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VOL.70 SEPTEMBER 2010

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教員MESSAGE [社会保障論ほか]
レポートを作成する前提としての学び方

教授 阿部 裕二

★お疲れ様です★

 通信教育部の皆さん,日々の学問探求お疲れさまです。皆さんなりの計画通りに学問探求はお進みでしょうか。さまざまな環境の下での学びには,多くのご苦労もおありだろうと推察いたします。
 ところで,一般的に通信教育部での「学び」は「レポート作成による学び」と「スクーリングによる学び」から構成されています(科目修了試験を除く)。そのなかでも「スクーリングではどのような学び方が澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのか」などに関してはスクーリング時において話す機会がありますが,「レポート作成に関すること」についてはあまり話す機会や場もないのが現状です(スクーリングの際に若干話すこともありますが)。
 そこで,今回の『With』では,「レポート作成による学び方」あるいは「学んでレポートを作成すること」を考えていきます。ただし,「レポートの作成の仕方」については多くの先生方がこれまで述べられていますので,ここではあまり触れず,レポートを作成するためにも「どのような学び方」が澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのかという点に焦点を絞って述べていきます。その際,私が担当している科目の一つである「社会保障(論)」を素材にしながら述べていきます。

★「学んで習うこと」から「学んで問うこと」★

 以前,私は『With』58号(March~)に,拙文「修士論文への道~レポートから論文へ」(通信制大学院コーナー)を4回にわたって連載しました。そのなかで「学習」と「学問」の違いを取り上げました。これから述べる内容の前提となりますので,以下においてその部分を簡単に要約します。

 一般的に,高校での学びは「学習」であり,大学では「学問」をするといわれます。そこで,まず両者の違いについて改めてみてみましょう。
 「学習」は既存の基礎的な知識や問題解決法(技能)を吸収し習得することに重点を置いた学び方(学んで習う)といえます。「既存の」ということでは,すでにあるものをそのまま吸収?習得することを意味し,しかも相手から習うわけですから,学び手としては受動的な学び方になります。
 それに対して,皆さんが学ばれている場は「学問」の世界です。この「学問」は文字通り「学んで問う」ことです。つまり,私たちはただ単に既存の知識や技能を受動的に習得する(習う)のではなく(あるいは次の段階として),現代の社会?生活において過去?現在の知識や技術が正しいか否か(適合するか否か)を判断し,さらに何が本当の問題なのかという問題の本質を見極め,その問題への解決法を提示できる本質的問題発見―解決能力を醸成させることが「学問」の内容ともいえるでしょう。
 このように,「学習」や「学問」のいずれの場面でも学ぶことは当然澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのですが,「学問」には「学習」とは異なりさまざまな場面での「問いかけ」が不可欠となります。「何故なんだろう」,「どうしてなんだろう」,「本当なんだろうか」などの「問いかけ」です。自らが「学んで問う」わけですから,受動的な姿勢であっては「問う」ことはできません。その意味で,「学問:学んで問う」際には,学び手の主体性が求められているのです。

 以上から理解されるように,大学での学びは与えられた課題を受け身的に淡々とこなすだけでは十分ではないのです。ここで述べていることは通学制,通信制にかかわらず大学で学ぶ人たちに共通している「学び方」といえます。

★社会保障を例にとると…★

 「学んで問う」ことについて,社会保障を素材に考えてみましょう。
 現在,社会保障の目的は「最低限度の生活保障」から「国民が健やかで安心できる生活保障」へと移行していることがさまざまな社会保障関連書籍で書かれています。このような内容に触れた際に,皆さんはそのまま受け入れるのではなく,「なぜ移行したのか,移行しなければならなかったのか」,「そもそも最低限度の生活保障の目的は達成されたのか」,「健やかで安心できる生活とは何か,そのような生活を国が本当に保障できるのか」などの疑問が生じるはずです。レポートを作成する際に,このような視点も加味して考察すると内容が深まりますし,「問いかけ」に基づいた学びになるわけです。
 このような問いかけを続けていくと,「社会保障とは何か」,「なぜ,私たちの社会に社会保障(社会福祉)はあるのか」,そして「このような考え方やシステムを求める人間とはどのような存在なのか」などの問題意識に行き着きます。これらの問題意識を考察する(考える,悩む)ことこそが,まさに「大学における社会保障(社会保障)の学び方」の神髄であると思います。

★学びをレポートに反映させる★

 提出されたレポートを評価するとき,課題に従って教科書をまとめただけのレポートが多く見受けられます。結局のところテキストの要約にとどまっているのです。これでは,大学での学び方としては十分ではないことは,これまでの論旨からみてご理解いただけるのではないでしょうか。レポートには自分なりの「問いかけ」を内容として盛り込み,教科書に留まらず他の参考文献をフルに活用しながらその「問いかけ」にアプローチすることが澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのです。
 通信教育部の皆さんの中には,「忙しくて教科書だけをまとめるだけで精一杯だ。時間の余裕はない」といわれる方もいるかも知れません。さまざまな環境の下で学ばれていることは理解しつつも,「大学で学ぶ意味」を今一度考えてほしいのです。たとえ与えられた課題であっても,これまで述べてきたような学び方に基づいてレポートの作成を心がけることが,「学んで問うこと」(学問)に主体的に取り組んでいくことへの途に通じるのです。

★お身体をご自愛ください★

 2010年9月2日にこの原稿を脱稿しようとしています。9月とはいえ酷暑が続いています。この夏は記録的な暑さだったようです。仕事はもちろんのこと,何をやるにしても大変な苦労が伴った時期でした。この原稿が,皆さんの目に触れる頃までには過ごしやすい季節(気温)になってくれることをただただ祈るばかりです。
 通信教育部で学ばれている皆さんもくれぐれもお身体をご自愛ください。そしてみなさんお一人おひとりの目標が達成されますよう祈念しております。

以上(^^)/

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