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VOL.27 MAY 2005

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平成16年度通信制大学院修了者からのメッセージ

価値あるものとしての“苦悶の日々”
社会福祉学専攻 M.K.

 修士論文の内容も若干紹介しつつ,修士論文の作成にあたって,並びに在学中に印象に残ったこと,苦労したことなどを述べたい。ご参照頂ければ幸いである。

<入学時の決意>
 入学式,そしてオリエンテーションに出席し,“定員枠”を越えた同期生の数の多さに正直,驚いた。その驚き,及び大学院で学究生活を送ることの不安を抱きながらも,私は2つの目標を立てた。第1の目標は,1年目に修了必要単位数の30単位を自分の納得のいく結果ですべて修得すること。第2の目標は,学会誌?研究誌に発表でき得るレベルの修士論文を作成することであった。高まる不安と緊張の中で“ただ大学院を修了するだけでは意味がない”と自らを奮い立たせるべく,言い聞かした。

<1年次?研究?演習科目の履修とレポートの作成?>
 私は,最終的に精神保健領域の6科目,並びに,社会福祉学特講?演習,社会福祉援助技術研究?演習の計10科目を履修した。レポートはあくまでも「論文」であると位置づけ,テキストだけでは不十分であることは明らかであるので,平均して20数冊の書籍,20数本の論文の内容をチェックして取り組んだ。スクーリングの事前課題や修士論文の構想レジュメ?計画もあり,予定通りには進まなかった。
 スクーリングは15日間すべて出席できたが,先生方の教えと生き様と直に触れ合うことができ,また,様々な生活背景を有する仲間たちと知り合うことができ,実に楽しく,有意義であった。社会福祉学専攻の同期生43名中,19名,及び,1期生の方4名の方々と親交を深めることができた。仲間の存在は一貫して支えとなった。
 結果的に第1の目標ついては,何とかクリアすることができた。レポートに記された先生方からのコメントによって,少しずつ自信をもつことができていった。修士論文を踏まえた上での履修科目の選定をすることが,連携?積み重ねとなって有効であると感じた。

<2年次?修士論文の作成?>
 修士論文の作成については,最後の最後まで苦しかった。私のテーマは「当事者のナラティヴを重視したソーシャルワーク実践の意義?心的外傷?喪失体験等を有する当事者の事例から?」と題するものであった(主査は遠藤克子教授,副査は田中治和教授)。
 研究目的は2つあった。第1は,当事者のナラティヴを重視したソーシャルワーク実践の有効性を,「社会構成主義に基づくナラティヴ?モデル」を援用して考察すること。第2は,そのことを踏まえて,当事者の「主体的な意味」の生成過程を尊重する上で必要とされる援助専門職の果たし得る役割と課題について,援助専門職の有する専門性の中身と援助関係のあり方を考察することを通して提示することであった。
 遠藤先生に指導を求める院生が多かったので,先生の専門領域のみならず,そのソーシャルワークに対する“志”のあり様に惚れ込んだ私は,何がなんでも先生のご指導をお願いしたいと思い,遠藤先生が今までに書かれた論文のうち入手できるものをすべて集め,読み,その感想を送り,必死にお願いした。
 作成に際しては,以下の点に留意した。文部科学省の答申を引き合いに出すまでもなく,近年,大学院教育に求められている役割が多様化し,修士の研究の意味も拡張されてきている。そうとは言え,修士論文が「学術論文」としてのレベルを要することには変わりはない。よって,本研究に臨むに際しては,自らの研究領域の先行研究や定説をしっかりと踏まえ,なお且つ,そこに新しいオリジナルな知見を加える(貢献する)ことが,「学術論文」と呼ばれるものの基本であると認識した上で取り組むことを心がけた。しかし,結果的にはそのレベルに達することはできなかったと自戒している。

<後に続く仲間たちへ>
 私は独立型社会福祉士事務所を中核とした相談室を主宰しながらの大学院生活を送った。“その時に自分の中にあるものしか書けない”との言葉があるように,自らが有してきた実践とそこから培ってきたはずの知見の未熟さと,論文執筆能力の無力さに愕然とし,希望を失いそうになったことは数えきれない。
 その時に私は日々,出会っている当事者の方々のことを思い浮かべ,“何のために大学院に入ったのか”自らの初心を思い出し,奮い立たせた。もちろん,その陰には私を支えてくれた家族,仲間たち,そして,菅野陽子さんをはじめとする事務室の方々がいらしたことは言うまでもない。心から感謝している。
 2年間を振り返り,自分の人生の中で,これほどまでに苦しみ抜いた日々はなかったと思う。その一方で,研究?教育と実践?現場との乖離問題が論議されている中で,研究者や援助専門職による研究の“主人公”が誰であるのか,といった課題については再認識することができたと思っている。その「苦悶の体験」と「明らかとなった今後の課題」を大学院生活の“財産”として,新たなスタートをきりたいと思っている。
 最後に,現在,皆さんが苦悶している日々が確実に「修了の日」に繋がっていっている“価値ある日々”であることを,私は確信し,声援を送りたい。

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