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VOL.27 MAY 2005

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【通信制大学院コーナー】

平成16年度通信制大学院修了者からのメッセージ

福祉大前まで220円
福祉心理学専攻 Y.K.

 この表題は,大学院での唯一のスクーリングの初日の出来事から付けたものです。仙台駅からバスに乗り福祉大の前で降りたのですが,高額紙幣の両替ができないことを知らずに精算機の前で困っている私の後ろから,黙って220円を支払ってくれた人がいました。
 その方は,学部の通信教育で社会福祉を専攻しているという方でした。私は福祉大の大学院に人を助ける行動を研究したくて入学したので,登校初日から見知らぬ人に助けていただき,研究への意欲がわきました。
 その後,簡単な自己紹介をして,『今度会ったらアドレスを交換しましょう。』ということになったのですが,結局お会いすることができませんでした。順調に学習されていれば今年の春で4年生のはずですから,がんばって卒業し,社会福祉士の資格を取得していただきたいと思います。また,この方の親切にこの場を借りて感謝をさせていただきたいと思います。

 修士論文の論題は「向社会的行動抑制要因の変化──中学生と高校生とを比較して」というものです。入学前から,「人はいつもは他者を助けることができるのに,なぜ,時として援助を抑制してしまうのだろうか。」という問題意識を持っていたので,入学時に提出した研究計画書から一貫したテーマで研究ができたことは,意義深いことでした。
 人が人を助ける「向社会的行動(思いやり行動)」とは,最近の研究では人生のごく初期の段階から観察されるといわれています。しかし,学校における状況を見た時,学生たちはなぜ思いやり行動をすることができるにもかかわらず,いじめの現場に遭遇した時,助けなくなってしまうのかという疑問が生じます。
 このように,援助が必要なことを知り,できれば援助したいと思っている人が,何らかの要因により援助を躊躇したり回避してしまうことを,「抑制」と定義し,研究の中心的な論題にしました。
 イギリスとアメリカの先行研究を元に,(1)「向社会的行動は,個人差はあるとしても,年齢により変化する。」。(2)「中学生が高校生より有意に向社会的行動を抑制する。」(3)「向社会的行動の意識レヴェル,行動量などは女子が男子より有意に高く,抑制要因にも性差がある。(4)「中学生と高校生の抑制要因は異なり,中学生は社会的恥ずかしさから向社会的行動を抑制するのに対し,高校生は他者への配慮から抑制する。」。という仮説を立て,中学2年生と高校2年生469人を被験者として,調査をしました。
 調査結果を分散分析した結果,仮説(1)は支持されました。仮説(2)では,中学生は高校生より援助が少ないが,それは仮説(1)で明らかなように発達差が関係しているため,一概に抑制しているとは言えないことが分かりました。仮説(3)の性差は,向社会的行動の意識レヴェル,実際の行動量は女子が男子に比べ有意に高く,抑制要因にも違いがありました。仮説(4)は,年齢によるはっきりとした抑制要因の違いを見いだせませんでした。
 指導教授の木村進先生と口述試験時の副査の小松紘先生からは,先行研究の調査をしっかりしていて,内容はしっかりしていると評価していただきましたが,この研究の中心である「抑制」という概念をしっかり数量化できていないという評価をいただきました。
 つまり,中学生の援助得点を5点とし,高校生を7点とした時,「中学生は高校生より得点が少ないのでそれは抑制です。」と結論づけていることが,この研究の最大の限界ということです。被験者の中学生の得点は5点ですが,もっとほかの中学生を調査した時,援助得点が4.5点だったとしたら,被験者は中学生としては,抑制ではなく援助を促進している人たちということになります。
 また,中学生と高校生の抑制要因の明確な違いを明らかにできなかったため,もう少し被験者に条件を付して細かく分類し,分析する必要があるという指摘もいただきました。
 修士論文を書いてみて,この研究は日本においてはほとんど研究されていない領域なため,抑制要因の違いを研究する前に,もっと日本の中学生と高校生を対象に基礎的な研究をした上で,抑制要因を研究する必要があったように思います。

 現在,大学で卒業論文を必修にするのではなく,選択にする大学が増えているようです。東北福祉大もそうだと聞いています。しかし,何かを研究するということは,自己満足することではありません。日頃皆さんを指導してくださる先生方は,数多くの研究論文に接しているので,適切な指導をしてくださいます。こうした機会は滅多にないことなので,ぜひ,先生方の指導の下,論文を書くということに挑戦していただきたいと思います。

 最後に,指導していただいた木村進先生をはじめとする諸先生方,事務室の青柳課長,最後まで院生だと分からなかった関戸さん,そして何よりも献身的に院生たちを励ましてくださった菅野さんに心からの感謝をさせていただきたいと思います。特に,院生の多くが,菅野さんの励ましで修了を迎えることができたと思っているでしょう。私はそう思っています。
 また,私の研究の協力してくださった各学校関係者,理解を示して励ましてくれた職場の同僚,そして家族にも併せて感謝したいと思います。

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