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VOL.27 MAY 2005

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【新入生に向けて】

[歓迎のことば] リベラル?アーツの大切さ

総合福祉学部 学部長
通信教育部 部長
大学院総合福祉学研究科 研究科長

渡辺 信英

 4月は大学にとって出会いの季節です。私たち教職員も,新しく入学した学生との出会いが楽しみであり,緊張もします。また,この時期になると,私のなかで,かつての自分が活性化して,何十年前かを断片的ですが思い出します。「自分の経験から学生に一つだけ大切な言葉を」といった難しいことを考えるのもこの入学期です。
 さて,学ぶ者にとって大切なことは,たくさんあります。(1)知はつながっていること,(2)世界は多様?多元で構成されていること,(3)人間はメンタルで多様な存在であること,(4)五感と現実との関わりによって感性が磨かれること,(5)世界の広がりや変化に柔軟な思考をもつこと,(6)チームで学びを創ること──まだまだありますが,どれか一つとなると,単純な選択ですが「知をアウトプットする能力」でしょうか。

 「知をアウトプットする能力」つまり「表現する能力」──この能力を養うことが大学における学習の大きな目的であると思います。
 アウトプットするために知をインプットつまり知を集積しなければなりません。知性と感性をいっぱいに開いて知をインプットするのです。インプットしただけでは,その知は大学においてはなんら役にたたず,アウトプットすることが求められます。
 表現するために学ぶのです。いろいろな表現方法がありますが,最も澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのは文章による表現です。知をアウトプットするための能力を身につけるには十分な時間と訓練が必要です。

 少しそれますが,生物学の世界において,ヘッケルの造語ですが,「個体発生」と「系統発生」という言葉があります。個体発生(受精卵が成体になる過程)は系統発生(生物における形態の進化)を繰り返す,らしいのです。つまり人間という成体になるまで細胞分裂を繰り返し,ミジンコ(微塵子),魚類,両生類などの過程があるというのです。
 変なたとえになりましたが,文章の表現能力も,最初はミジンコ程度で,訓練を重ね,一つの芯つまり背骨ができ,ついには成体といえる表現能力が備わっていくのです。

 通信教育部で学ぶ学生はまず「法の基礎」「福祉と経済」「文学入門」などの教養科目(共通基礎科目)を学びますが,それは専門科目と同様に,あるいはそれ以上に大切です。専門知は対象を分析?還元し客観的にとらえます。そのことは,ともすれば,全体的文脈をとらえられず,価値観?人間観をも軽視するようにみえる場面もありえます。そのような専門知を補い,厚く,深くする作用が教養科目にあるといえます。中世においては,自由七科(文法?論理学?修辞学?算数?幾何学?天文学?音楽)として学問の必須であったリベラル?アーツ(自由学芸)は,現在も総合的教養知として澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】なのです。
 専門知とリベラル?アーツを同時にインプットすることで,アウトプットがより豊かになるでしょう。そして,ウイッタカーの「ソーシアル?トリートメント」やジャーメインの「生態学的視座」に近づき,ユングの「元型心像」「集合的無意識」にふれ,さらにボームのホログラフィックなパラダイムの世界に興味が湧くなど,さまざまな学問のものの見方に接することができるかもしれません。

 専門知を文章などでアウトプットする場合,教養知は要素と全体,専門知と日常知を媒介することがありえます。また専門知と教養知の統合は表現能力に知のダイナミズムや創造的イメージをもたらすのです。
 少し難しくなってきました。こんな理解しにくい文章は,ミジンコか,あるいはせいぜい魚類ぐらいでしょうね。
 通信教育の扉を開いた皆さん,まずレポートをどんどん提出することで,自らの表現能力を鍛えてください。

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