With TOP > VOL.38 SEPTEMBER 2006 > 

VOL.38 SEPTEMBER 2006

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【11月科目修了試験のご案内】

【秋期IV?冬期Iスクーリングのご案内】

【通信制大学院コーナー】

【お知らせ】

【卒業と資格?免許状取得のために】

【BOOK GUIDE】

【ひろば】

【ひろば】

投稿

●卒業研究の結果報告とお礼

福祉心理学科 M.K.

 私は,昨年度後期から「自己受容の要因についての研究─達成動機?ソーシャルサポートとの関係を中心として」をテーマに,卒業研究をスタートさせました。精神的な健康の指標とされる,自己受容の要因を明らかにするため,理想自己と現実自己の変化を切り口とし,それぞれの変化には「達成動機」と「ソーシャルサポート」が働いているのではないか,という考えのもと研究を進めました。理想自己に現実自己が近づく自己受容のあり方には,「自己充実的達成動機」が働き,「競争的達成動機」は逆に自己受容を低める要因となっていると仮定しました。また,理想自己がより現実的な自己概念に変化する,という自己受容のあり方を,アイデンティティの確立と結び付けて考察し,そこには澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な対人環境である,「ソーシャルサポート」が働いていると仮定しました。
 仮説の検討のため,澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】通信教育部に在籍する学生を対象に,質問紙調査を行いました。分析を行ったのは,336名(男性99名,女性237名)でした。データをもとに,達成動機と自己受容の関係,ソーシャルサポートと自己受容の関係について検討しました。
 その結果,「自己充実的達成動機」が高い人は,低い人よりも,自己受容が高いのではないか,また,「競争的達成動機」が高い人は低い人よりも,自己受容が低いのではないか,という仮説は,女性で支持されました。男性では,「自己充実的達成動機」と「競争的達成動機」の両方が自己受容を促進する要因になっていました。また,他者からの「ソーシャルサポート」の高い人は,低い人よりも自己受容が高いのではないか,という仮説は,男性,女性共に支持されました。さらに,「ソーシャルサポート」と「自己充実的達成動機」は,それぞれが独立して自己受容に影響を与え,それぞれ働いている領域が異なっていました。このことから,「ソーシャルサポート」と「自己充実的達成動機」は,それぞれ別々の効果をもって自己受容に影響していることがわかりました。
 自己受容とは一般に「自己のありようをそのまま受け入れること」とされています。しかし,本研究の結論として,自己受容には,他者からのソーシャルサポートを得て自己のありようをそのまま受け入れていく「受動的な側面」だけでなく,自ら達成動機を働かせることによって,自己のありようをより充実したものとして受け入れようとする「能動的な側面」があるということがわかりました。よって,自己受容を促進する援助を考える際には,個々人の状態によって,2つの側面へのアプローチを考え合わせる必要があると考えます。
 本研究においての問題点は2つあったと考えます。まず,データの数と質の問題です。特に,ソーシャルサポートのサポート源が全て揃っている被験者数が,男性35名,女性72名と少なかったことです。また,被験者が通信教育部に在籍し,学習する意欲の強い人の集まりであったことから,調査が,特徴のある集団に行った可能性があるということです。これらのことから,今回の結果を一般化するにはまだ不十分であると言わざるをえません。今後,さらに幅広い対象を得て,結果を一般化することが課題であると考えます。次に,本研究では自己受容の要因を明らかにするため,理想自己と現実自己の変化を切り口としました。しかしそれらはあくまでも操作的に用いた概念であり,本研究では達成動機,ソーシャルサポートとの直接的な関連性を結論付けることはできませんでした。また,アイデンティティ確立とソーシャルサポートの関係についても,直接的な関連性を結論付けることはできませんでした。今後,それらの関連性を結論付けられる研究方法を検討していくことが課題であると考えます。
 研究の過程は平坦なものではありませんでしたが,何かが明らかになる事のおもしろさと,明らかになったことの意味を考える難しさを経験することができました。途中,論文を完成させることができるのか不安になることもありましたが,たくさんの方に支えられて,なんとか完成まで漕ぎ着けることができたと思っております。
 最後にお世話になった方々へのお礼を述べさせていただきたいと思います。卒業論文の作成にあたり,問いを尊重してご指導くださいました皆川州正先生に心から感謝申しあげます。また,調査の実施にあたりご協力下さいました,小松紘先生,渡部純夫先生,後藤美恵子先生,八巻幹夫先生,分析についてご指導下さいました中村修先生,さまざまな連絡?調整にご尽力下さいました通信教育部の職員の皆様,通信教育で卒業研究をする道しるべを示して下さった先輩の古崎幸さんに,深く感謝申しあげます。また,質問紙にご回答下さいました皆様に厚く御礼申しあげます。ありがとうございました。

1つ前のページへこのページの先頭へ