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VOL.25 JANUARY 2005

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[関連施設紹介] 介護現場における専門性とは《その4》

医療法人社団東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘 副施設長
土井 勝幸

◆1 はじめに

 「介護現場における専門性とは」と題し,看護職?介護職?リハビリテーション職?歯科衛生士の専門性について連載をしてきましたが,今号では支援相談員と介護支援専門員の当施設における役割について述べてみたいと思います。
 この職種は現場において直接的に利用者の方々の生活に関わりを持っているわけではないのですが,施設と利用者,家族,地域との連携を機能させる上で澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】な役割を担う職種であります。この連携が機能しなければ,施設はケアの質でも運営面においてもその役割を果たすことができなくなってしまいます。
 では,どのような役割を持ち,そしてその役割をどのように機能させているのかをご紹介いたします。

◆2 支援相談員の役割について

 介護老人保健施設における支援相談員の役割とは,施設利用の際の“ガイド役”と言えるでしょうか。利用者ご本人や家族が施設の利用を希望する際に,直接の相談であったり,居宅支援事業所のケアマネージャーからの紹介,友人?知人の紹介等,さまざまなルートを通じて相談に訪れます。ある程度の知識をお持ちの方,全く予備知識のない方,介護施設のリピーターで利用法を熟知している方などさまざまは背景を持っています。いずれにしても,せんだんの丘に足を踏み入れた時に,一番最初に“施設の顔”として対面することになるのが支援相談員になります。

1)“施設の顔”として……
 この“施設の顔”はある種の二面性を持つ必要があります。困っているからこそ相談に来ているわけなので,誠心誠意,傾聴?共感し援助技術を駆使しながら,できる限りを尽くして手を差し伸べようと努力をします。その反面,施設の固有の事情,制度の矛盾等も含め,さまざまな状況を踏まえ,思いとは裏腹に現実的な対応をしなければならない時もあります。また,施設をご利用いただくことが決まっても,集団生活にはさまざまな制約もあり,思い通りの生活の保障が出来ない現実をご理解いただくことや,受け入れ側の現場職員のさまざまな事情にも考慮しながら,調整を進めなければなりません。
 要するに,援助技術の知識や技術を駆使できる能力,制度の仕組み,利用法に精通しているだけではなく,利用者本人,家族,施設等の個別の事情に配慮しながら,さらには,地域性等にも配慮しながら,バランスよく調整する能力が求められるのです。どれか,一つが欠けても不平不満の種となり,利用者の方の生活環境を不安定なものとしてしまうことになるでしょう。
 少なくとも,当施設の相談員はそれができる人材であるから支援相談員の任に当たっているのです。

2)“施設運営”の要として……
 運営面では,「入所稼働率を高い数値で廻さなければならない!」と管理者より言われたとします。窓口である以上,相談員はこのノルマをこなすことが前提でベッドマネージメントを行わなければなりません。このノルマを達成させるには,利用者本人や家族の困った顔を思い浮かべて感情に流される仕事をしていては不可能となってしまいます。明日は我が身と理解はしていても,心を鬼にして,ベッドマネージメントをしなければなりません。加えて,施設内職員の病欠,退職などにより欠員が生じた場合,現場からは入退所の調整を相談員に申し出ることがあるかもしれません。それらの申し出にもいちいち耳を傾けていると,やはり稼働率は低下してしまいます。相談員がベッドマネージメントをミスすると途端に施設の収入は減少し,結果的にはケアの質を落としかねない事態を招いてしまうのです。
 私は5年間管理職として支援相談員の仕事を横で見てきましたが,誰よりも苦しみ,傷付くことがその仕事の生業のような気がしてなりません。しかし,それを仕事として機能させることもまた,支援相談員の役割なのです。

◆3 介護支援専門員(施設内)の役割について

 支援相談員が施設の顔としての“ガイド役”を務めるのであれば,介護支援専門員は施設内生活の“コーディネーター役”と言えるのではないでしょうか。制度上の役割としては,施設サービス計画書(ケアプラン)の立案を主な主業務とします。この計画書は入所者が自立した日常生活もしくは家庭での生活を可能にするために必要な支援や解決すべき課題を把握するものになります。そのためには,利用者本人はもちろん家族からも情報を収集すべく,面会を頻度多く持つ必然性が生じます。しかしながら,生活を介護者として直接支援することが役割ではないため,日常生活全般においてできること,できないこと等実際の生活場面における能力の見極めに正確さを欠く傾向にあります。それを補うためにはさまざまな職種から,明確なアセスメントに基づく情報が正確に介護支援専門員に集まってこなければなりません。しかし,これらの情報は受けて側の解釈に違いにより,微妙なニュアンスのずれを生じさせることも少なくないのです。

1)“生きた情報”とは……
 そこで,今回の連載でテーマの一つとして掲げてきた“場面の共有化”が意味を持ってくるのです。せんだんの丘ではこれらの情報を“生きた情報”とするために,あえて介護支援専門員の手による計画書の作成という手順を踏まないこととしました。すべての業務を共有する環境で介護?看護?リハビリ職員などの生活支援者が直接話し合いながら作成し,その場に介護支援専門員が同席することによって,生の生きた情報から作り出される計画書の,文字にだけでは表しきれない生活の重みを理解するように務めています。そこには,家族の思いや,職員には言い難かった利用者の思いなどを生活の場面と切り離した面接の場で得た情報を加味させていくことで,皆の思いのこもった計画書が作成されることになると考えています。この取組みの継続は,家族に対する計画書の提示の際に大きな意味を持つことになるのです。見てもいない生活場面をさもわかっているかのように説明をしなければならない場面を想像してみてください。聞いただけの話ほど,現実とはずれが生じやすいものです。それをさらに言葉で補おうとするために,お互いに誤解を生む結果を生んでしまうのです。それが場面の共有を前提とすることで,生きた情報の共有につながり,より現実的な目標が明確になり,本人や家族,そして現場職員との信頼関係の構築につながるのです。

2)“生きた情報”の管理者として……
 せんだんの丘における介護支援専門員の役割とは,フリーであることのメリットを最大限に生かし,直接的な支援者である現場職員と場面や時間を主体的に共有することが最も大切な役割となるのです。それがなしえて,初めて“生きた情報”の管理者として本人,家族,地域,施設職員との空間的な広がりを持つ“コーディネーター”の役割が果たせるようになるのです。

◆4“安心と信頼”の関係性を作るものとは……

 せんだんの丘では,相談部門の業務に従事する職員は,当施設において,直接的な生活支援(介護業務)を経験した者のみがその任に当たるという原則を貫いてきました。その結果としてこの組織の中で起きた関係性とは,理解しあう関係でした。生活場面に従事する介護職は,自分たちと同じ環境で同じ経験を持つものの“言葉”に疑いの目を持ちません。この関係性は双方に“安心と信頼”をもたらすこととなりました。支援相談員は自らが“ガイド”を務めた利用者の方々を“安心と信頼”の関係に託し,せんだんの丘の生活の場へとつないで行く事ができるのです。介護支援専門員は同じく“安心と信頼”の関係から紡ぎ出される“生きた情報”を“コーディネーター”としてご利用者やご家族や地域の方々に届けることができるのです。
 相談業務に従事されている方であれば,この関係性が理想的なものであることを疑うことはないでしょう。この関係性を作ったのは誰でもありません。せんだんの丘で実際に仕事をしている職員なのです。せんだんの丘の相談業務に携わる職員はいつでも主体的に介護業務のサポートに入れます。そして実際に介護業務のサポートに入ることで,介護職の危機を何度も救ってきました。
 実は“安心と信頼”の関係性とは,言葉を変えれば“支え合う”ということなのです。

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