2018/11/08 保育士?幼稚園課程

2018年11月8日 保育実習指導Ⅰ

11月8日の2年生実習指導(保育実習指導Ⅰ)では、本課程の卒業生である伊藤麻優さんから就職活動に関してお話を頂いた後、和田先生から改定(改訂)された保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育?保育要領について解説をして頂きました。和田先生からは、3週連続でこの3法令改定(改訂)のお話をしていただくことになりますが、今回は主に非認知能力とその育成についてのお話でした。

まずは、株式会社ピジョンハーツ大田区立山王保育園で、現在2歳児の担任をしている保育士2年目の伊藤麻優さんから、自分の体験に基づいて就職活動に関するお話しをして頂きました。

以下、伊藤さんのお話しです。

私の就職活動と保育士になった今
<就活の流れ>
大学3年生の時に保育事業者合同セミナーinステーションキャンパスに参加し、それから就活を意識し始めました。大学4年生になると、「そろそろ就活しないといけない、地元と東京どちらにしよう」「福利厚生が良いところが良い」「そもそもどんな園で自分は働きたいのか」と考えることがいろいろ増えてきました。伊藤さんは、まずはいろいろな園に行こうと思い、4月から9月にかけて次々と各種の就職セミナーへ参加しました。すると、セミナーを重ねるごとに、「就活を早く終わらせたいために早く決めるのはもったいない」と考えるようになりました。そこで、9月になって一番気になった園、すなわちピジョンハーツの説明会に行き、応募することを決めました。そして、10月中旬に採用試験を迎え、10月下旬に採用通知を頂きました。

<決めた理由>
?優しい、雰囲気が明るいこと
?福利厚生が整っていること
?福祉大の先輩がいる安心感
?企業理念の「愛」に魅力を感じたこと

<保育士2年目のいま>
なにより、保育士として働いていて、率直に楽しいと思っています。その中でも担任は1年間通して子どもと関わることができるので、実習やボランティアとは異なり、子どもの成長を間近に感じられるなど、感動ややりがいを感じています。また、いろいろな先生の保育を見て学ぶことができるので、自分も保育士として成長できることに魅力を感じています。同期や先輩の先生の存在にも助けられていて、楽しかったことや大変だったことを振り替える時間を設けてくれるので、日々成長を感じています。

<大学生の皆さんに伝えたいこと>
① 就活について
いろんな園に行って、実際に園を見学して、雰囲気を肌で感じることが大切です。時には直観も大事です。また、実際に今働いている先輩の話も聞いてみると良いです。そして、園に行く前に、自分が何を大切にしたいのかをなんとなくでもよいので、見つけておくことが必要です。

② 大学生のうちに
今しかできない経験をたくさんしておくことが大事です。働いた後に何が自分の魅力につながるか分かりません。手遊びや絵本など自分がやりたいことや好きだと思うことを1つでも見つけておくと、実際に働いた時のイメージが付きやすいです。そして、勉強して知識をつけておくことは何より大事です。備えあれば憂いなしです。

<学生からの質問>
Q:ピジョンハーツの「愛」とは、具体的にどのようなことですか?
A:意欲の生まれるような声かけを行っています。そして、いつも小さな褒め方を積み重ねて行っています。

Q:就職が決まったあとは、どのように過ごしましたか?
A:手遊びや素話のレパートリーを増やすなど、就職が決まっても保育の準備をしていました。
この後からは、和田先生より、保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育?保育要領の3法令改定(改訂)の概説をして頂きました。

<認知能力?非認知能力>
認知能力…記憶力や知性など目に見えやすい(数値化しやすい)能力
非認知能力…情動?感情に関連するものであり、目に見えにくい(数値化しにくい)能力
       具体的には、やり抜く力、やる気や意欲、自分のおかれた状況を把握する、社会性、創造性、協調性、誠実さなどをいいます。
目に見えないような、一見すると分かりづらい子どもの世界に迫っていくのが、保育のプロです。それ丁寧に向き合い、大切に関わっていくことが保育では大切です。ここで今般の3法令改定(改訂)で、キーワードとして非認知能力が挙げられますが、非認知能力こそ乳幼児期に焦点をあてて育てていきたい能力であり、これを育てることで投げ出さずに根気強く続けることができるようになるなど、生涯生きていく上でとても大切になります。

<ペリー誘致園プロジェクト(1962~67)>
アメリカで行われた研究で、質の高い保育(遊びを通して行う保育、主体性を尊重した保育など)を2年間提供しました。対象は低所得のアフリカ系アメリカ人3~4歳の子どもで、幼稚園の先生は修士号以上の専門家、毎日の保育と合わせて1週間につき1.5時間の家庭訪問を行うなどの設定を行いました。
その研究で分かったことは、こうした質の高い保育を受けた子どもほど、その当時の一般的な保育を受けたこどもに比べて、
6歳時点のIQは高く、
19歳で高校卒業率も高く、
27歳で持ち家は高く、
40歳で逮捕率が低い
などという結果が出ました。
ちなみに、IQ(知能指数)は、1?2年目には一時的にはぐんと伸びましたが、その後は特に伸びないという結果に終わりました。
 
<社会収益率 ジェームズ?ヘックマン(シカゴ大教授)>
人的資本への社会的投資は、子どもが小さいうちから行うべきとヘックマンは唱えました。幼児期の「質の高い保育」への投資は社会収益率7~10%程度であり、具体的には4歳の時に投資した100円が65歳で6,000?30,000円にもなって社会に還元されるということです。ここで大事なのは、子どもの何が変わったのかということです。質の良い保育の提供によって、認知能力においては短期的な変化しか見られなかったのですが、非認知能力においては長く影響していくことがわかったのです。

<脳の育ちと非認知能力>
乳幼児に大人から応答的で丁寧な関わりを受けていると健全に育ちます。丁寧な関わりとは、それはまさに保育のことです。言い方を変えると、子どもは大人との愛着関係?信頼関係を結び「自分はいつでも受け入れてもらえる存在」「存在価値のある人間」という自己肯定感が育まれます。それを根っことして、前向きな気持ちや向上心が芽生えるようになります。そのため認知能力を育てたいなら、まず非認知能力を育てる必要があります。非認知能力はどの年代でも伸ばすことは可能です。小学校以上の先生も認知能力だけでなく、非認知能力を伸ばすような関わりが一層求められてきています。なお、脳のやわらかい乳幼児の方がずっと伸び率がいいので、早いうちに基礎を固めていく方が効率的だとする見解もあります。

非認知能力は、いわば生きる力の源です。記憶や思考力といった目に見えやすい認知能力とは違い、目に見えにくいものですが、子どもの生きる力を育むために非認知能力を育む関わり方を心がけましょう。

記事担当:菅原優友