2020/02/01 保育士?幼稚園課程

2年生 保育キャリア形成Ⅷ

2月1日、2限のキャリア形成Ⅷは、社会福祉法人銀杏の会バンビの森保育園園長の壹岐美津子先生に講義していただきました。今回の講義の内容は、壹岐先生が園長先生になるまでのお話と、学生たちからの質問に壹岐先生にお答えしていただきました。

始めに、壹岐先生が園長先生になるまでの道のりをお話していただきました。壹岐先生は、学生時代に障がいのある子ども達と関わるボランティアを行っていたそうです。そのような経験から就職も障がいのある子どもたちと関わるところを希望していました。

そんなある日、ある小児科部長の方との出会いがあり、病院の保育士として働くことが決まりました。病院の保育士ということで、特殊な環境の中での過酷な現実に「なぜここに就職してしまったのか」と悩んだこともあったそうです。そのような状況下でも、壹岐先生は子どもたちが病院での生活で、ストレスがたまらないように、子どもたちとの信頼関係を築いてけるよう努めていたといいます。

病院の保育士をご退職なされた後は、24時間営業の保育園に再就職されました。「一般の保育園じゃないところ」「昼でも夜でも関係なく一生懸命仕事をしている、子どもを思っている」という点に惹かれたそうです。

そこで仕事を続ける中で、ある保育園の経営者の方と出会いました。壹岐先生の事業経験の多さから、その園の経営者の方に「事務の仕事をやらないか」と声をかけられたそうで、「事務のお仕事」と聞いて、不安を抱きながらも何事もチャレンジ精神をお持ちだった壹岐先生は、そのお仕事に挑戦したのです。

それからしばらくして、その園に廃園の危機が訪れます。しかし、保護者の方から「どうしても無くさないでほしい」などの熱いお声をいただき、壹岐先生が後継者としてその園を引き継ぐことになりました。こうして、壹岐先生は「バンビの森保育園」と名前を改名して運営を始めたのです。

次に、事前に学生から挙げられた10個の質問にお答えしていただきました。

Q1 園長先生をやっていく上で大変なことや、やりがいは何ですか?また大変な時はどうやって乗り越えましたか?
A1 「子ども達や保護者の方から『バンビがあって良かった』『バンビ大好き』と言ってもらえた時にやりがいを感じます。また、大変だと思ったことはあまりありません。大変かもしれないと思った時にたくさんの方にお話をしていたからだと思います。大変な時は周りの方たちに相談していました。そのどこかに解決のヒントがあったのかもしれません。皆からいいアイディアをいただいていました」

Q2 壹岐先生は質の良い保育についてどう考えていますか?
A2 「まず保育の質とは何かというところからですよね。保育の質にはいろいろあると思います。ですから私は、職員同士が話をできる環境、困ったときに困っているといえる環境が保てているかどうかだと思います。また、保護者の方と対話ができるかどうかだと思います」

Q3 園長先生として保育の質の向上のために取り組まれていることは何ですか?
A3 「『見守る保育』をしています。周りから見ると何もしないで見ているだけと思われるかもしれません。『見守る保育』は発達に合わせた支援を行っているのです。危ないと思ったら介入します。必要な時に口を出して、手を差し伸べるのです。これは個人個人をみる保育です。また、保育園の理念にもあるように相手も自分も大切にするということを大切にしています。そして、園をオープンにしています。周りの人から園を見ていただいたときに、その方の気づきや発見を聞いて園自体の気づきにさせていただいています」

Q4 園で特に力を入れていることや大切にしていることは何ですか?

A4 「園をオープンにして、たくさんの方に見てもらうことや、考えを園全体で共有することですね」

Q5 園長先生ならではの園の工夫や配慮は何かありますか?
A5 「職員同士の信頼関係を大事に続けていけるように普段からたくさん会話をします。保育に直接関係ない話もします。そして、自分自身もオープンにしていきます。自分から先に自分自身のことを話していくと相手も自然と話してくれるようになります。そうやって関連性ができています。明るい笑い声が聞こえる場面、楽しい雰囲気を大切にしています」

Q6 保護者の方が相談しやすいような環境構成は何かしていますか?
A6 「保護者が相談しやすい環境に先生たち同士の関係性も大事だと思います。加えて、保護者の方にもたくさんの事情があります。その事情に沿った対応ができるようにしています」

Q7 地域との関係づくりへの取り組みは何か行っていますか?
A7 「幸いにも『バンビの森保育園』は周りがたくさんの福祉施設に囲まれています。ですから、園の園庭を開放したりして交流を深めています。また、隣には小学校もあります。ですから、小学校の校長先生や施設の館長の方々と集まり、情報交換をして地域とのつながりを深めたりもしています。私自身も、今年から地域の子育てに力を入れたいと思っていて、支援センターに任せていた分、今後は積極的に関わっていきたいと思っています」

Q8 どんな保育者を含め、採用したいと考えていますか?
A8 「どんな人にも良いところはあるから、こういう人がいいというのは無いです。様々な方がいるけれど保育者に向いていないわけではないと思います。私は、『ここで仕事をしたい』と思ってくれればそれでいいです。やりたいと思ってくれていることが一番大事だと思います」

Q9 学生のうちにやっておいてほしいこと、学んでおいてほしいことはありますか?
A9 「学生のうちにできるバイトはとても良い経験だと思います。また、これから社会に出ていく上で必ず辛いことや苦手だなと思う人が出てくると思います。そんな時は、良いところを少しでも見ることができるようにしておけるといいかもしれません。良いところを少しでも見ることができるとなんだか乗り越えられそうな気がしてくると思います。大変だと思う時こそ良いところを見る、人は必ず良いところはありますから」

Q10 現在の保育現場の課題、将来の全貌を教えてください。
Q10 「まだまだ、教育が保育現場に落とし込まれていないと思われていることが課題だと思います。幼稚園は保育化しているけれど、保育園は幼稚園を受け入れていないと思われています。しかし、保育の中での遊びには教育がたくさん散りばめられています。これから、子どもの教育をどう考えていくかが大切ですね。また、将来的に保育園は子どものお世話をするのではなく、教育現場なんだと浸透していってくれたらいいなと思っています」

以上が10の質問でした。笑顔で普段の職員の方との会話をお話している姿をみていると、園内の子どもだけではなく、保護者の方や職員のことも心から愛している園長先生であると感じました。


これから2年生は新3年生になり、実習が始まります。そこで、実習についての質問を3つさせていただきました。


Q1 実習生には何を求めていますか?
A1 「実習生に求めているものはありません。実習生に対して『ああしてほしい。こうしてほしい』というのは求めませんが、日誌などの文章で一般に通用しないと思うことはちゃんと伝えていきます。実習で何かできるようになるというのではなくて、子ども達の可愛いな、素敵だな、面白いな、子どもって奥深いなっていう発見をできる実習にしてもらいたいです」

Q2 実習期間中に信頼関係を築くにはどうしたらいいですか?
A2 「先生が子どもたちを見ているんだよということを子どもたちに伝えることが大切ですね。関わる時間が短くても、その中でも関係性は育めると思います」

Q3 実習生の何を澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】視していますか?
A3 「私は、クラス全員をまとめるとかの澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】視はしていません。実習が終わって事務室に来て子どもの発見や、困ったことのやり取りができればいいですね」


最後に、その場で聞いていた3名の学生たちが、直接壹岐先生に質問をさせていただきました。

Q1 ボランティアの際に子どもから「どうして魔法が使えないの?」と言われて困りました。壹岐先生ならどうやって対応しますか?
A1 「私だったら『うーん。どうしてだろうね。』と聞いちゃうと思います。答えが無くても子ども達って意外と大丈夫なんですよ。わざと分からないフリをするんです。そこで、あえて教えずに子どもに考えさせることで、子どもの考える気持ちが育てるようにしてあげています」

Q2 5歳児の中の早生まれの子がくっついて離れてくれませんでした。担任の保育士の方からは、「離していいよ」と言われたのですが引き離すこともできませんでした。どうしたらよかったのでしょうか。
A2 「だからこそ、異年齢保育って大事なのかもしれませんね。早生まれの子がいるのなら、1つ下の子と一緒の方がよかったかもしれないという状況もあるけれど、その時の対応がその中でしかできない経験だったかもしれないですね」

Q3 ボランティアの時に自分はどう立ち回りしたらよいのでしょうか。
A3 「もし分からないことがあるのなら、分からないと聞いていいと思います。その時に、『自分はこうした方がいいと思うのですが、どうでしょうか。』と具体的な行動を入れて質問するともっといいですね」

壹岐先生は、3名の学生からの質問に一つひとつ丁寧に答えてくださいました。

壹岐先生は私たちに、「実習生自身が楽しむこと。自分なりに行動して、そのあと反省すればいい。経験が大事だから。」とおっしゃってくださいました。この言葉は今、不安でいっぱいの私たちにとても大きな力を与えてくれたと思います。

実習は、楽しみながらも反省を繰り返して、自分自身の学びや新たな気づきにつなげられていけるといいですね。

記事担当 佐々木彩 中島こいし