2022/10/01 教育学科

教育コラム:「高校生と母親の睡眠実態」

初等教育専攻 水野康 教授(研究報告)

論文本体の表紙
「高校生と母親の睡眠実態」
2017~2019年度に本学特別研究助成を受けて実施した「高校生と母親の睡眠に関する研究」の成果が欧文学術誌Clocks & Sleepに掲載されました。

日本人が世界一睡眠不足、というのはよく知られていますが、高校生とその母親の両者の睡眠データ(計19組)を、夏季と秋季に取得したことが本研究の特色です。一般に母親は、家族内で最も早起きで、家族の起床が早いと、それに合わせて早起きしています。高校生は小学校高学年から始まる夜型化が限界に近くなる年代で、課外活動や受験勉強の影響も相まって睡眠時間が削られています。また、睡眠は四季の影響を受けますが、暑い夏が睡眠にとっては厳しい季節になります。

腕時計型の機械から計測した睡眠時間は、夏?秋、母親?高校生ともに平日は約6時間、休日は約7時間でした。平均値では、夏の方が暑くて眠れない、ということはありませんでしたが、寝室の室温のデータに照らすと、秋(室温17~25℃)は室温と睡眠は無関係でしたが、夏(25~30℃)は室温が高いと親子とも寝付いた後で目の覚める時間が増える、という結果が認められました。母親は高校生よりも早起きでしたが、その分、早く寝ており、睡眠時間を確保するための自衛策をとっていると思われます。それでも、睡眠不足を感じる頻度が、“ほとんど毎日”と“週何日か”を合わせた回答が親子とも約半数に達しており、どちらも睡眠時間が足りないことは明らかです。必要な睡眠時間は年齢によって異なり、若者の方が、より長い睡眠時間が必要です。夏?冬ともに親子の睡眠時間がほぼ同様ということは、高校生の睡眠不足がより深刻と考えられます。その証拠の一つとして、寝室の明るさのデータから、部屋の灯りを点けたまま寝落ちした、と思われる記録が、全記録夜約260夜(19人、夏と秋で各1週間のデータ取得)の1割弱で認められました。明るいままで眠ると、睡眠の質も低く、短い上に質の低い睡眠をとることになります。これらの結果は、社会の中で睡眠教育が不十分であることを反映していると考えられ、家庭や学校などを対象とした睡眠教育の必要性を示唆しています。興味のある方は論文本体(https://www.mdpi.com/2624-5175/4/4/41)をご覧ください。

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