With TOP > VOL.59 APRIL 2009 > 

VOL.59 APRIL 2009

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【6月科目修了試験のご案内】

【春期スクーリングV?夏期スクーリングIのご案内】

【通信制大学院コーナー】

【教員メッセージ?卒業者アンケートより】

【学習サポート】

教員MESSAGE [福祉心理学科]
これから心理学を学ぶ方へ

准教授 佐藤 俊人

◆心のおもしろさ

Q1 羽毛(ダウン)1,000グラムと鉄の塊1,000グラム,どちらが重いですか?
Q2 3月の10℃と10月の10℃ではどちらのほうが暖かいですか?

 どちらの質問もおそらく「同じ」が正解なのだろうと思います。いわゆる「客観的」には……。しかし,実際は本当に同じ重さ,暖かさと「感じる」でしょうか? たぶん鉄のほうが重く,3月のほうが暖かく感じる人が多いと思います。
 人間が何かを判断する時,必ずしも判断したいこと(重さ,暖かさなど)だけを独立に考えているわけではありません。「どれくらいの体積」がある1,000グラムなのか,「今までどのような気温に慣れてきた」なかでの10℃なのか,というように,他のさまざまな要因に影響を受けながら最終的に判断を下すわけです。どうやら人間は「機械的なハカリ」とは全く違う,「人間としてのクセをもったハカリ」で物事を判断しているようです。
 ですから,同じ映画をみて食事をしても,「誰と」一緒だったかによって映画のおもしろさや食事のおいしさが違って感じる,というようなめんどうくさい(笑)ことがおこってきます。これは人間として「ある程度みんなに共通する考え方のクセ」といえるでしょう。

Q3 「100円失くした!」と友人が絶望的な表情で相談にきたらどう対応しますか?

 よく,「相手の価値観を尊重する」というような言い回しがあります。しかし,個人の日常的な人間関係でも国際関係でも,きちんとお互いの価値観は尊重されているのでしょうか。
 さて,私自身,Q3の状況であれば「100円くらい私が何とかするからそんなに嘆くなよ?」と言ってしまうと思います。私のこのような態度は経済的な対応(?)としては正解かもしれません。しかし,価値観を尊重するという心理的な対応としてはどうでしょうか? 友人がその100円にとても大きな価値を感じている,というその価値観自体を否定してしまったことにはならないでしょうか。「あなたにはわからないかもしれないけど自分にとっては大きな100円だ。べつにそれをあなたに補てんしてもらおうとは思わない。ただ自分の悲しみを聞いてほしかっただけだ」と言われてしまったら……。
 人間は一人ひとり考え方や感じ方が違います。それは持って生まれた性格(気質)や,これまでどのような経験をしてきたかによってその人らしさがでてきます。ですから一人ひとり価値観がちがってくるのは当然のことです。ですから,Q3では経済的な対応よりも先に,嘆き悲しむ友人をそのまま受け入れてあげるところから始めなければならないのかもしれません。

 人間としてある程度共通な考え方のクセをもち,その上に個人的なクセももっている。それが人間の心のおもしろさのひとつだと思います。

◆分析するだけではおわらせない

 心に関して,古くから言い伝えられている情報はたくさんあると思います。たとえば「B型の人は喜怒哀楽が激しい」「ひとりっこだからわがままだ」(該当する方,申し訳ありません!)というように。これらの怪しげな情報の真偽についてはここでは議論しませんが,同じように簡単に,そして面白おかしく人間の心を分析している情報は世の中にいくらでも氾濫しているようです。きちんと心理学を研究していくことによっても,同じように「○○○という理由で□□□になる」というある程度一般的な傾向が認められることがあります。
 このような情報はどのような意味をもつことになるのでしょうか。
 たとえば本当にB型の人の喜怒哀楽が激しいと仮定します。あるB型の人が自分の喜怒哀楽の激しさを是非直したい,と訴えてきたらどのような解決が可能でしょうか? 「あなたがB型だからです」と分析したところで何の解決にもなりませんし,ましてや「ひとりっこだからです」と分析されても,いまさら親に頼むこともできません。
 要は,原因を分析?究明するにとどまらずに,具体的に今の問題をどう解決していくかという視点が非常に大切になってきます。それができて初めて心理学は実際に役に立つ「実学」といえるようになるわけです。

 これから研究を進めていく中で,「この理論が自分としてはどのような場面でどう応用できるか」「自分の周りにある問題について具体的にどう対処できるか」というような気持ちでさまざまな情報に接していくと,心理学を身近に感じることができるようになると思います。

◆心理学の分野にこだわらない興味を

 福祉心理学科では「福祉心理学」「臨床心理学」「生涯発達心理学」など,○○心理学という名称の科目が数多く設定されています。教員はそれぞれ専門分野を持ち,その分野に応じた科目を担当しているわけですが,実際にそれぞれの科目で扱う心理学現象は決して独立しているわけではありません。
 たとえばカウンセリングに興味を持った方は「臨床心理学」「心理療法」「人格心理学」などといった科目に興味を持たれると思います。しかし,実際には心の問題を探るためには「生涯発達心理学」や「家族心理学」も必要ですし,さらに具体的な支援方法を考える際には「学習心理学」や「認知心理学」も澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】です。
 細分化されたさまざまな「○○心理学」という科目も,視点は違うにせよ,同じ「心」を対象としています。最初に「興味がない」と思ってしまえば学習もレポートもなかなか進みませんから,まんべんなく研究し,卒業までにはそれぞれの科目から得られた情報を自分なりに統合し,その後のご自身の活動に応用できるようになることを願っております。

1つ前のページへこのページの先頭へ