2021/11/18 保育士?幼稚園課程

保育実習指導Ⅰ

11月18日(木)5限の保育実習指導Ⅰは、「保育キャリア形成 幼な児から学ぶ~保育者という仕事~」と題しまして、学校法人啓朋学園緑ヶ丘第二幼稚園園長である三塚薫先生よりお話をしていただきました。

話の流れはおおよそ以下のようになっております。
1)幼稚園とはどのような場所?
2)教師(保育者)とは? 
3)環境による教育
4)子どもにとって遊びとは?
5)質疑応答

まず始めに、三塚先生のこれまでの経歴を含めた簡単な自己紹介をしていただきました。その紹介の中で興味深いと感じたことは、コロナ禍の状況についてのお話です。緑ヶ丘第二幼稚園は、今年の約2カ月間コロナウイルス感染の拡大により休園を余儀なくされました。落ち着かない状況で暗い気持ちが続く中、三塚先生はじめ教員の皆さんは、「次子どもたちに会ったら何をしようか?何ができるのだろうか?」と何度も話し合いを重ねてきたとのお話でした。三塚先生は、今後コロナウイルスとどのように共存していこうかと考えた日々を過ごし、非認知能力(※)が常に試されているような感覚を感じていたそうです。
(※)非認知能力???テストなどで数値化することができない内面的なスキルのこと。コミュニケーション力、主体性、自己肯定感などがその例。
 
1)幼稚園とはどのような場所?
◎幼児の立場から見ると???
「楽しい!」「嬉しい!」「悲しい…」「痛い…」「何だろう?」「知りたい!」など
◎教師の立場から見ると???
社会集団の中で生活体験をする、個と集団の育ちを見る、興味?関心を広げる、など
◎親の立場から見ると???
子どもの教育の権利が保障される、家庭では味わえない経験ができる、安全?安心に過ごせる、など

そして、子どもにとっては社会人として自立していくための学校教育の第一歩となっています。保育者は、幼稚園という場所が「心情?意欲?態度」(幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力の基礎となるもの)を育む場所であることを認識して保育を展開していかなければなりません。

2)教師(保育者)とは?
“子どもの何を育てたいと思うか?何が育とうとしているのか?”、子どもの姿、言動、遊びの経過の中で発達段階を捉えることが「教師として関わる」ことであると教わりました。そして、それら子どもの姿の裏側にある思いや意図に目を向け、感じ取ることで子どもに“寄り添う”保育ができるのだとお話していただきました。

◎教師として身に付けておきたいもの
?対人関係を調整する能力
→保育者は園の雰囲気を創る大切な存在。コミュニケーション能力が問われるため、「聴く力」「説明する力」「質問する力」「協調性」の4つの能力は身に付けておきたい。
?自分の感情をコントロールする能力
→子どもの姿を落ち着いて捉えるためにも自分の感情は自分で管理できるように。
?直面する問題を解決する能力
→職員同士の連携?協力は不可欠!特に「報告?連絡?相談」は保育者の基礎となるとても大切なこと。自分を守るためにも怠らないようにしましょう。

この項目の最後に、三塚先生は、「私は子どもたちに保育者、あるいは園長にしてもらった。子どもたちから学び?育てられた経験がたくさんある」とおっしゃっていました。その経験の一つとなったエピソードを紹介します。

<エピソード>
?やなぎ組(重度の発達障害を持つ子どもKくんがいたクラス)
ある日、Kくんはトイレで用を足した後に、排泄物を手で触ってしまい、その手で壁を汚してしまった。その当時は担任が1人でクラスを見ていたため、トイレの掃除をしている間に子どもたちにKくんを見ていて欲しいとお願いをする。すると、子どもたちは「分かった!」と返事をし、30人ほどで円を作り、Kくんを囲むことでKくんが教室から出ないように見ていてくれた。その時、子どもたちは一人ずつできる手遊びをしながらKくんの興味を惹きつけてくれていた。この姿を見たときに、「あ、子どもってすごいな」と子どもの持つ力に心から感心。とても助けられた経験となった。

3)環境による教育
ここでは、実際に三塚先生が撮影したビデオを見ました。内容は、三歳児クラスの絵の具遊びで、テーブルに敷かれた段ボールに筆を使って自由に色を付けている様子でした。子どもたちが赤や青、黄色など様々な色を使っており、隣同士の子どもで色が混じり違う色ができる場面が何度かありました。この時保育者が、「あれ?茶色の絵具は出していないのに茶色が作られているね」「なんでだろうね?」と言葉をかけ、言語化する働きかけが見られました。
この場面から、保育者は教えるのではなく、子どもが環境に働きかける、やってみることで感じ取れる環境を用意することが必要な役割であると学びました。

4)子どもにとって遊びとは?
子どもにとって遊びとは、普段の生活の体現であり、子ども同士のやりとりがコミュニケーション能力を高め、語彙数の増加に繋がる大切な経験です。また、遊びの中ではトラブルは避けられないものです。ですが、トラブルをマイナスに捉えるのではなく、「トラブル=以前より互いに理解し合う体験の場」と捉え、それぞれの思いを受け止めた上で、原因を一緒に考えたり、対処法を一緒に模索したりすることが大切であるとお話していただきました。
 
5)質疑応答
講義の時間に余裕があったため、学生からの質問に三塚先生が回答する時間が設けられました。ここでは一部抜粋して紹介します。

Q.子どもの心情を読み取る力を身に付けるために、今から私たちにできることや、やっておくと良いことなど何かありますか?
A.相手の立場になって物事を考えることはとても大切なことです。相手の立場になって考えることが難しい場合や状況にある時には、その子どもの思いに寄り添い、「私のところを拠り所にして頼ってもいいよ」という思いで関わりを続けたという経験もあります。

Q.非認知能力についてお話があったと思うのですが、保育の場面で非認知能力とは具体的にどういったものなのでしょうか?
A.非認知能力とは、人とうまく関わる、自分を表現することなどを指します。遊ぶのは楽しいな、という心が揺さぶられる経験も非認知能力です。特に遊びの中で感じられることが保育では多いです。これからさらに保育の学習を進めていく中で非認知能力はどのようなものなのか、このようなものなのではないかと感じる場面が出てくるのではないでしょうか。

最後に、三塚先生は相手の立場(主に子どもたち)に立って保育を進めていくことの大切さを講義の中で何度も口にされていると私は感じました。また、相手の立場になって考えることは、私たち学生でも常に考え続けることで、保育の場面に生かされるとお話していました。
この講義を機会に、自分が相手の立場にたって物事を考えられているかどうか、再確認してみるのもいいですね。そして、私たちが何気なく過ごしている日常の意識が保育に繋がっていることはこのほかにもきっとたくさんあるのだと思います。
今回の講義は、保育者として社会に出る前に、自分自身の物事を捉える視点や意識について考えるとてもいい機会となったのではないでしょうか。

記事担当:森麻尋、佐々木彩