学長室の窓

学長コラム:地を掘りて天をもとめよ

コラム No.1

地を掘りて天をもとむ、日面にちめん月面がちめん
波をあばいて火を求む、徹底通紅てっていつうこう

道元禅師「上堂法語」

ここは仙台市青葉区の国見。街並みを眺望するこの窓から、人間の未来をも展望しようと試みるコラムである。そのはじまりには道元禅師(1200~1253)の言葉がふさわしい。

大地を掘って、天空の太陽や月の姿を探し求めよ!
波間をあばいて、徹底的に深紅の火炎を起こせ!

一般的には理解しがたい言葉である。なぜなら天体は足元ではなく頭上にあり、火は水気のないところにあるからだ。しかし道元禅師はあえて警告する。日々の学びには、こうした凡眼を捨てよと。

そもそも学問とは何であろうか。この疑問に答えるためには、まずは学問が我々にとって何のためにあるのかを考えなければならない。

では、学問は何のためにあるのか。それは、人間はかくあるべきという理想の社会なり人物なりへと“変わるため”であろう。この“変わること”が人間の成長に他ならない。

おそらく道元禅師は、「常識に縛られたままでは、人は成長できないぞ!」と激励しているのではないだろうか。常識が常識のまま、そこに何らの疑問もなければ、学問は人を成長させやしない。積み木を右から左へと移動させるような“論理の遊び”は、もはや学問ではないからだ。生成AIがいかに優れていようとも、情報の収集力や流麗な文章化の技術は、ひとつの手段とはなり得ても、本来の学問とは別次元の話である。

ものごとの表相をあばき、この世界の真価を見つけ、その喜びに自己の心を変革させることが人間の成長であり、学問であることを我々は忘れてはならない。眼前の黄金を単なる土くれと見過ごしてはならないのだ。(ただし土中にも1ccに数億匹もの微生物がいるという真価もあるのだが…)

そこで道元禅師は、私たちにこう語りかける。

天は頭上にあると思い込み、足元を忘れるな。水中に火が無いとも限らないぞ…。

こうした常識を覆す気概の先にこそ、“本当の価値”が見出されるのである。実際、チバニアンのように地下には星の誕生の秘密が眠っていることもあり、また水は今や熱エネルギーへ変換されることは常識となっている。これは科学が学問として成長した証しである。

見渡せば人類は今、ブーカの時代に迷走している。互いの価値や国の主張が乱れ飛び、道理と秩序を見失っているかのようだ。しかし歴史は常に常識を超えた想定外の連続だったはずである。今だけが人類の危機だとするのは、過去の歴史を軽視するものであろう。いつ如何なるときにも常識を乗り越えた開拓者たちによって、時代は築かれてきたのだ。

澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】には、道元禅師の教えという普遍的な真価がある。そのゆるぎない教えがある限り、時代を切り拓く若人たちが集い、このキャンパスから日本へ、そして世界へ羽ばたき続けることだろう。真価を見抜く眼が、時代の羅針盤となるのだ。

澳门赌场app_老挝黄金赌场-【唯一授权牌照】7年に学園創立150周年を迎える本学には、そんな時代を切り拓く禅の知恵があることを私は誇りに思う。

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