2018/11/15 保育士?幼稚園課程

2018年11月15日 保育実習指導Ⅱ

11月15日の保育実習指導Ⅱでは、「3法令改定(改訂)とこれからの保育?幼児教育」と題して、平成29年3月に告示された保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育?保育要領の改訂(定)についてのポイントを確認する講義が上村裕樹先生により行われました。

その前にまず、4年生の環境プロジェクトの方々から?保育における環境?ミニレクチャーが行われました。
「環境を通して行う保育」は日本の公的保育の考え方の基本です。保育における「環境」はとても澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】ですが、保育者が環境を構成する上で大切なことは、どのような意図をもって環境を構成するのかということです。具体的に言うと、子どもにどのような力を身につけてほしいか、どのような配慮をした方が良いか、発達に合わせた環境を考えるなどということです。
発表では、午睡準備中の際の写真が紹介され、そこでの環境構成について学生同士で話し合う時間もありました。来週以降も環境プロジェクトによるミニレクチャーは続いていくことになりました。

続いて、今回の本題である3法令改定(改訂)についてのポイントについて、前回に引き続き、上村先生よりご教授いただきました。
 
前回の実習指導において、「乳幼児期に非認知能力を育むことが大切である」ということを説明していただきました。その「非認知能力を育むことが大切である」と言われている根拠に該当するものとして、以下の3つの実験があるとのことでした。

①ペリー幼稚園プロジェクト(1962~67):低所得のアフリカ系米国人の3~4歳の子どもを対象に、遊びを通して行い、主体性を尊重した「質の高い保育」を2年間提供したという実験。その結果、6歳児でのIQや19歳時での高校卒業率が高いこと、40歳時点での逮捕率が低くなったなどの効果が実証された。学歴や年収、雇用などで長期的に大きな影響を与えたのは、認知能力よりもむしろ非認知能力ではないかということになった。

②アベセダリアン?プロジェクト:母親から受ける教育?収入等の観点からハイリスクと診断された子ども111人を対象に、1972~77年頃にかけて行われた実験である。生後3か月~8歳の子どもに全日介入し、トリートメントグループ(言語を中心とした知能遊びなど、質の高い幼児教育を受ける)とコントロールグループ(基本的なヘルスケアのみを受ける)に分かれて、30歳まで追跡調査を実施した。結果として、学習意欲や労働意欲、努力や忍耐などの「非認知能力」に差が表れた。

③マシュマロテスト:4~5歳の子どもを対象として、マシュマロ1個の報酬をもらった後、そのマシュマロを食べるのを20分我慢できたらマシュマロを2個もらうという条件をつけたら何秒我慢できるかという実験。この実験は子どもの自制心(セルフコントロール)について見ることができる。秒数が多い子どもほど、大学進学適性試験の点数が高いこと、青年期の社会的?知的機能の評価が高い、欲求不満やストレスにうまく対処できるようになるなどの利点がある。

次に、その非認知能力を育む上でのメカニズムについて、脳の仕組みと絡めて説明していただきました。

大脳辺縁系等(脳の深部)の感覚や非認知の情動は、成長とともに「思考力」「記憶力」「計画性」などの認知面をそなえる前頭連合野(脳の前部)と神経ネットワークでつながっていきます。「自分は価値がある」「大丈夫」などの自己肯定感が育っていることで、大脳辺縁系から前頭連合野にポジティブな情動的エネルギーが送り込まれるという仕組みです。子どもは、大人からの受容的で応答的なかかわりを受け続けることで、その大人との愛着?信頼関係を結び、自己肯定感を育みやすくなります。そして、それを根っことして前向きな気持ちや向上心が育っていくということです。
 
また、子どもの行動?行為に対して、「結果(能力)について褒めるだけではなく、それに至る過程(プロセス)について具体的に褒めることで、ネガティブなことに遭遇した時に乗り越える力を伸ばしやすい」ということを、上村先生はおっしゃっていました。

更に、保育?教育関連の基本用語について説明していただきました。
今回の実習指導で詳しく説明していただいたポイントは以下の通りです。

●法令による?教育??保育?
?教育?:広い意味では家庭や地域の教育、保育などを含む。狭い意味でいうと、「学校において行われる教育」であり、これは幼稚園と幼保連携型認定こども園が実施する。
?保育?:広い意味では、家庭その他での愛護を核とした心身を健やかに育成する営みである。狭い意味でいうと、「養護及び教育」であり、保育所等での保育のことをいう。

●3つの指針?要領の表記に違いがある理由:?法律上?の違いがあるから。
(例)?前文?:幼稚園教育要領のみにある。これは、小学校や中学校等の学習指導要領に合わせているためである。

●保育所:?幼児教育をおこなう施設?
保育所保育指針第1章総則4に、保育所も?幼児教育を行う施設?と明示されている。法律としては?教育施設?とは定められていないが、制度として保育所も「幼児教育を行う施設」と位置づけられた。

●カリキュラムマネジメント
幼稚園教育要領と幼保連携型認定こども園教育?保育要領にだけ入った。ただし、それは、保育所にカリキュラムマネジメントが必要ないということではなく、記述用語に法的制限があるため、入らなかったのである。

●総則
法令等の全体に通じる決まり。指針?要領の核になる。その組織の基本方針、理念、守るべき事項等の原則を示す。
特に?総則?については、?平成20年版と形が変わっているところを比較しながら読んでほしい?と、上村先生はおっしゃっていました。
 
最後に、小坂徹先生による発達ミニレクチャーがありました。

保育実習指導Ⅱの発達ミニレクチャーも残り2回ということで、今回は今までの総括的復習として、以下の問題を次回までの宿題として出していただきました。

【問1】6カ月未満児:?愛情深い関わり?とは、具体的にどのような関わりか?
【問2】6カ月から1歳3か月未満児?1歳3か月から2歳未満児:?応答的?とは、具体的にどのような関わりか?
【問3】2歳児及び3歳児:?受け止める?とは、具体的にどのような関わりか?
【問4】2歳児:?さりげない?とは、具体的にどのようなことか?
【問5】3歳児:?ていねいな対応?とは、具体的にどのような対応か?
【問6】4歳児:この時期の?けんか?以外の人間関係の葛藤は、どのようなものか?
【問7】4歳児:?集団生活の展開に特に留意する?とは、具体的にどのようなことか?
【問8】5歳児:?大人の生活にも目を向けることができるときである?ことから、保育者が気をつけなくてはならないことはどのようなことか?
【問9】6歳児:この時期の?甘え?について、どのようにとらえ、対応したらよいか?

「指針や要領が改定(改訂)されても、子どもの発達に変わりはない」と小坂先生はおっしゃっていました。

環境構成のこと、改訂版の指針や要領を理解すること、子どもの発達をしっかりと理解すること等、これからより良い保育者となるためにやらなければいけないことは多くあると感じました。それが未来の子どもたちのためになると思いますし、私たち自身の成長にもつながると思います。
これからも、皆さんで保育の学びをしていきましょう。

記事担当:大橋咲恵