共有しました。以下がその内容です。

 
<学生の発表>
①学生Aさん
?対象児:1歳児 
?トラブル原因:他の子どもが使っていたおもちゃを何も言わずに取ってしまった
?実習生の対応:
無理矢理取り上げていたので、実習生が「貸してって言ってみよう」と話すと、先に使っていた子どもに「貸して」と伝えることが出来た。しかし「だめ」と断られてしまい、実習生もどうすれば良いのか困ってしまった。
?保育者の対応:
困っている実習生の元に来て、子どもに新しい遊びを提案しながらその遊びを楽しそうに行う姿を見せた。すると、興味を持ったのか取り合いをやめて保育者の提案した遊びに入っていった。
→保育者は、気持ちが切り替えられるように働きかけを工夫していた

②学生Bさん
?対象児:5歳児 
?トラブルの原因:遊びへの加入
→実習生が複数の子どもと一緒におにごっこをしていると、Sくんも実習生とおにごっこがしたいと声をかけてくれた。そこで、実習生はSくんも一緒におにごっこができないか子どもたちに提案をしたところ、「Sくん走るの遅いから入らないで」「Sくんなんでいるの?」とSくんが一緒におにごっこをすることを拒む姿が見られた。
?実習生の対応
→「もし同じようなことを言われたらどう思うかな?」「Aくん悲しそうな顔しているよね」などと相手の気持ちに気付くような言葉がけを行った。すると全員が納得し、解決できたようで、Sくんを含めて全員で楽しくおにごっこで遊ぶことが出来た。

学生の発表だけでもトラブルといっても様々な原因があることが分かります。年齢が低いと物の取り合いが多かったり、高い年齢になってくると遊びのルールを守らなかったことによるトラブルがあったりと年齢による違いもあり、高い年齢ほどトラブルも複雑になっていきます。

次に映像演習が行われました。以下に内容を示します。
◎映像演習「トラブルの場面からー対応方法を考えるー」
提供先:東北ブロック研究委員会特別研究プロジェクト様

「映像演習の流れ」
1.ワークシートに記入しながら、映像を見る
2.ワークシートを基に、近くの人と話し合う
3.山崎先生の解説

①1歳児映像 
?場面:自由遊び後の片付け
?トラブルの原因:自分で片づけたかったのに他の子どもが先に片付けてしまった
?保育者の対応:
片づけたものを再度出して子どもが自分で片づけたと納得できるように関わっていた。その後片づけることが出来た姿を褒めて認めている。それでも納得できず、気持ちに切り替えが難しい様子の子どもに、別のところに誘って気持ちの切り替えを促していた。

<山崎先生の解説>
1歳児は自分で、一人で片付けたい思いが強いので、自分のやることを手伝って欲しくないという気持ちがある。

5歳児映像
?場面:一斉活動(フォークダンス)
?トラブルの原因:
踊りの最中、Aくんが手を伸ばす度に(無意識で悪気はないが)Bくんの肩に手が当たっていた。始めは我慢していたBくんだったが、我慢できずA君を叩いてしまった。そこから「やった」「やってない」と言い争いになり、活動が中断してしまった。

この映像を見て、自分が保育者ならどう対応するか考える時間が設けられました。その山崎先生に指名された学生が発表しました。以下に示します。
<学生の意見>
?学生①
トラブルについてクラス全体で話し合うのが良いと思う。まずはAくんとBくんどちらの意見も聞き、保育者がまとめて全体に「みんなどう思う?」と問いかけて話し合いを進めると良いと思う。
?学生②
まずは両者とも嫌な思いをしたので、保育者はその思いに寄り添うことが大切であると思う。その後それぞれに何が嫌だったのか聞いて解決していくのが良いと思う。

学生の意見を踏まえ、このトラブルを実際に解決した担任保育士がどのようにかかわったのか、以下に示します。

<担任保育士の対応>
①トラブルを起こした2人には「今が何の時間なのか」気付かせる言葉がけをし、他の子どもには「楽しかったのに終わってしまったよね」と残念な気持ちに共感していた
②他の子どもから「○○が叩いた」という声が上がり、保育者は「これはみんなの問題?二人の問題?」と子どもに聞いていた。
→「仲間だからみんなの問題」「二人が喧嘩したから二人の問題」という意見が出る
③そこで保育者はこの後どうするか選択肢を挙げながら聞いていた。
(選択肢:「みんなで話すか」「二人(当事者)で話すか」、「トラブルをなかったことにしてみんなでフォークダンスするか」)
→全体で「二人で話す」のが良いという意見にまとまる。当事者の二人も同意する。
④二人とフリーの先生の三人で廊下でお話し合いをする。

<山崎先生の解説>
?今回は担任保育士がトラブルを仲介していたが、この園だとフリーの先生が2人もいるのでフリーの先生が対応するのも良かったのではないか。
?担任の先生は、全体の動きを止めずに進めることを優先すべきである。フリーの先生は、活動の流れを止めなくていいようにサポートすることが大切ではないか。フリーの先生は楽しく一緒に遊びつつ、常にアンテナを張ってトラブルがあった場合などタイミングよく仲介することが求められると思う。5歳児だからと子ども達だけで解決するのはまだ難しいときもあるため、場面によって保育者が介入することも必要である。

最後に、山崎先生から「トラブルの対応にはこれが正解というものはない。色々な対応方法を模索していくことで経験値が上がり、引き出しも増えてくる。ぜひトラブルをポジティブに捉えて、積極的に関わってほしい。」とお話しいただきました。
保育者がトラブルをどう受け止めて評価するか、どうやって解決を促すのかで、子どもの学びも大きく変わるのだと感じました。山崎先生のお話にもあるように、対応策を多く持っておくことで、映像に出てくる保育者のように、その場に合った適切な対応を瞬時に行うことができるのだと大きな学びになったと思います。今回学んだことを忘れず、思い出しながらこれからの勉強や実習に臨みましょう!


記事担当:大槻優希子、森麻尋、島貫莉花子