2019/04/26 保育士?幼稚園課程

教育実習(幼?小)の事前事後指導

4月26日(金)の5限に行われた教育実習(幼?小)の事前事後指導では、まず初めに、君島昌志先生から昨年度の就職内定状況についてのお話があり、次に利根川智子先生から、春季休業の課題で出された事例についての解説をしていただきました。そして最後に、小坂徹先生による発達ミニレクチャーが行われました。

まず初めに、君島先生から昨年度の内定状況の概要についてお話がありました。
これから就活を始めていく保育士課程の学生にとってはとても関心のある内容だったのではないでしょうか。
そして、次に利根川智子先生に、春季休業の課題で出された事例の解説?検討をしていただきました。
問題のひとつひとつを丁寧に解説していただく中、時折、学生に質問を投げかけながら進められていき、学生全員が能動的に講義に参加していた様子でした。

事例の登場人物の心情や、その時の保育者や実習生の気持ち、発言の意図やポイント、その言葉が子どもに与える影響などについて詳しく解説していただきました。
ここでは、1つの事例と解説を紹介していきます。

【モルモットが怖い? 3歳児】
Yくんがモルモットを鷲づかみにして、「見て」と持ってきた。しかし、モルモットは、暴れ、爪をたてて、逃げていった。Yくんは、「ムカツク! コイツ」と言って追いかけ、つかまえた。
私(担当保育者)は「Yくん、モルモットをそんなに強くつかんだら、モルモット痛がっているよ。Yくんもつかまれたら、痛いでしょ。やさしく抱いてあげよう」と言った。Yくんは「うん、わかった」と言ったが、モルモットを強く握ったままだった。すると、モルモットはまた逃げ、Yくんが追いかけ、つかんだ。Yくんは「逃げるなよ」「ひっかくな」と言っている。
そこで、私は、そのモルモットを手に乗せ、「こうやって抱くんだよ。やさしく手の上に乗っけるの。こわくないから、Yくん。両手を出して」と言った。そして、Yくんの手にモルモットを乗せると、Yくんは、「こわくないよね」とやや緊張しながら答え、モルモットをしばらく見ていた。
(出典:民秋言?編 2006 保育原理 —その構造と内容の理解— (株)萌文書林 pp.173-174.)


鷲づかみにされてびっくりしたモルモットは、暴れて爪を立てて逃げました。Yくんはそのことを理解していません。そして「ムカツク! コイツ」と言い、強く掴み、先生に優しく抱くように言われました。でもY君はモルモットを強く掴んでしまったり、「逃げるなよ」、「ひっかくな」と言ったりする様子から、「怖い、不安。でも、触りたい、仲良くなりたい。」というYくんの葛藤が伺えます。
「怖い」よりも「触りたい?捕まえたい」気持ちの方が大きいと推測されると利根川先生はおっしゃっていました。


事例より、担当保育者はYくんがモルモットを怖がっていると推測しています。Yくんのどのような様子から、怖がっていると推測したのか考える問題について、
?「鷲づかみにする」とか、「うん、わかった」と言いつつ、強く握ったままである様子
?「ムカツク! コイツ」や「逃げるなよ」、「ひっかくな」と言ったり、「怖くないよね」とやや緊張しながら答えたりした様子
以上のことから推測したと考えられるとおっしゃっていました。


また、担当保育者はYくんの気持ちを汲み取って、言葉に加え、モデルで示すことで関わり方を伝えていました。
このような機会の積み重ねによって、子どもが小動物に興味を持って触れ合うことと保育者の援助により何が育つかということについて、
まず、小動物との関わり方や生態について知ること、小動物に対する興味?関心を育てることができるようになること、また「鷲づかみにしたら痛いよ」と伝えたことから「小動物にも心があること」、実際に触ることで生き物のあたたかさを実感し「小動物にも命があること」も知ることができるとのことでした。

実際に動物と触れ合うというような、「直接体験」の大切さについてもお話していただきました。
例えば、写真やイラストは大きくも小さくもでき、サイズを自由に変えられます。ですが、実寸大のサイズや本物の毛並みも分かりません。本物の大きさや毛並みの質感、体温、特有の匂い、動きなどを感じるのは、写真や動画だけでは難しいのです。実際に触れ合ったり、一緒に生活することによって、実際の生態?生き物の特徴を知ることができたり、親しみが持てて、馴染めるようになったり好きになったりするとおっしゃっていました。

乳幼児は、直接的な体験を通して「考える」「分かる」「知る」などの、さまざまな発達の根っこを培っていきます。子どものそのような発達の根っこを培うことが、とても大切であると利根川先生はお話してくださいました。

直接体験は、小学校の中高学年以降に始まる抽象的な思考(論理的な思考)につながっていくような、基礎となる大事な体験なのであるとおっしゃっていました。
直接体験の大切さと直接体験の機会を生かす援助について考えるきっかけとなったお話でした。


そして最後に、小坂徹先生から発達ミニレクチャーが行われ、前回の問題の解説と今日の課題が出されました。
事例について考えることを通して、子どもの気持ちを考えることの大切さを改めて感じました。また、子どもの姿から「どのような気持ちなのか」と内面を探ろうとし、発達面も考慮しながら関わり方を考えていくのはとても大切なことだと感じた講義となりました。

記事担当:沼田真由