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VOL.47 NOVEMBER 2007

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[福祉心理学] 教科書を読もう(その1)

 送られた教科書,ほったらかしになっていませんか。ここでは,履修登録している方が一番多い科目である「福祉心理学」の現在の教科書『福祉の時代の心理学』を読んでいき,個人的にポイントと思ったことをあげてみます。
 まずは教科書を開くきっかけとしてください。また,レポート課題1単位め「心理学的視点からの人間理解」に取り組む一助としてください。

●1章 福祉心理学試論

POINT1
  心理学が「行動」と「心(頭)のなかで考えたり感じたりしていること」を扱うこと(p.2)。とくに,外にあらわれた「行動」から「見えない心」の状態を理解しようとすること。
POINT2
  科学的に人間を理解しようとするのが心理学であること。「科学的」とは考え出すとよくわからない言葉ですが,とりあえず実験?面接?観察?質問紙など心理学で「科学的」と認められている「研究法」によって得られた「データ」によって,人間の心を理解しようとすることとしてみてください(p.2?4)。
POINT3
  「福祉心理学は,深い人間理解に基づき,well-being(幸福?健康)の実現に向けて,対人援助を行うことを目指す」(p.6)。心理学的に得た人間理解をどういうふうに役立ていくのかがp.6?8に書かれています。

 p.2?3心理学の目標は「行動の記述?理解?予測?制御」,p.4?6研究法のくわしい内容(たとえば「相関研究」)も大切ですが,難しく感じる人はとばしてもよいと思います。

●2章 認知:環境をどう理解しているか

POINT1
 「認知」というのは,頭のなかで起こっている「知る?わかる」働きであることを理解してください。見たり聞いたり味わったり触ったりにおったりする「知覚」や「感覚」の働き,「記憶」や「理解」や「イメージ」の働き,そして考えることなどです。なお,頭のなかで起こっている感情的な内容については,4章「情動と動機づけ」で学びます。
POINT2
 「知覚」では,人間が外の世界を「正確に」見たり聞いたりしているわけではないことを学んでください。p.13気になる人の声はよく聞こえるのも「図と地」の働き,p.14○が続いているだけなのに近くのものがまとまってみえるなど「群化」の働き,p.16?17の「文脈効果」などは,人間が勝手に外の世界を解釈して見ている例で,わかりやすいと思います。「まちがえる人間?完全でない人間」という理解は,とても大切です。
POINT3
 何か赤いものがあるときにそれが赤いバラであるとわかっていくのが「ボトムアップ処理」(これはp.15の「パターン認識」や「記憶」も関わってきます),英語が書いてあると思えば多少の汚い字でもABCに見えるのが「文脈効果」で「トップダウン処理」です。印刷物に多少の誤植をつくってしまっても意外に気づかずに読んでもらえたりするのは「トップダウン処理」のおかげかもしれません。
POINT4
 目の網膜は平面なのに,また平面的な絵でも,立体的に見える理由を説明できますか? p.14の「立体視」のところに書かれた両眼視差や陰影の効果だけでなく,世界は立体的だという「知覚学習」(p.15)やその結果を受けた「トップダウン処理」をするからという説明もできるでしょう。
POINT5
 p.19?21の感覚記憶,短期記憶,長期記憶,作動記憶などの分け方やp.21図2-9記憶の分類は大切です。認知症の人は短期記憶から長期記憶に転送される過程や長期記憶の一部がおかしくなっているのでしょうか。
 p.22?想起は,自分が思い出す場面を考えながら読んでみてください。
POINT6
 p.25の「スキーマ」という考え方は,「○○とはこういうものだ」というものを見るときの枠組みのことです。人間の頭のなかを説明するのに,これはとても大切な考え方です。マクドナルドに行けば先に注文,あるレストランに行けばあいている席をさがして自分で座ってから注文,あるレストランでは店員の指示を待つなども,「マクドナルドの注文についてのスキーマ」をもっているからできるのです。勉強も頭の中にいろいろな「スキーマ」をつくっていくことです。この「スキーマ」は偏見や差別の原因になることもあります。

 3章?4章は難しいコトバがたくさん出てきそうなので,次は「性格」のことが書かれた5章にとんでみます。

●5章 パーソナリティ:性格の違いと心の健康

POINT1
 p.74?80性格をどういうふうに考えていくか,類型論,特性論,状況主義を理解してみましょう。特性論だけでもいろんな考え方があり,性格をどういうふうにとらえるかは,心理学者の間でもいろいろだということがよくわかります。この章の著者の考え方も読み取ってみてください。
POINT2
 大らかで楽天的な性格,神経質な性格というように性格をいくつかのタイプに分けるのが類型論です。p.74のクレッチメルの体型による性格分けや血液型性格タイプは,科学的心理学では一般には否定されています。p.88のユングの8類型で,あなたのまわりの人はすべて当てはまりますか?下記の「ビッグファイブ論」で得られた5つの特性が非常にある?ややある?なしをもとに人間を非常に細かくタイプ分けしていけば「類型論」は成り立つかもしれませんが,35=243通りの類型なんて直感的な理解がちょっと難しいかも。著者のいうように,特性論は病的な性格,際立った性格の理解のみに利用できるのでしょうか。
POINT3
 たとえばp.78?79にあるように「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」の5つの「特性」(くわしくは表5-2を読んでください;ビッグファイブとも呼ばれています)がそれぞれどの程度なのかで人間の性格を理解しようとするのが特性論です。特性はいったいいくつにまとめられるのでしょうか(キャッテルは16,「心理学研究法II」でやるY-G性格検査では12,最近の心理学ではビッグファイブの5つが流行ですが……)。いろんな説があるけど,どれも完全ではないようです。
POINT4
 状況主義 人間の行動はそれまでの経験を通じて身に付けた(=3章の「学習」)ものが状況によって現れるだけで,性格よりも状況の方が行動を決めているのではないかという考え方。でも性格の影響も無視できないので,著者が書いているように「ある状況でこういう性格の人はこういう行動をする」というような場合分け的な考え方をするのがよいように感じます。
POINT5
 p.80?83は性格は遺伝で決まる面もあるし,環境で決まる面もある,という話。そもそも性格は変わるものなので,遺伝ですべて決まるわけではないし,でも変わりにくい部分を「気質」と呼び,そういう面は確かにあるかもとか考えさせられます。心理学概論の教科書(『図説現代心理学入門』)三訂版p.37図2-1も見てみてください。
POINT6
 p.84?89フロイトとユングが「適応?不適応」をどういうふうにとらえていたのかは「福祉心理学」で使える内容です。
POINT7
 p.90?97ロジャーズとパールズは難しいですね。すべてを理解しなくてもいいと思いますが,2章で出てきた「図と地」を転換させられること=ものの見方を変えることができる(p.94?)と悩んだりしている人も救われるかもというのも「福祉心理学」で使える考え方です。なお,パールズの考え方は「臨床心理学」の教科書(『臨床心理学への招待』)を持っている人はp.153?の「ゲシュタルトセラピー」の箇所を読むと理解しやすいです。

 駆け足で読んできましたが,関心のある部分は是非他の心理学の本などで調べてみてください。教科書も同じところを3回ぐらいは読んでみてください。心理学をできるだけ楽しんでいただきながら,理解できた部分をひろげレポートをまとめてみることをおすすめします。

(通信教育事務部 古藤隆浩)

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