2018/12/15 保育士?幼稚園課程

TFU教育フォーラム2018 PartⅡ 第2部

TFU教育フォーラム2018 PartⅡの第2部では、プロジェクト活動報告が行われました。

今回は“オープンスペース?テクノロジー(OST)”によって発足した学生主体のプロジェクトによるTFU保育士?幼稚園課程ならではのアクティブ?ラーニングの数々を紹介し、学びの成果を全体で共有し合いました。
 
まずは、ファシリテーターである教育学科4年生の渡邊祐貴さんより、プロジェクト活動報告の趣旨説明がされました。

“オープンスペース?テクノロジー(以下、省略してOSTと記載します)”とは、澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な課題等について関係者を一堂に集めて、参加者が解決したい課題や議論したい課題を自ら提案し、自主的にスケージュールを決めて話し合いを行う会議の手法のことです。

本学の保育実習指導Ⅱでは、保育所実習終了後に、ワールドカフェやAI(アプリシエイシブ?インクワイヤリー)等の大規模型対話技法を用いて対話や発議を重ね、3年生の後期実習指導がすべて終わりになる頃に、OSTを行います。

OSTでは、3年生全員が教室の中でサークル状になり、その中心で担当教員から「これからどんな保育の学びをしていきたいか」を考えるよう問いかけられるそうです。

突然の切り出しに最初は戸惑うものの、徐々に触発されたメンバーがそれぞれ自発的にアジェンダ(課題項目)を出し合い、自主的に集まり始め、企画に賛同したメンバーがプロジェクトを結成し、様々な活動や学びに取り組み始めていきます。

このプロジェクトとは別の言い方をすれば、“勝手連的にやりたい人たちが自分たちで課題に取り組む保育の学びチーム”です。

テーマも、内容も、参加自体も、学生の自由意思で行うまさに学生主体型のPBL(Project-Based Learninng)という新しい学びとなります。

今回、活動報告を行ったプロジェクトは以下の3つです。
?保護者支援プロジェクト(代表:社会福祉学科4年生 山内 修平さん)
?仙台?関東園見学プロジェクト(代表:教育学科4年生 遠藤 肖華さん)
?出稼ぎプロジェクト(代表:教育学科4年生 高橋 美羽さん)

はじめに、保護者支援プロジェクトの活動報告が行われました。

代表の山内さんは、就職してからの保護者との関係の構築について不安を感じていたそうです。そこで、将来直面しうる問題である「保護者支援」について研究してみたい、保護者の悩みを知っておきたいと考え、プロジェクトを発足させたそうです。

プロジェクトの活動としては、主に連絡帳作成や事例検討などを行い、学びを深めていたそうです。プロジェクトメンバーの皆さんは、「たくさんの子どもがいる中で、連絡帳を書いていくことは大変そう」と思ったことから、毎回の活動の最後に時間を設定し、連絡帳を書いていたそうです。連絡帳には次の活動の諸連絡や、活動中のメンバーの様子を具体的に記載していたとお話していました。

事例検討では、文献を用い、
① 個人でケース検討を行い、それを他のメンバーに発表する
② 文献の解答例を確認する
③ 文献のポイントをまとめていく
以上のような流れでケース検討を行ったそうです。

ここで、保護者支援プロジェクトの事例検討の方法の例を紹介します。保護者から「うちの子、体が小さいので不安です。ちゃんと見て頂いていますか?」と言われた事例です。

この事例の対応として、保護者支援プロジェクトの皆さんは、
?「大丈夫ですよ」と安心してもらえるような言葉をかける
?「お子さんのことが心配なのですね、お気持ちわかります」と受容、共感する
?「?ができるようになったんですよ」と具体的なエピソードを話す
という対応方法を考えたそうです。

文献に記載されていた3つの解答例のうち、ベストアンサーは「ご心配なんですね。〇〇ちゃんは特に困ることなく、過ごしていますよ。参観の時にご覧になってくださいね」だったそうです。

そして、文献のポイントを
?「大丈夫」はNG、保護者は大丈夫だと感じていないから聞いている
?保護者の心配な気持ちに寄り添う
?「頑張っていますよ」は抽象的で相手の心に響かない、「うちの子は頑張らなければついていけない」と不安を煽ることも
?具体的なエピソードを伝えることで「いつも、うちの子を見てくれている」と信頼構築につながる
?保育参観やお便りなどを用いて、保育を身近に感じてもらう
というふうにまとめ、学びに繋げていったそうです。

そして、保護者支援プロジェクトとしての活動を通して、
?将来働いていく上で直面しそうな事例について考えることができた
?保護者の抱えている不安や、多様な保護者がいることを知ることができた
?連絡帳を書いていくことで、活動中の些細な言動や行動に着目することができ、子どもの些細な変化に気づくように繋げていきたい
以上の3つの成果を感じられているそうです。

また、今後の展望としてポイントをまとめたものを冊子としてまとめ、復習に役立てたり、就職してから直面したケースに柔軟に対応できるようにしたりしたいと話していました。

最後に私たち後輩へ、「子どもと中途半端に関わってしまったら、子どもにとっても、自分にとっても良くないのではないかと考えることと同じように、保護者ともただ何となく関わってはいけないのではないだろうか。色々な学び方があるので、自分に合った方法で少しでも保護者支援について学んで欲しい」というメッセージもくださいました。


次に、仙台?関東園見学プロジェクトの活動報告が行われました。

このプロジェクトは、代表の遠藤さんを中心に、就職先を見つけたい、自分に合った園を見つけたい、一人でボランティアに行くのは不安、いい保育を知りたい、などの思いから発足されたプロジェクトです。
 
活動の流れは、
① 自分が訪問したい園、その理由などをメンバーに発表する
② 行きたい園を決め、園ごとにグループを作る
③ 見学に行くメンバーを決め、それぞれ園に連絡し、日程調整をする
④ 園見学、ボランティアに行く
⑤ グループごとに見学、ボランティアの内容を振り返りながらフォーマットを作成、共有する
⑥ フォーマットをもとに見学、ボランティアの内容をより具体的に発表し、話し合いを行うことで保育について学んでいく
というようになっていたそうです。

このプロジェクトのメンバーの半数は11?15の園の見学?ボランティアに行っており、中には20以上もの園に見学?ボランティアに行かれたメンバーもいるのだそうです。また、全員が、自分の保育観と合う保育をしている園に出会うことができたそうです。また、プロジェクト活動を通して、行動する積極性を養うことができたり、園との出会いから就職へつなげていけたりと、このプロジェクトに参加したことによって、良いことがたくさんあったとお話ししていました。


最後に、出稼ぎプロジェクトの活動報告が行われました。

このプロジェクトは、代表の高橋さんが東日本園見学プロジェクトを立ち上げた際、和田先生より「関東の園に行くなら、アルバイトしてきたらいいじゃないか!」という一言もあって、関東の園でアルバイトをしながら、保育について学びを深めていくというプロジェクトとして発足しました。
 
このプロジェクトの活動をサポートしていただいているのは、株式会社ベスタネットの代表取締役社長の安積 聰さんです。園側との日程の交渉や時給設定、ホテルの手配や交通費など、私達の全てをサポートしていただいています。

プロジェクトが発足し、3月から次々と出稼ぎに参加したプロジェクトのメンバーの皆さんは、6月上旬に小規模保育園をテーマとした研究発表も行いました。

この出稼ぎに協力してくださっている園はすでにたくさんありますが、これからもっと増えてくるのではないかと予想されています。

続いて、出稼ぎでのメリットについていくつか紹介します。
1つ目は、0歳児クラスにたくさん入ることができるということです。実習ではたくさん入ることができなかった人もいると思いますが、出稼ぎ先では0歳児クラスに入れてもらえる機会が多く、オムツ交換や、寝かしつけ等、乳児保育について学ぶチャンスなのだそうです。机上では覚えづらい細かな発達も自然と覚えられ、個人差も良く理解できるそうです。

2つ目は、仕事をしながら先生の保育を見て学ぶことができるということです。
保育補助のようなお手伝いをしながら、担任の先生だけでなく、補助の先生がどう動いてサポートしているかなどまで細かく観察することができるそうです。また、自分だったらどう対応するかなど考えたりすることもできるそうです。

3つ目は、ボランティアではないということです。お給料が付いてくるため、“仕事をさせていただいている”という緊張感と責任をもって現場に入ることができるそうです。また、与えていただける仕事以外にも積極的に仕事を求めていく姿勢も大切になってくるそうです。

そして、出稼ぎにもすっかり慣れてきた頃、出稼ぎ先の理事長から、本学の保育士?幼稚園課程が行っている学びについて法人合同研修で学生から講演をしてもらえないかというお話をいただき、なんと現場の保育者の方々の前でプロジェクトのメンバー数人で講演を行ったのだそうです。

以下が、その際の講演内容となります。
①これまでの取り組み?小規模保育事業研究
~イターズ?エカーズによる評価~
②評価対象5園の保育内容
③非認知能力について
④子ども理解?共感的理解
④ 事例展開~子ども主体~
⑦ Q&A
⑧ 考察?今後の抱負

この講演を行ったメンバーの皆さんは、まさに、ラーニング?ピラミッドのTeaching Others(自分が学んできたことを他者に伝えることで学びの定着がなされる)そのものだと感じたそうです。
 
しかも、今回の場合は、学生が学生にではなく、学生が現場の先生にという形でした。出稼ぎプロジェクトはPractice Doing(実践による経験、練習)が多めと思われがちだが、Discussion Group(他者と議論する)もあり、[メンバーが会話をしていると、いつの間にか保育の話しになっている自然現象]、Teaching Othersの機会も多々ある!と高橋さんは強くおっしゃっていました。

続いて、プロジェクトメンバーの教育学科4年生今野桃香さんから、実際に出稼ぎに行ってみてどうだったかについて、お話がありました。以下、今野さんが実際にお話した文を省略せずに、全文掲載させていただきます。

私は今年に入り約10園に行きました。企業の園、社会福祉法人の園、小規模保育事業所まで様々な保育園に入らせていただきました。出稼ぎプロジェクトのいい点は、金銭面の有益はもちろんですが、和田先生や安積さんを通していくため、信頼のある保育園を紹介していただけるという事です。また、いつでも自分の行きたいタイミングで行けるところ、一度行った園でも何度でも受け入れてもらえるところも利点です。普通のインターンだと、1日2日しか入れない場合が多いと思います。しかし、出稼ぎプロジェクトとしていくことで、1週間連続で入らせていただくことも出来ました。1日2日ではわからない保育内容や環境設定の細かい部分まで見ることができ、もちろんいい点だけでなく課題点も見えてくるため、多くを知ったうえで就職先を考えることができます。また、保育の時間以外に、ご飯を食べに行く機会を作っていただき、その場で沢山の質問に答えていただき、答えにくい質問に対しても快く答えていただきました。私は今回出稼ぎした園で、自分の就職したい園も見つけることができました。今回のプロジェクト活動を通して後輩の皆さんにアドバイスがあります。1回の訪問で就職先を決めてしまわないでほしいという事です。5月に見た園より、10月に見た園のほうが落ち着いてよく見えるのは当たり前です。そのため、前期に見た園と後期に見た園で比べるのではなく、前期から後期にかけてどのくらい子どもが成長しているのか、保育内容が充実しているかをしっかり見極めて、そこの成長過程に目を向けて考えてほしいです。はじめは、就職先を決めることだけを目的としていましたが、様々な園に入っていくうちに、保育の就活は保育の勉強をすることであると気づくことができました。多くの園に入れば入るほど、その園の特色を学ぶことができ、自分の理想の保育や、なりたい保育者像を明確にすることができると思います。

また、プロジェクトを通して、本学保育士?幼稚園課程を卒業された先輩の言葉である「保育の就活は保育を勉強することである」「ものすっっごく幸せで、もっと保育を勉強したいと思えて、まだまだ卒業したくない!!!」「学び続けることが保育キャリア形成」ということを実際に痛感させられたとお話ししていました。

そして最後に、代表の高橋さんから、後輩へのメッセージをいただきました。
以下、高橋さんが実際にお話した文を省略せずに、全文掲載させていただきます。

4年生になり、就活やアルバイトの他に“何かしたい”と思っていた時に持ち掛けられたのが“出稼ぎ”の話でした。この話しにのったからこそ保育に夢中になり、もっと勉強したいどんどん挑戦したいと思える今があると感じます。
ですが、正直1年間では足りない、もっと早くに行動できれば良かったなと後悔もあります。
そんな中、出稼ぎに行った3年生や話しを聞きたいと言ってくれた2年生が既にいます。福祉大の保育士?幼稚園課程は自分がやってみたいことに沢山挑戦できます。それを支えてくれる教員、友人もいます。あと数か月ですが、先輩たちもまだ近くにいます。

出稼ぎプロジェクトに入って出稼ぎだけではなく、研究発表や現場の先生方に向けての発表、研修への参加など沢山のことを経験できました。また誰よりも多く現場にいたため、確実に理論と実践を結び付けることができました。これらは現場に出ても役に立ちますし、自分の誰にも負けない強みであると感じます。
1どころか0から始めたプロジェクト活動ですが、私や私の友人がしっかりと土台を築いたつもりです。それを引き継いでもらって、発展させていってほしいなと感じます。

きっと“何かしたい”“何かできたら”と思っている人沢山いるはずです…話しを聞いてみるところからでも始めてみませんか?
そして、「私は澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】保育士?幼稚園課程で4年間を過ごせて幸せでした。この大学にきて本当によかったです!」

と強く話していました。

第2部を終え、閉会式の中で、TFU保育士?幼稚園課程の先生方からの総括がありました。今回で4年生の実習指導に一区切りつくということで、今まで努力されてきた4年生に向けたねぎらいの言葉とともに、これから実践者として保育の現場に立つ先輩方へエールが送られました。また、これからも一緒に頑張っていこうというお言葉もありました。

最後には、NPO法人 ケンパ?ラーニング?コミュニティ協会 理事長 和久津 肇先生からご講評をいただき、「学生の姿に大変刺激を受けました。」とお言葉をいただきました。
 
2週にわたり行われたTFU教育フォーラム2018もいよいよ幕を閉じました。合計で10時間を超える長丁場ではありましたが、今年もTFU保育士?幼稚園課程の学生、教員、そしてわざわざお越しいただいた保育に携わっている方々、保育者養成校の先生方とともに、密度の濃い学びを共有し、深めることができたのではないかと感じております。

4年生の先輩方は今回のTFU教育フォーラムをもって、3年にわたる実習指導に一区切りつけることになります。1、2、3年生は、これまでのTFU保育士?幼稚園課程の先輩方のような自発的?主体的?能動的な学びの姿勢を引き続き受け継いでいくことに加え、より良い保育者になるために、自分はこれから何を学びたいか、どういった学生生活を送っていきたいかを、今一度考えてみるよい機会にもなったのではないでしょうか。

記事担当:成ケ澤 咲希