2019/12/14 保育士?幼稚園課程

TFU教育フォーラム2019

12月14日の3~5限は、けやきホールにて【TFU教育フォーラム2019】が開催されました。
今回は「主体的?対話的で深い学びを目指して~子どもの学びをどう支援するか~」というテーマで学生、卒業生、保育関係者が集い、学びを共に深めていきました。

始めに、TFU社会福祉学科3年の川越美彩希さんより、今回のフォーラムの企画についての説明がありました。
まず、今回の企画について知るうえで、3法令(保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育?保育要領)の改定(訂)について概説が行われました。
近年、世界の国々では「保育?幼児教育」への投資に力を入れ始めてきています。これは、「解のない問いに解を見出せる人材を育成するため」と考えられています。現代社会において、砂漠化?温暖化などの環境問題、貧困?格差、難民問題など、解を見出せていない問題を地球上で抱えられているため、この「解のない問いに解を見出せる力」が必要であると言われています。
ペリー幼稚園プロジェクトや、ジェームズ?ヘックマンの経済学的研究の知見からも、質の高い保育は学歴や年収など長期的にも人生に大きな影響を与えるなど、生きる力の根源となる力であることが分かります。世界で乳幼児教育に関心が向けられ始めてきた中、日本の教育施策もこの潮流に合わせ始め、3法令改定(訂)と至りました。

続いて、今回のフォーラムの主題である「アクティブラーニング」について概説が行われました。ここでは、宮城県仙台市にある緑ケ丘第二幼稚園での事例をもとに、説明をしていただきました。
緑ケ丘第二幼稚園では、保育者が活動を進めていく時に、たとえば「運動会あるけど、どうする?」などと子どもたちに問いかけ、行事について子ども同士が話し合い、何をやりたいかについて考え、決めていくそうです。これだけを聞くと「保育者が活動を決めるのではなく子どもたちが話し合って決めている」ということに驚いてしまいますが、普段の遊びの中でも友だちや保育者と対話があり、普段から繰り返し行われているからこそ、行事の企画段階でも対話が始まるのだそうです。
こうしたことができるのは、保育者が、子どもの主体性が保障されるような環境を構成することや、子どもの育ちに沿った計画を考案、評価、改善していくなど、保育者がカリキュラム?マネジメント(PDCAサイクル)を日々の実践でしっかりと行なっているからです。
幼児教育で育んだ資質?能力の3つの柱の基礎は、小学校以降の「生きる力」の基礎として定着していきます。そのため、「幼児教育において育みたい資質?能力(3つの柱)」の実現に向け、教育課程?指導計画の編成?作成?実施?評価?改善(PDCA)を連続的に実践するといったカリキュラム?マネジメントを行いながら、「幼児期における子どもの見方?考え方」を重視したアクティブラーニングがあらわれる保育を実践していくことが大切になります。


続いて、プロジェクトの活動報告が行われました。
まず、教育学科4年生の松崎楓香さんより、プロジェクト活動の趣旨説明がされました。
本学では保育所実習終了後に、ワールドカフェやAI(アプリシエイシブ?インクワイヤリー)等の大規模型対話技法を用いて対話や発議を重ね、3年生の後期実習指導終了直前にOSTを行います。
“オープンスペース?テクノロジー(以下、省略してOSTと記載します)”とは、澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な課題等について関係者を一堂に集めて、参加者が解決したい課題や議論したい課題を自ら提案し、自主的にスケージュールを決めて話し合いを行う会議の手法のことです。
OSTでは、3年生全員が教室の中でサークル状になり、その中心で担当教員から「これからどんな保育の学びをしていきたいか」を考えるよう問いかけられます。
突然の切り出しに最初は戸惑うものの、徐々に触発されたメンバーがそれぞれ自発的にアジェンダを出し合い、自主的に集まり始め、企画に賛同したメンバーがプロジェクトを結成し、様々な活動や学びに取り組み始めていきます。

テーマも、内容も、参加自体も、学生の自由意志で行う学生主体型のPBL(Project-Besed Leaning)が創出されます。

今回、1年間の活動報告を行ったプロジェクトは以下の通りです。
?文化財作ろうプロジェクト
?障害児プロジェクト
?公務員試験合格プロジェクト
?ママサプリ子育て支援プロジェクト
?NHKプロジェクト
?山形プロジェクト
?環境プロジェクト
?子どもの発達勉強したいプロジェクト
?ぴよねっと

以上の9つのプロジェクトから、活動内容や得た学び?成果について、それぞれ発表していただきました。


続いて、「実践にみる『主体的?対話的で深い学び(アクティブラーニング)』」と題してシンポジウムが行われました。学生が「主体的?対話的で深い学び」に関する実習での事例について発表し、学生同士で質疑応答を交えながら進めていきました。

シンポジウムⅠでは、ファシリテーターである社会福祉学科3年生の村上李夏さんの進行のもと、3名の学生が保育所実習で実際に見てきたアクティブラーニングの事例等について発題を行いました。
話題提供者Ⅰ 社会福祉学科3年 今村栄枝さん
話題提供者Ⅱ 社会福祉学科3年 村上奈々子さん
話題提供者Ⅲ 教育学科3年 服部紗季さん
以上3名の方々に発題していただきました。

続いて、シンポジウムⅡでは、「主体的?対話的で深い学び(アクティブラーニング)の創出と構造」というテーマのもと、教育学科4年生の濱田汐里さんにファシリテーターをしていただき、3名の学生が幼稚園実習や保育参画の中で見られたアクティブラーニングについての事例が紹介されました。
話題提供者Ⅰ 教育学科4年生 小野寺杏紀さん
話題提供者Ⅱ 教育学科4年生 長島遥さん
話題提供者Ⅲ 教育学科4年生 伊藤葵さん
以上の3名の方々に発題していただきました。

発題者自身がそれぞれの現場で子どものアクティブラーニングに出会ったことによって、さらに自分も能動的に保育の学びを進められるようになったというお話がありました。
そして、ファシリテーターの濱田さんから、「これから保育について学びを深めていく1?3年生の皆さんは、ボランティア先の園や実習園での学びと重ね合わせながながら、自分だったらどのような保育をしたいのかを改めて考える機会となったのではないでしょうか」と総括していただきました。

6名の話題提供者の皆さん、ありがとうございました。

最後に閉会式が行われ、冒頭で東京家政大学子ども学部長?教授である大澤力先生よりご講評をいただきました。
「学生の皆さんの発表を聞き、強く感じたのは『等身大の真実の発表である』ということです。シンポジウムでの対話の様子も見て、本当のコミュニケーションはこういうことだと思いました。学生の発題は的を得ており、今回発表してくださった皆さんのような学生を育てられる澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】は、日本を変える保育者を育てられるのではないかと思いました。虐待などの子どもにまつわる問題が最近多いのですが、このような問題の解決に澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】になってくるのが保育者です。皆さん、ぜひ日本を変える保育者になってください!」と力強くお言葉をいただきました。

そして最後に、TFU保育士?幼稚園課程の先生方にご登壇いただき、今回のフォーラムが最後の実習指導となる4年生へ、それぞれメッセージを送っていただきました。
今回のフォーラムも、5時間を超える長丁場となりましたが、今年もTFU保育士?幼稚園課程の学生、教員、卒業生、保育関係者の皆様、保育者養成校の先生方とともに、学びを共有し、深めることができた会となりました。
本フォーラムの主題であった「主体的?対話的で深い学び」について、参加された皆様がなんらかの気づきや学びを得ることができたのではないでしょうか。
殊に学生の皆さんは、これからどのように学生生活を過ごしていくか、自分の学びの取り組み方について、あらためて考え直す機会になったと思います。

記事担当:大橋咲恵、沼田真由