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VOL.48 DECEMBER 2007

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[高齢者福祉論] 社会福祉を通信教育で学んでいる方へ

高齢者福祉論 担当講師 せんだんの館 施設長 中里 仁

 今回は,「高齢者福祉論」の担当教員である中里仁先生にお話を伺いました。中里先生は,在宅サービスであるデイサービスやショートステイと居住サービスである指定介護老人福祉施設とを兼ねる高齢者福祉施設「せんだんの館」の施設長をされています。福祉の実践の場で働く喜びや,高齢者福祉の現状などを踏まえ,通信教育部で社会福祉を学ぶ意味や楽しさについてお話いただきました。

●社会福祉を学ぶ意味と楽しさ

Q:通信教育で現在学んでいる方々へのメッセージをお願いします。

A:私は現在47歳ですが,昨年1年間,通信教育で施設長管理者研修講座を受講しました。また,今も澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】の博士課程で学んでいます。ですから,同じ学ぶ立場にある者として,通信教育の学生さんに対して多くの共感を覚えます。
 大切なのは,興味を持って学びたいと思ったら年令は関係ない,ということです。しかし一方で,自分の夢に向かって学習を実行するには困難も生じます。例えば,休みのやり繰りや,学費の捻出。職場の管理者から了解をとったとしても,同僚とのさまざまな人間関係の中で苦労されることもあるでしょう。ですが,学ぶ気持ちを是非大切にしてください。その苦労を越えたところに,確かな手ごたえがあるはずです。私も,応援しつつ,共に頑張っていきたいと思っています。

Q:社会福祉を学ぶ意味や面白さとは?

A:基本的に,学ぶ(感じ考える)ことで視野?視点の幅が広がり,自分の「引き出し」が増えると思います。そして結果的に,他者とのよりよい人間関係づくりや,利用者などに対するよりよい支援につながると思います。
 また,社会福祉について学ぶということは,「生かせる」知識,すなわち自分自身の日々の生活や地域での生活をより豊かなものにするための知識が得られることであり,結果としてですが,職場でのスキルアップや資格取得につながったりもします。「生きた(生かせる)」学問という点も,面白いという表現が適切かどうか別として,社会福祉を学ぶ醍醐味ですね。

Q:福祉職以外の方へのメッセージをお願いします。

A:学びたいと思う気持ちを大切に持ち続けてください。先ほどもお話ししましたが,組織に属する実践者以外の方であっても,福祉は生活に直結するものです。万一,自分自身や家族,周囲の人が生活上なんらかの困難に直面した場合,福祉を学んだ(学ぶ)ことによって,その対処方法の幅が広がるはずです。

Q:高齢者福祉はなんだか暗いイメージがするのですが。

A:そんなことはありませんよ。高齢者福祉を学ぶ意味はいくつもあると思いますが,自分の周りで支援や介護が必要になった時,その知識や技術を活用できます。また何より,高齢者福祉の基本は,老いや病といった人としての尊厳に関わる根源的な問題について深く感じ考えることなので,自分の今後の人生や生きることの意味について考えることにつながります。これは,とても大切なことだと思うのです。

●高齢者福祉の現場から

Q:実際に現場で高齢者の生活支援をする際に感じるやりがいとはどのようなものですか?

A:抽象的な表現ですが,自分自身の存在意味や役割を実感し,気づかされることが多々あります。質問の答えになっていませんが,やりがいというよりも学ぶことが多いですね。

Q:福祉職につく方は,非常に熱心に取り組むあまり,疲れきってやめてしまう燃え尽き(バーンアウト)の話も耳にします。

A:そうですね。ソーシャルワーカーの場合,相談の内容が複雑でかつ緊急であることが多くあります。そのニーズに対して,自分自身の知識や力量が足りないがゆえに応えられないことや,制度的に提供できるサービスメニューが限定?規制されていて対応できないことが生じ,そうした中で,非常に悩み精神的に疲弊すると言えます。ケアワーカーの場合ですと,不規則勤務に加え,夜間勤務時には20名の利用者をケアワーカー1名で支援するといったことが行われます。このように,精神的にも肉体的にもプレッシャーが大きいのは事実です。バーンアウトしないように,職員体制の充実や精神面での職員に対する心のケアを組織的にどのように行うかが,事業運営上大きな課題のひとつとなっています。

Q:要介護認定者以外の地域のお年寄りの相談も受けるのですか?

A:もちろん,相談は常時お受けしています。相談を持ちかけられるのを待つだけでなく,地域町内会の会合に参加するなどし,子どもからお年寄りまで幅広い地域住民の方々の抱えるさまざまな課題がどこにあるのか,私たちのお手伝いできることや共同してできる(しなくてはならない)ことはどのようなことなのかを,常に念頭に置きながら相談をお受けしています。
 これからの福祉施設は,制度にあるサービスを提供するだけでなく,「地域福祉の推進」機能を持つことが社会的に求められています。

●指定介護老人福祉施設の現場から

Q:指定介護老人福祉施設を利用するにあたって,申し込みが多く利用できないという問題は解消されているのでしょうか?

A:他の施設入居と重複して申し込みをされている方が多いのですが,「せんだんの館」では現在350名の方が申し込みをされています。ただし,それはお年寄りご本人の希望というよりも,介護者であるご家族の選択の結果であると捉えています。ご本人は,自分の家で最後までご家族と共に暮らし続けたいのです。
 では何故,ご本人の願いとは裏腹に,また介護保険制度設立の趣旨とは裏腹に,入居申し込みが増え続けているのか。ホームヘルプや訪問看護,デイサービス,ショートステイなどの在宅福祉サービスも含めて,必要な時に,必要なサービスが,必要なだけ利用できれば,今以上に自宅で暮らし続けられるはずなのです。医療との連携や,それを支える財源の問題,ここに,介護保険制度の大きな課題があるといえるでしょう。
 いずれにせよ,施設入居利用者の増減や待機状況の云々よりも,高齢期,特に何らかの介護が必要となった時の,尊厳ある暮らしをどのように考えるかが澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なことだと思います。

Q:入居された方々の1日はどのようなものですか。

A:利用者の1日は100人いれば100通りですが,基本的には,従来型の集団的流れ作業的なケアではなく,ひとりひとりの入居者の生活パターンやリズムに合わせたケアを提供しています。

●実習生に対して

Q:「社会福祉援助技術現場実習」を行う学生へのメッセージをお願いいたします。

A:すでに福祉,医療,保健の分野で働いている実践者の方にとって,実習は,自分自身の職場や他の関連機関について学びなおす(再考するための)絶好の機会です。実習生という立場を自覚して,実習に臨んでください。また,実践者以外の学生にとっては,教科書すなわち理論でしか知らなかったことについて,実践を通して体験することになります。是非,実習を通じて学びの幅を広げてください。

●ボランティア希望者に対して

Q:最後に,ボランティアを希望する学生へのメッセージをお願いいたします。

A:是非,積極的に参加してください。実習と同じく,ボランティアもまた,理論と実践を結びつける場です。高齢者に限らず,さまざまな状況?状態の方々と日常の一部を共にすることで,多様な価値観や生きる意味を学ぶことができます。

Q:「せんだんの館」では,ボランティアを受け入れておられるのでしょうか?

A:もちろんです。双方のニーズが合致すれば,活動に結びつきます。まずは,事業所に「ボランティア希望」ということで直接お電話ください(電話022-303-0371)。

 お忙しいなか,貴重なメッセージをありがとうございました。

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