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VOL.68 JUNE 2010

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[OB MESSAGE] 精神保健福祉援助実習
精神保健福祉援助実習を終えて ?地域活動支援センターにて?

通信教育部福祉心理学科卒業生 山下 剛

はじめに

 この原稿を書いている現在,私は地域活動支援センターI型と就労継続支援B型の施設で精神保健福祉士として働いています。今思い起こせば,澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】に入学し,精神保健福祉士を取得するまでの道のりは大変険しく,周囲の方々のご協力があったからこそ取得できたものと今は実感しています。これから精神保健福祉士を目指し日々努力している方々に,私が精神保健福祉士を取得するまでの体験と,今だから話せることをお伝えしたいと思います。

きっかけ

 そもそも,私が精神保健福祉士を目指すきっかけとなったのは前職での体験でした。その時,私は地域福祉を推進する機関に勤めていながらも,福祉に関する制度や施策,考え方について無知の素人でした。ある時,私は精神障害を持つ方の親族から,「どうすれば,自宅に引きこもり状態の子どもを外出させることができるか」などの相談を受けました。しかし,地域の実状や精神障害者の社会復帰に対する支援方法や体制(社会資源)について専門的な知識を持っていなかったため,その相談者に対して適切な支援を行うことができず悔しい思いをしました。その体験が精神保健福祉士を目指すきっかけとなったのです。

実習に向けて

 私は,病院から退院した精神障害者や地域社会で暮らす精神障害者に対してどのような生活支援や就労支援を行っているのか,また,どのような悩みや課題を抱えて暮らしているのかなどの実状に理解を深めたく,地域活動支援センターでの実習を希望しました。しかし,地元での実習先が決まらず,悩む日々がありました。相談する知り合いもいないため,市役所や社会福祉協議会などに通う日もありましたが,インターネットで探した地域活動支援センターに実習が決まりました。私の場合,実習先の地域活動支援センターが片道2時間半かかる場所でしたが,その距離を大変と思うことはありませんでした。これから実習先を探す方々も,自分がこの実習を通して何を学びたいのか,何を知りたいのかという目的意識をもって実習先を選んだほうが,意義のある実習になるのではないでしょうか。
 そして,私が地域活動支援センターでの実習を行うにあたって事前に準備したことは,精神障害者が地域社会で生活をしていく上で必要になってくる年金制度や生活保護制度,障害者自立支援制度などの内容を十分に理解していくことでした。事前に準備を行ったためか不安などは特になく,どちらかといえば早く実習を行いたいという気持ちの方が強かったと思います。これから実習を行う方々も精神保健福祉の全ての分野を理解するというよりは,実習先ではどのような知識が必要になってくるのか,どのような知識が求められているのかを事前に把握し,その必要となる分野を十分に理解していくことで実習に対する不安は解消されるのではないかと思います。

実習を通して

 私はそのような準備を踏まえ,地域活動支援センターでの実習でさまざまなことを学びました。それは,精神障害者の方々が地域社会で生活をしていくうえで必要となる地域活動支援センターの視点と精神保健福祉士の姿勢です。地域活動支援センターは精神障害者の方々が地域社会で生活をしていくために,地域にあるさまざまな社会資源と連携を取りながら支援を行っていく中心的な機関であることを学びました。その支援内容にはさまざまなものがあり,障害者手帳や生活保護などの各手続きから地域社会で生活をしていくうえでの悩み相談,生活訓練などのリハビリテーションと多岐にわたっていることでした。また,地域活動支援センターの精神保健福祉士の姿勢として大切なことは,地域で生活をする精神障害者を障害者としてではなく,私たちと同じ地域社会で暮らす「生活者」として見る姿勢だということでした。障害を持ちながら地域社会で暮らすということは,さまざまな制限を受けることになります。しかし,障害を持つ人も私たちと同じように地域社会で生活をし,さまざまな社会活動に参加をする権利を持っているという「生活者」の視点が精神保健福祉士にとって最も大切なものであることをこの実習を通して学びました。
 また,この実習で精神障害者の方々と多く接することができ,私たちと同じ「生活者」として見ることができるようになったと感じます。それまでは,長期入院や薬による影響から,普通の人とは違った特別な雰囲気を持つ人というイメージが強かったと思います。しかし,実習を通して,精神障害者の方々が私を受け入れてくださったことは,私のそれまでの誤った考え方を改める機会にもなりました。
 そして,この実習中に私が大事にしたことは,その日に感じたことや疑問点などはその日のうちに記録に残し,指導者から指導を受けるということでした。実習中は緊張と不安などから心身ともに疲れると思いますが,その時に感じたことや疑問に思ったことを大事にし,相談するということが私たち援助業務を行う者としての基本となるのではないでしょうか。実習を振り返ると,実習はとても楽しく有意義に行えたと思います。また,当事者の皆さんが,これから支援者としてスタートする私の背中を押してくださったと感じています。

精神保健福祉士として

 現在,私は就労継続支援B型の施設で精神保健福祉士として働いていますが,この実習での体験が私の支援者としての基礎になっています。いざ現場に立つと,さまざまな問題や課題が毎日起こり慌しく過ぎていきますが,私が日々支援を行うにあたって心がけていることは,当事者の力を信じ,大事にするということです。当事者に対してどのような働きかけをすれば,その人の力を引き出せるか日々考えながら支援を行っています。このような考え方ができるようになったのも実習での体験のおかげだと私は実感しています。
 最後になりますが,これから精神保健福祉士を目指し日々努力している方々が,私と同じ福祉の現場で活躍することを願っています。そして,私が福祉の現場で働くことが出来るのも,これまでご指導を頂いた先生方と通信教育部の皆様のおかげであります。皆様に感謝を申し上げて,私の体験談といたします。

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