2022/08/24 福祉心理学科 総合福祉学研究科 福祉心理学専攻

【研究】パーキンソン患者の選択肢への損失回避の脳内メカニズムを解明 / 福祉心理学科 重宗准教授

澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】、福祉心理学科の重宗弥生准教授と京都大学人と社会の未来研究院の阿部修士准教授らの共著論文 “Decreased sensitivity to loss of options in patients with Parkinson's disease” が『Neuropsychologia』に掲載されました。

ヒトは多くの選択肢があることや、選択の自由があることを好み、選択肢が失われそうな場合には、損をしてでも選択肢を維持しようとすることが示されています。一方、パーキンソン病(Parkinson’s Disease: PD)患者では、金銭を失うことに対する忌避感(損失回避)が低下していることが報告されているものの、選択肢を失うことに対する忌避感も低下しているかどうかは明らかにされていませんでした。損失回避には線条体が関与することが示されていることから、選択肢を失うことに対する忌避感も、パーキンソン病患者における線条体の障害に伴い低下する可能性が考えられます。
本研究では、この可能性について検討を行ないました。実験では、PD患者と健常対照者(Healthy Control: HC)に、3つの扉から1つの扉を選択することでポイントを獲得していく扉ゲームに参加してもらいました。扉ゲームには、シャッター条件とコントロール条件の2つの条件が設けられており、シャッター条件では、選択していない扉のシャッターが少しずつ降りていき、シャッターが完全に閉まってしまうと、その扉を選択することができなくなりました。対するコントロール条件では、シャッターが降りてくることはなく、扉を選択できなくなることもありませんでした。

PD患者ではSPECT画像から線条体のドーパミントランスポーター分布の測定が行われました。その結果、HCは選択肢を維持するために、シャッター条件でより頻繁に選択する扉を切り替えるのに対して、PD患者ではそのような行動がみられないことが分かりました。また、ドーパミントランスポーターの分布が低いPD患者ほど、シャッター条件とコントロール条件の扉の切り替えの差が小さいことが分かりました。本研究の結果は、PD患者では、ドーパミン神経系の障害により、選択肢を失うことへの忌避感が低下することを示唆しています。

本研究成果は、パーキンソン病患者の病態理解と新しい治療アプローチの発見に貢献すると期待できます。

Shigemune Y, Kawasaki I, Baba T, Takeda A, Abe N (2022)
Decreased sensitivity to loss of options in patients with Parkinson’s disease
Neuropsychologia 174: 108322

https://doi.org/10.1016/j.neuropsychologia.2022.108322

 

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