2018/12/08 保育士?幼稚園課程

TFU教育フォーラム2018 (幼保コース版)PARTⅠ 第2部

第2部では環境プロジェクトによる、「『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)』を捉えるには」と題した実践研究報告の発表及びワークが行われました。 
まず初めに、環境プロジェクトの基本的事項の概説として、「環境プロジェクト 保育における『環境』への視座を養うためのアクティブ?ラーニング」と題して、教育学科4年の小岩芽衣さんからお話ししていただきました。ここでは、環境プロジェクトの簡単な紹介、そして第2部では、なぜ10の姿を取り上げるのか、その経緯の説明がありました。
平成30年4月1日に、新しい幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育?保育要領が施行されました。10の姿の個々の項目は特別新しい、というものではなく、5領域の内容を具体化し子どもの姿をより捉えやすくしたものです。今回の改訂で非常に澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なポイントとなっています。保育者養成課程の学生として保育を学んでいく上でも、保育者として現場で保育を営んでいく上でも、10の姿について視点の習得を図ることは、とても大事な取り組みであると環境プロジェクトの皆さんは考えていました。
 
次に、教育学科4年の高月 美樹さん、千葉 萌々子さん、そして社会福祉学科4年の菅原 優友さんによって、『10の姿』についての概説が行われました。10の姿は、3つの資質?能力を、保育内容の5領域を通して具体的にどのように育っていくのかの方向性を幼児期の終わりの頃の子どもの様子に即して示したものです。3つの資質?能力と5領域に関しては、第1部の記事に詳しく記載しておりますので、ご覧ください。それでは10の姿について詳しく説明していきます。
①健康な心と体…「嬉しいと笑顔になる」、「感動して涙が出る」など、心は体に影響を及ぼし、体は心に影響を与えて、互いに影響し合っています。そして、やりたいことに主体的?意欲的に取り組む心や、やりたいことを実現するために動く体、体を動かして実行する活動は、子どもに楽しさや面白さ、充実感をもたらします。
②自立心…子どもは、友達の助けを借りたりしながら粘り強くやり遂げようとする過程の中で、達成感や充実感を体験していきます。粘り強く取り組み、できるようになったことによって諦めずに最後までやり遂げるように培われた力を「自立心」と言います。
③協同性…共通の目的が実現する喜びを味わう経験を通して、友達と協力することの楽しさや面白さ、つまり充実感を味わうことで培われる力を「協同性」と言います。
④道徳性?規範意識の芽生え…周囲の大人や友だちを思いやる気持ちが道徳性や規範意識の芽生えに繋がっていきます。幼児期において大切なのは、決まりを守ることができることではなく、守ろうとする気持ちや意欲を育てていくことです。
⑤社会生活との関わり…地域の人との関わりが社会生活との関りとも言えます。幼児は限られた人間関係のなかで、生活しており、自分の伝えたいことを汲み取ってもらえることが多いです。しかし、限られた人だけではなく、地域の方々と交流する機会をつくることは子どもの人間関係の広がりに繋がります。地域の人と触れ合う中で、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになり、人との様々な関わり方に気が付いていきます。
⑥思考力の芽生え…子どもは、失敗を経験しながらも、どうすれば自分のイメージしたことを実現できるのかを考え、そのための見通しや計画をもちながら取り組みます。また、友達の考えにも触発されながら、考え、工夫する姿も見られます。様々な素材の材料に触れ、物の性質や仕組み、法則性に気付く経験や、結果を予測しながら試したり、考えたりする経験が思考力の芽生えに繋がっていきます。
⑦自然との関わり?生命尊重…心が動かされたり、友達と感動を共有する経験を重ねていく中で、命あるものに対して親しみを感じたり、生命を大切にする気持ちが育っていくと考えられます。
⑧数量や図形、標識や文字などへの関心?感覚…幼児教育で澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのは、数の感覚や文字感覚をどのように育てるかです。例えばはかりを使って二つの物の重さを比較する際、正確な重さを知る事より、針の動きを見て、重さや大きさの感覚に触れることが大切です。
⑨言葉による伝え合い…5歳児後半になると、相手の話を注意して聞いて理解するようにもなり、自分の思いや考えをまとめ、相手の分かるように工夫しながら話すようになってきます。また、伝える相手や状況に応じて、言葉の使い方や表情を変えたり、話し方を工夫したりするようにもなってきます。
⑩豊かな感性と表現…様々な出会いや体験を通して、沢山の喜びや感動、驚きなどを味わうことで感性は豊かになります。そして、喜びや感動?驚きなど感じたこと?味わったことを表現したいと思うようになっていきます。自分が感じたことを、自分なりに表現することを子どもが心から楽しみ、集中して主体的に表現活動を楽しむことができると考えます。

10の姿の説明のあとは、日常の保育現場でよくみられる遊びの場面の一例を挙げ、そこから10の姿を当てはめていきました。その当てはまる数から、普段の遊びの姿には沢山の10の姿が含まれていることが改めて分かりましたね。
これほど日常に多く潜む10の姿が保育実践でどういかされているのかが、さらに次の発表で明らかにされました。
 
続いて、実際に保育現場でどのように10の姿が取り入れられているかを、教育学科4年の安田早苗さんによって、「向山こども園での10の姿を用いた取り組み」と題して発表していただきました。今回の環境プロジェクトのインタビューにご協力くださったのは、学校法人仙台こひつじ学園 認定向山こども園です。向山こども園では、まず10の姿を用いて日々の子ども達の様子を記録し、3~5歳児のエピソードを10の姿に結びつけようとしました。しかし、実際に結びつけようとすると難しく、おおむね3,4歳児では、10の姿に至るまでの前段階があるのではないかという考えが出てきたそうです。そこで主任級の保育者の方々で話し合いが行われ、カリキュラムを基に、5歳に至るまでの育ってほしい姿のプロセスを考え、10の姿につながる年齢別の姿を作りました。また、1~4歳児に見られることを考えていく内に、年齢別の姿の項目の数は10~15項目になりました。数が10を超えるところから低年齢になると、丁寧な関わりが特に大切であることにも、改めて気づいたそうです。このような10の姿の捉え方、10の姿や先ほどの年齢別の姿の項目等を用いた記録方法、研修体制等の取り組みを通して、成長の見通しを意識した援助、かかわりができるようになったそうです。また、子どもの姿を捉える上での論点が整理され、先生方が自分の保育を振り返る時、自分の保育を見る視点が見やすくなったという変化があったそうです。

そして、「10の姿」の視点の習得を図ることを目的としたワークを行いました。実際の事例から保育者や子どもの表情や言動を抜き出し、子どもの育ちのポイントを短い文章でまとめます。この時間はその育ちのポイントと、関連するであろう10の姿を結びつけて子どもの育ちを読み取りました。今回は3つの事例を使い、この部分からこの姿に結びつくのではないか等をグループで話し合っていきました。話し合った後は、事例ごとに学生から代表して1グループ、来賓の方々から代表して1名考えを発表していただきました。発表を聞き、自分たちの考えと比較を行い、また新たな視点で学びを深めることができました。
 
最後に、Learning Pyramid(ラーニングピラミッド)についてのお話がありました。ラーニングピラミッドとは、アメリカ国立訓練研究所の研究成果で、平均学習定着率を示す図となっています。ピラミッドの上から定着率の低い学習方法として、「講義を受ける」、「資料や書籍を読む」、「ビデオや音声等による学習」、「実演を見る」、「他者と議論する」、「実践による経験、練習」、「他者に学んだことを教える」が挙げられています。環境プロジェクトの皆さんにとって、今回の発表は「他者に学んだことを教える」という部分に当てはまりますね。参加者の皆さんにとっては、「講義を受ける」、「他者と議論する」という部分に当てはまるのではないでしょうか。さらに今回の学びを定着させるには、ボランティア等の実践の場に積極的に出て実践に移すとよいのではないでしょうか。

今回のご講評は、TFU保育士?幼稚園課程の平成25年度卒業生、そして現在株式会社バトンでご活躍されている、岸本唯さんからいただきました。
 
今回のTFU教育フォーラム2018 PartⅠでは、「主体的?対話的で深い学び」、つまりアクティブラーニングをテーマとし、事例の中の子どもだけでなく、今回のフォーラムの参加者も主体的に、そして対話的に深い学びを行うことができたのではないでしょうか。
来週15日のPartⅡではより深い学びを行い、自分の中にある保育に対する考えを見つめなおす機会にしていきましょう。

記事担当者:上小路蓮